2024年11月29日に国土交通省のお知らせで「子育てグリーン住宅支援事業」についての概要が公表されました。子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした子育てエコホーム支援事業の後継としてスタートする新しい補助制度です。
さらに今回の子育てグリーン住宅支援事業では「GX志向型住宅(脱炭素志向型住宅)」という住宅性能の区分が新設され、最大160万円の補助を受けられます。
そこで今回は、子育てグリーン住宅支援事業を利用するための条件や住宅性能の区分ごとに交付される補助額について解説します。
近々、マイホームの購入を予定しているなら本制度を上手に活用することで、おトクに住宅を取得できます。ぜひ、本記事で理解を深めましょう。
※本記事は、国土交通省の「住宅の省エネ化への支援強化に関する予算案を閣議決定!国土交通省・経済産業省・環境省が連携して取り組みます!」をもとに執筆しています。
また、執筆時点では制度の概要のみの発表となるため、一部「子育てエコホーム支援事業」の対象条件をもとにしています。
子育てグリーン住宅支援事業は今後の国会で補正予算の成立が前提です。今後、詳細情報が公表されましたら内容が変更になる可能性もありますのでご留意ください。
この記事で学べるコト
- 子育てグリーン住宅支援事業の概要がわかる
- 対象となる3つの条件と注意点がわかる
- 住宅性能の区分ごとにいくらいくら交付されるかわかる
1.子育てグリーン住宅支援事業は省エネ性能の高い住宅を購入するときの補助制度
2024年11月22日に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」が閣議決定されたため、国土交通省のホームページで子育てグリーン住宅支援事業について公表されました。
子育てグリーン住宅支援事業は、注文住宅の新築や建て替え、新築住宅の購入で高い省エネ性能を有した住宅であれば、政府が住宅購入の支援してくれる補助制度です。
※リフォームも対象ですが、本記事では新築住宅の情報に絞って解説しています。リフォームについては後日、別の記事で解説する予定です。
さらに今回は、GX志向型住宅という住宅性能の区分が新設され、住宅の省エネ性能の強化を推進するのが目的です。
背景にあるのが、2050年のカーボンニュートラルの実現です。
2030年には新築住宅の基準を現行の省エネ基準からZEH水準に引き上げることが予定されています。そのため、ZEH水準を大きく上回る高い性能を有した住宅取得により多くの支援に力をいれています。
省エネ住宅の取得を支援することによって、光熱費などのエネルギーコストの上昇に強い省エネ住宅で、国民の暮らしの基盤を強固にする狙いがあります。
2.子育てグリーン住宅支援事業の対象となる3つの条件と注意点
子育てグリーン住宅支援事を利用するには「住宅性能」「世帯」「工事内容」といった3つの対象となるために必要な条件が定められています。
対象条件をまとめると以下のとおりです。
住宅性能の区分 | 対象の世帯 | 工事内容 |
---|---|---|
GX志向型住宅 | すべての世帯が対象 |
注文住宅の新築 新築分譲住宅の購入 |
長期優良住宅 |
子育て世帯 若者夫婦世帯 |
|
ZEH水準の住宅 |
本章では、子育てグリーン住宅支援事業を利用するための条件と注意点について紹介します。
2-1.住宅性能の区分
子育てグリーン住宅支援事業の補助制度を利用には、以下いずれかの住宅性能を有している住宅であることが条件です。
- GX志向型住宅
- 長期優良住宅
- ZEH水準の住宅
GX志向型住宅
GX志向型住宅は新設された住宅性能の区分です。GX志向型住宅は以下の3つに適合していなくてはいけません。
再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から35%以上の一次エネルギー消費量削減(BEI 0.65以下)
再生可能エネルギー等を含んだ、一次エネルギー消費量削減率(地域区分に応じた要件あり)
ZEH水準の住宅が「断熱等性能等級5」「一次エネルギー消費量等級6(BEI 0.8以下)」に対して、GX志向型住宅は「断熱等性能等級6以上」と「一次エネルギー消費量削減率35%以上(BEI 0.65以下)」であることから、ZEH水準の住宅よりも省エネ性能に優れています。
さらに、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー等を加えた一次エネルギー消費量の削減が、戸建てでは「地域区分」に応じて、以下の基準で定められています。
一般地域 | 寒冷地等 | 都市部狭小地等 |
---|---|---|
100% | 75%以上 | – |
戸建ての場合、地域区分によって再生可能エネルギー等を加えた一次エネルギー消費量の削減率が異なります。
寒冷地等であればNearly ZEH、都市部狭小地等であれば、再生可能エネルギー設備が未導入のZEH Orientedでも子育てグリーン住宅支援事業は利用可能です。
長期優良住宅
長期優良住宅は、所管行政庁が認めた「長持ちする建物」です。
ZEH水準の基準にプラスして、生活していても住宅の構造や設備など長い間、問題なく使用できるように耐震等級やメンテナンス計画などの厳しい基準をクリアしています。
詳しくは「長期優良住宅ってどんな家?6つのメリット・4つのデメリットと良い建築会社の見つけ方」で解説していますので、長期優良住宅を検討している方は、ぜひ参考にしていください。
ZEH水準の住宅
ZEH水準の住宅は、「創エネルギー」「省エネルギー」「断熱性能」の相乗効果によって、生活するのに必要最低限な一次エネルギーの消費量を削減したエコな住宅です。
一次エネルギー消費量の削減率や再生可能エネルギー等の設備の有無に応じてZEHもいくつかに分類されます。
ZEH水準の住宅については「ZEH(ゼッチ)基準の戸建てが当たり前?2022年以降のロードマップから重要なポイントを解説」で詳しく解説しています。本記事をあわせてご覧ください。
2-2.対象の世帯
子育てグリーン住宅支援事業では、住宅性能の区分によって、本制度の対象となる世帯が異なります。
GX志向型住宅であれば「すべての世帯」が対象です。しかし、長期優良住宅やZEH水準の住宅で補助を受けるには、以下のいずれかの世帯でなくてはいけません。
- 子育て世帯
- 若者夫婦世帯
子育て世帯
子育て世帯は本制度の申請時点で、子供がいることと子供の年齢が2024年4月1日時点で18歳未満の子供(2006年4月2日以降に出生)がいる家族が対象です。
若者夫婦世帯
若者夫婦世帯は本制度の申請時点で、夫婦であることと2024年4月1日時点で夫婦のどちらかが39歳以下(夫か妻が1984年4月2日以降に出生)である世帯が対象です。
2-3.対象となる工事内容
子育てグリーン住宅支援事業は、注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入、賃貸住宅の新築が対象ですが、補助対象となる条件があります。
それぞれの工事内容にどのような条件があるのか事前に確認しておきましょう。
注文住宅の新築
住宅取得者が自ら居住することを目的に「工事請負契約」を締結して発注する注文住宅の新築が対象です。
※工事請負契約を締結していない工事は本制度を活用することができません。
ただし、着工に関する条件があるので注意が必要です。経済対策の閣議決定日である2024年11月22日以降に基礎工事より後の工程の工事に着手する住宅が対象となっています。
新築分譲住宅の購入
住宅取得者が自ら居住することを目的に「売買契約」を締結して購入する新築分譲住宅が対象です。
新築分譲住宅を購入する場合も、着工に関する条件があります。注文住宅と同様に2024年11月22日以降に基礎工事より後の工程の工事に着手するものが対象となっています。
工事内容における注意点
前述した工事内容には細かな要件があります。子育てグリーン住宅支援事業を利用するにあたり、以下の要件には注意してください。
以下に該当する住宅は原則対象外
- 「土砂災害特別警戒区域」または「災害危険区域」に立地する住宅
- 「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外」かつ「災害レッドゾーン内」で建設されたもののうち、3戸以上の開発または1戸もしくは2戸で規模1,000㎡を超える開発によるもので、市町村長の勧告に従わなかった旨の公表に係る住宅
- 「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域」に該当する区域に立地する住宅
3.子育てグリーン住宅支援事業はいくら交付される?GX志向型住宅なら補助額は160万円
「2.子育てグリーン住宅支援事業の対象となる3つの条件と注意点」で紹介したとおり、「住宅性能」「世帯」「工事内容」の条件を満たして注文住宅の新築や新築住宅を購入すると、以下の補助額が交付されます。
対象の世帯 | 住宅性能の区分 | 補助額 |
---|---|---|
すべての世帯 | GX志向型住宅 | 160万円/戸 |
子育て世帯 若者夫婦世帯 |
長期優良住宅 | 80万円/戸
100万円/戸 |
ZEH水準の住宅 | 40万円/戸
60万円/戸 |
GX志向型住宅であれば、1戸あたり160万円の補助が交付されます。求められる住宅性能が高くなった分、大きな恩恵をもたらしてくれます。
「長期優良住宅」や「ZEH水準の住宅」は、建て替えの有無が追加されました。前進である子育てエコホーム支援事業と比較すると、長期優良住宅とZEH水準の住宅は減額されています。
建て替えがある場合、長期優良住宅で1戸あたり100万円。ZEH水準の住宅で1戸あたり60万円が交付されます。建て替えがない場合には、長期優良住宅で80万円。ZEH水準の住宅で40万円です。
4.子育てグリーン住宅支援事業は補助額が減額?子育てエコホーム支援事業から3つの変更点
住宅取得の支援策は毎年の実施されており、時代とともに補助対象や補助額も変化しています。近年の補助制度はカーボンニュートラルの実現に向けて住宅の省エネ化を強化する動きに予算を充当している印象です。
そこで本章では、前進である子育てエコホーム支援事業と比較してどのような変更が加わったのか紹介します。
変更点は次の3つです。
- 住宅性能の区分が新設された
- 対象世帯の幅が広がった
- 長期優良住宅とZEH水準の住宅の補助額は減額された
4-1.住宅性能の区分が新設された
子育てエコホーム支援事業は、対象となる住宅性能の区分が「長期優良住宅」「ZEH水準の住宅」の2つでした。
しかし、今回の子育てグリーン住宅支援制度では、ZEH水準を大きく上回る省エネ性能の「GX志向型住宅(脱炭素志向型住宅)」が新設されて、対象の住宅性能に加わっています。
子育てグリーン住宅支援制度 | 子育てエコホーム支援事業 | |
---|---|---|
GX志向型住宅 | 〇 | – |
長期優良住宅 | 〇 | |
ZEH水準の住宅 | 〇 |
制度の対象となる住宅性能の区分が増えたことで複雑になり、どのような違いがあるのかがわかりにくくなりました。
以下の表で、それぞれの住宅性能の違いをまとめましたので、参考にしてください。
GX志向型住宅 | 長期優良住宅 | ZEH水準の住宅 | |
---|---|---|---|
断熱等性能等級 | 等級6以上 | 等級5 | |
一次エネルギー消費量削減率 ※再生可能エネルギー等を除く |
35%以上 | 20%以上 (一次エネルギー消費量等級6) |
|
一次エネルギー消費量削減率 ※再生可能エネルギー等を含む |
一般地域:100%以上 寒冷地等:75%以上 都市部狭小地等:- |
– | ZEH:100%以上 Nearly ZEH:75%以上 低炭素住宅:50%以上 ZEH Oriented:- |
再生可能エネルギーの設備を導入 | 一般地域:必須 寒冷地等:必須 都市部狭小地等:不要 |
– | ZEH:必須 Nearly ZEH:必須 低炭素住宅:必須 ZEH Oriented:不要 |
その他の評価基準 | – | 躯体の耐久性 耐震性に優れている メンテナンスを考えた設計 居住環境 住居面積 維持保全計画 |
– |
GX志向型住宅は、断熱性能が高く35%以上の一次エネルギー消費量削減の住宅のため、少ない電力で高効率に住宅設備を利用できます。長期優良住宅やZEH水準の住宅よりも高い省エネ性を有した住宅なので、月々の光熱費を抑えることに期待できるでしょう。
4-2.対象世帯の幅が広がった
子育てエコホーム支援事業は、「子育て世帯」もしくは「若者夫婦世帯」が長期優良住宅かZEH水準の住宅を新築するときに利用できる制度です。そのため、対象となる世帯が限定的で世帯の要件を満たさないと利用できない制度でした。
一方、子育てグリーン住宅支援制度で「GX志向型住宅」の区分が追加されたことにより住宅性能の縛りはありますが、GX志向型住宅を新築する際に「すべての世帯」の世帯が利用できる制度となったので対象世帯の幅が広がっています。
子育てグリーン住宅支援制度 | 子育てエコホーム支援事業 | |
---|---|---|
GX志向型住宅 | すべての世帯 | – |
長期優良住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 | |
ZEH水準の住宅 |
4-3.長期優良住宅とZEH水準の住宅の補助額は減額された
子育てグリーン住宅支援制度で「GX志向型住宅」が新設されて、1戸あたり160万円の補助が受けられるようになりました。しかし、高い省エネ性の住宅に支援を強化する一方、長期優良住宅とZEH水準の住宅は、補助額が減額になりました。
また、子育てエコホーム支援事業では、長期優良住宅とZEH水準の住宅を新築する際に「建て替えの有無」の要件はありませんでしたが、今回の子育てグリーン住宅支援制度で建て替えの有無によって補助額が異なります。そのため、制度を利用する際には注意が必要です。
子育てグリーン住宅支援制度 | 子育てエコホーム支援事業 | |
---|---|---|
GX志向型住宅 | 160万円/戸 | – |
長期優良住宅 | 80万円/戸
100万円/戸 |
100万円/戸 |
ZEH水準の住宅 | 40万円/戸
60万円/戸 |
80万円/戸 |
まとめ
子育てグリーン住宅支援事業は、新築住宅の建築費や購入費の一部を支援してもらえる補助制度です。国土交通省からの公表から間もなく執筆しているので、今後情報が更新される可能性がありますのでご留意ください。
本事業の対象や補助額をまとめると以下のとおりです。
対象の世帯 | 住宅性能の区分 | 補助額 | 工事内容 |
---|---|---|---|
すべての世帯 | GX志向型住宅 | 160万円/戸 |
注文住宅の新築 新築分譲住宅の購入 |
子育て世帯 若者夫婦世帯 |
長期優良住宅 | 80万円/戸
100万円/戸 |
|
ZEH水準の住宅 | 40万円/戸
60万円/戸 |
住宅性能の区分によって補助額が異なりますが、新設されたGX志向型住宅であれば1戸あたり160万円の補助金が交付されるおトクな住宅取得の制度です。
GX志向型住宅は、ZEH水準の住宅よりも高い省エネ性能が求められています。また、建築エリアによって再生可能エネルギー等を加えた一次エネルギー消費量の削減率が異なるので注意が必要です。
また本記事で紹介したとおり、延べ床面積の制限や対象外になる区域の住宅もあるので、注文住宅や新築分譲住宅の購入を検討する際は、注意点も考慮してください。
本記事で紹介した「子育てグリーン住宅支援事業」で、素敵な家づくりの一助になれば幸いです。
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