上がり框(あがりかまち)とは?3つの役割と高さ・素材の決め方

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上がり框(あがりかまち)とは?3つの役割と高さ・素材の決め方

設計の仕様打ち合わせで急に「上がり框はどうしますか」と聞かれ、玄関のどの部分なのか分からず、返事に迷う方も少なくありません。

上がり框(あがりかまち)とは、玄関の土間と玄関ホールの段差に取り付ける横材のことです。床材の端を守り、靴で歩く場所と室内を分け、靴の脱ぎ履きや上がり降りを助けてくれます。

とはいえ、高さだけ決めれば終わりではありません。家族の動きを確かめたうえで、形や素材、框を設けないフラットな玄関も比べておきたいところ。打ち合わせでは、見積もりと、将来つける手すりの下地まで確かめておくと安心です。

そこで今回は、上がり框とは何かというところから、高さ18cmの意味、わが家に合う形と素材、フラットな玄関、打ち合わせ、先々の直し方まで順に紹介します。次の打ち合わせを控えて、夫婦で手早く判断の材料をそろえたい方に役立つ内容です。

この記事で学べるコト

  • 上がり框の読み方・場所・役割がわかる
  • 高さ18cmの正しい意味がわかる
  • 框をつくるかどうかの選び方がわかる
  • 打ち合わせで確かめることがわかる
  • 直すときの費用を左右するものがわかる

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目次

1.上がり框とは?読み方・場所・3つの役割

上がり框とは?読み方・場所・3つの役割

上がり框の読み方は「あがりかまち」です。框(木などの端を納めたり、枠を組んだりする部材)のひとつで、玄関の土間と玄関ホールの境にあります。

注文住宅では、高さ・形・素材・框をなくす場合の納まり(部材どうしをどう組み合わせて仕上げるかの決め方)・手すりの下地・見積もりの区分を決めていきます。

1-1.上がり框の読み方と玄関での場所

玄関ドアから入ると、靴で歩く土間の奥に横長の段差があります。段差の上端で玄関ホールの床材とつながり、木口(床材を切った端の面)を隠す部材が上がり框です。

高さは平面図だけでは分かりにくいため、断面詳細図を見せてもらうのがおすすめです。夫婦の片方だけが打ち合わせに出る家庭でも、図へ印を付けて共有すれば同じ場所を見ながら相談できます。

1-2.上がり框・付け框・式台・見切りの違い

似たような部材は場所で見分ける必要があります。付け框は土間の立ち上がりと壁の境を仕上げる板、式台は土間と上がり框の間に置く踏み板です。見切り(異なる仕上げ材の境を納める細い部材)は、材料の切り替わりを整えてくれます。

部材 場所 役割 設計時に決めること
上がり框 土間とホールの段差 床端を守り昇降を助ける 高さ・形状・素材
付け框 土間立ち上がりと壁の境 接合部を隠して整える 色・仕上げ範囲
式台 土間と上がり框の間 段差を分け着脱を助ける 固定方法・奥行き
見切り 異なる仕上げ材の境 端部や隙間を納める 材質・見え方

部材名がない図面では「土間と壁の境、踏み板、床材の端は何で納めますか」と担当者へ聞いてみてください。

1-3.床材を守り内外を分ける3つの役割

上がり框の役割は、次の3つがあります。

  • 床材の木口をぶつかりや汚れから守ること
  • 靴で歩く場所と室内を分けること
  • 上がり降りや靴の脱ぎ履きを助けること

子どもが上がりやすいかを優先するのか、腰かけやすさを優先するのかで、選ぶ高さも形も変わってきます。

図面を承認する前に、框だけでなく床端・付け框・式台まで含む納まりを、ハウスメーカーや工務店(以下、住宅会社)へ確認しましょう。

打ち合わせで決めるポイントは、次の6つです。

高さ 土間から床までの仕上がりの寸法
直線・斜め・L字・曲線のどれにするか
素材 木・石・タイルなどのどれにするか
框をなくす場合 床材の端をどう仕上げるか
手すりの下地 あとで手すりを付けられるように壁を補強しておくか
見積もりの区分 標準で付くのか、追加のお金がかかるのか

図面の玄関部分を開き、上がり框の位置を指でたどってください。

2.高さ18cmの意味と数値の条件がかかるかを確かめる

高さ18cmの意味と数値の条件がかかるかを確かめる

上がり框の高さには、設計の現場でよく使われる寸法と、国の指針や住宅性能表示制度が決めている寸法があります。同じ数字でも、意味はまったく別のものです。

この章では、わが家に数字の決まりがあるかどうかを先に確かめます。この章をしっかり読む必要があるのは、住宅ローンで「フラット35S」を使う予定がある方と、家の性能に等級を付ける(住宅性能表示制度を使う)予定がある方だけです。

どちらも予定がない方、まだ分からない方は、2-1の目安だけ読んで第3章へ進んでください。

判断がつかないときは、担当者へ「フラット35Sや住宅性能表示制度を使う予定はありますか」と1つ聞けば済みます。最終的な高さは、第3章の家族の動きで決めるのがおすすめです。

2-1.戸建て15cm〜18cm・集合住宅5cm〜7cmは実勢の目安

上がり框の高さについて、国がまとめた統計はありません。ここで挙げるのは、設計の現場でよく使われている範囲です。木造の戸建てでは15cm〜18cm、マンションなどの集合住宅や木造でない住宅では5cm〜7cmが目安になります。

木造の在来工法は、基礎の立ち上がりと土台、床の骨組みが積み上がるぶん段差が大きくなりがちです。一方、コンクリートの床の上に直接床を組むつくりでは小さくなりやすくなります。法律で決まった標準の寸法ではありません。

断面図では、土間の仕上がりの面から玄関ホールの床までを見ます。框の材料だけを測らず、「仕上がりの段差は何cmですか」と担当者へ聞くのがおすすめです。

忙しい家庭なら、一方が図面の寸法を、もう一方が等級を取る予定があるかを確かめ、「よくある目安」「制度の決まり」と分けて共有すると良いでしょう。よくある目安は、候補をしぼるための出発点です。

2-2.18cmは建築基準法の一律上限ではない

検索するとよく出てくる「18cm以下」は、全国の戸建ての玄関にかかる法律の上限ではありません。建築基準法には、框の高さをそろって縛る決まりがないからです。

国土交通省の設計指針には、基本レベル(最低限おさえたい水準)と推奨レベル(もう一歩踏み込んだ水準)の2つがあります。基本レベルでは、上がり框は高さの決まりから外れています。推奨レベルは原則11cm(110mm)以下、接地階の玄関は18cm(180mm)以下です。

接地階とは、地上の階のうちいちばん低いところにある階のことです。ふつうの2階建て・3階建ての戸建てなら、玄関のある1階があてはまります。

土間から框までが高いときは、途中に踏み段を1段だけはさむやり方が認められています。踏み段とは、第1章で紹介した式台にあたるものです。ただし踏み段には決まりがあって、奥行き300mm以上・幅600mm以上で、しかも1段であることが求められます。

これを満たしていれば、1階に玄関がある一般的な戸建て(接地階)なら、18cm+18cmで合わせて36cm(360mm)までにできます。奥行きの浅い置き式台を1枚のせるだけでは、このやり方にはあてはまりません。

マンションの2階以上など接地階以外の玄関では、各段差が11cm(110mm)以下となるため、11cm+11cm=22cmが先に上限になります。いずれも公的指針の推奨レベルの話です。

接地階の玄関に公的指針の推奨レベルを当てる場合は18cm以下ですが、18cmは建築基準法による一律上限ではありません。

出典:国土交通省「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針

なお「床下45cm」という数字を見かけても、上がり框の高さとは別の話です。建築基準法施行令第22条は、最下階の居室の床が木造である場合の床の高さを定めたもので、床下をコンクリートなどで覆う場合には適用されません。

出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令

2-3.高齢者等配慮対策等級と住宅制度の違い

高齢者等配慮対策等級とは、お年寄りが動きやすいか、介助しやすいかを等級で示したものです。住宅性能表示制度(家の性能を国の決めたものさしで評価し、等級で示すしくみ)のひとつに入っています。等級3では上がり框の高さに決まりはありませんが、等級4・等級5になると原則11cm以下、接地階は18cm以下になります。

上がり框の高さに数値の条件がつくのは、次の3つのときだけです。

当てはまるか 高さの条件 担当者に聞くこと
高齢者等配慮対策等級4・5を取る 原則11cm以下、接地階は18cm以下 取る予定の等級はどれですか
新築の一戸建てで、フラット35S金利Aプランをバリアフリー性により使う 同じく原則11cm以下、接地階は18cm以下(一戸建ては等級4が適用されます) フラット35Sを使う予定はありますか。使う場合、金利を下げる根拠はバリアフリー性ですか、省エネルギー性・耐震性・耐久性ですか
設計指針の推奨レベルへ任意で合わせる 原則11cm以下、接地階は18cm以下(義務ではなく任意の水準です) 図面はどちらの水準に沿っていますか

フラット35S(住宅金融支援機構の住宅ローンで、決められた性能を満たすと最初の何年かの金利が下がるしくみ)は、どの性能で金利を下げるかを選べます。

バリアフリー性ではなく、省エネルギー性・耐震性・耐久性などで金利Aプランを使うなら、上がり框の高さに決まりはつきません。担当者から「省エネルギー性で使います」と返ってきたら、高さは家族の動きだけで決めて大丈夫です。

高齢者等配慮対策等級4・5の側にも、同じ踏み段のやり方が認められています。奥行き300mm以上・幅600mm以上の踏み段を1段だけ置く場合にかぎり、土間から框までを合わせて36cm(360mm)以下にできます。

出典:
国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律
住宅金融支援機構「【フラット35】新築住宅用 技術基準のご案内

上の3つのどれにも当てはまらないなら、上がり框の高さに数字の決まりはつきません。建築基準法には全国一律の上限がなく、設計指針の基本レベルと高齢者等配慮対策等級3では上がり框が数字の対象から外れているためです。

一戸建ての長期優良住宅にも、バリアフリー性の認定要件はありません。
※要件になるのは共同住宅などで、対象は共用の廊下といった共用部分です

ただし、市区町村が独自の決まりを設けていることもあります。図面がどの水準に沿っているかは、担当者へ確かめておくのがおすすめです。長期優良住宅のメリットとデメリットもあわせて確認して、制度名だけで框の高さを決めないことが大切です。

出典:国土交通省「長期優良住宅認定制度の概要

ここまでをまとめると、上の3つに当てはまらない一般的なの注文住宅では、建築基準法にも住宅性能表示制度にも、上がり框の高さの上限はありません。数字に縛られない代わりに、決め手は家族の側にあります。そこで次の章では、家族の動きから高さとベンチや手すりを選ぶ方法を解説していきます。

提案されている高さが実勢の目安なのか、等級の条件なのか、担当者への質問に書き換えながら読み進めてください。

3.家族の動作から高さと補助設備を選ぶ

家族の動作から高さと補助設備を選ぶ

玄関の使いやすさは、段差の有無だけでは決まりません。

今の子育て期には抱っこや荷物を持った状態で帰宅することを想定し、20年後〜30年後には移動と靴の着脱を分けて考えます。今と将来を同じ判断軸に置いて考えることが大切です。

ベンチや手すりなど、家族の動作に合うものまで含めて比べるのがおすすめです。

3-1.抱っこ・ベビーカー・家族の同時帰宅を確かめる

夕方の玄関では「子どもを抱っこしたまま上がれるか」「荷物を仮置きできるスペースがあるか」「子どもの靴でベビーカーの通路をふさがないか」を確かめます。幼児が靴のまま上がるなら、境界も見やすくします。子育てしやすい家は、収納を含む動線づくりの参考になります。

親子で同時に帰宅すると、框の前が埋まりやすくなります。ベビーカー置き場と仮置き棚を框からずらしておくと、横に並んで靴を脱げます。高さと空き幅は一緒に確かめておくのがおすすめです。

3-2.靴の着脱に合う式台・ベンチ・手すりを選ぶ

段差ゼロは車椅子の移動には向きますが、靴を履く姿勢まで安定させるとは限りません。片足立ちが不安ならベンチと手すり、段差を分けたいなら式台が役立ちます。

動作 向いている框の高さ あると助かる補助設備 確認するポイント
立って履く 15cm〜18cm 手すり 片足で姿勢を保てるか
座って履く 框は15cm〜18cm。あわせて、玄関ホールの床から座面まで35cm〜45cm程度のベンチを別に置く ベンチ 足元と通路が重ならないか
片足立ちが不安 10cm前後を2段に分ける ベンチ・手すり 両手で支えられるか
抱っこしたまま昇降 15cm以下 固定式台・仮置き棚 子どもの足が壁へ当たらないか
車椅子で移動 0cm(フラット) スロープ・手すり 玄関外から連続して通れるか

表の高さは制度が定めた基準ではなく、動作を起点としたときに推奨する框の高さです。家族の身長や体の状態によって合う寸法は変わります。

座面の高さも身長で変わり、低すぎると立ち上がりにくく、高すぎると足が届きにくいため、展示場で実際に座って確かめるのが確実です。

「10cm前後を2段に分ける」を公的な指針や住宅性能表示制度の条件に合わせる場合は、あいだにはさむ踏み段を奥行き300mm以上・幅600mm以上とし、1段だけにする必要があります。最終判断は図面の実寸法と、ハウスメーカーや工務店で実際のサイズを体感して決めてください。

複数の行に当てはまる場合は、いま毎日くり返す動きに合う高さを先に取り、あとから足せるもの(ベンチ・手すり・式台)は将来へ回します。

たとえば抱っこと座っての着脱が重なる家庭なら、15cm前後を出発点にして、ベンチはあとから置ける場所だけ空けておく、という決め方になります。車椅子での移動を優先するならフラット、靴を履くときの姿勢を保ちたいならベンチと手すりを含めて選びましょう。優先順位のつけ方は、第8章でくわしく紹介します。

3-3.玄関ポーチから室内床まで将来動線をつなぐ

将来の動線は、框だけを低くしても完成しません。玄関ポーチ、土間、框、室内床までの高低差を断面図でつなぎ、車椅子が通れるかを確認します。

新築時に、壁のどこに下地補強(手すりを固定する壁内の補強)を入れるかまで決めておくと、後から設置しやすくなります。「手すり用の下地はどの壁に入りますか」と担当者へ聞いておくと安心です。

実寸確認は、次の3手順で進めます。

測る いま住んでいる家の玄関で、土間から床までの段差をメジャーで測ります。段ボール箱などは踏み台にせず、寸法を見る目印として床へ置いてください。
比べる 抱っこしたまま昇り降りできるか、家族が並んで靴を脱げるか、ベビーカーの置き場が通路をふさがないか、ポーチから室内床まで車椅子で進めるかを、家族ごとに書き出します。
体感する ハウスメーカーの展示場で近い高さの玄関を探し、実際の昇り降りと、ベンチから手すりへ手が届くかを試します。

時間がない家庭では、一方が動作を撮り、もう一方が段差を測ると進めやすくなります。次の帰宅時に、抱っこ・荷物・靴の着脱で手が止まる場面を1つ撮影してみてください。

4.上がり框の形状・素材を動線と手入れで比較

上がり框の形状・素材を動線と手入れで比較

上がり框は、同じ色でも形と表面の材料で使い勝手が変わります。形状は。直線・斜め・L字・曲線の4つあるので、歩く向きと掃除する範囲が異なります。

採用する素材の木・石・タイルでは傷のつきやすさや滑りやすさ、直し方が変わります。見た目だけで選ばず、手入れのしやすさと、工事全体でいくらかかるかまで比べたいところです。

4-1.直線・斜め・L字・曲線を玄関動線で比べる

上がり框の形状を選ぶ前に、見付(正面から見える高さ)と見込(奥行きの寸法)を断面図で確かめます。見付は玄関の見た目を、見込は足を置ける広さを左右します。

「見付と見込は何cmですか」と担当者へ聞きましょう。

形状 見た目と動線の特徴 掃除のしやすさ 向いている玄関
直線 端正で進む向きが明確 角が少なく掃除しやすい 間口が素直な玄関
斜め 奥行きを広く見せやすい 鋭い角にごみが残りやすい 土間を広く取りたい玄関
L字 2方向の動線を分けやすい 入り隅(内側へ引っ込んだ角)の掃除が必要 玄関収納へ分岐する玄関
曲線 やわらかな印象をつくる 継ぎ目と端部を確認 広さと施工余地がある玄関

形状は、玄関収納へ進む方向と掃除の手数から選ぶのがおすすめです。

4-2.木材・石材・タイルを手入れと費用の見方で比べる

素材は、足ざわりと傷の直し方まで理解しておくのが大切です。

木は床となじみやすく、石とタイルは硬くひんやりします。シート系は色や柄を合わせやすい一方で、深い傷がつくと直したあとが目立ちます。

素材 見た目と触感 傷・滑り 手入れと補修
木材 温かく床となじむ へこみやすい 研磨や塗装を検討
石材 重厚で冷たく硬い 欠けと濡れ時の滑りに注意 汚れを早めに拭く
タイル 柄が多く硬質 目地汚れと滑りを確認 目地の清掃と、傷んだ部分だけを替える対応
シート系 色柄を合わせやすい 表面の破れに注意 深い傷は交換を検討

材料そのものの値段では石が安く見えることもありますが、重いぶん運ぶ手間や現場で削る手間が加わり、下地を補強する必要も出てきます。見積もりでは、材料の代金と工事の代金を分けて示してもらうと良いでしょう。

素材の高い・安いは材料単価で決めず、加工・運搬・下地を含む総工事費で比べましょう。

4-3.無垢材・集成材・挽板・突板の補修性を確認する

木の框は、表面を仕上げる材料の厚みによって、浅い傷を削って直せるかどうかが変わります。無垢材は木そのもの、集成材は木片を貼り合わせた材料です。

挽板(木を薄く挽いた表面材)は厚みが1mm台〜3mm程度、突板(木を薄く削った表面材)は0.2mm〜0.6mm程度が、業界でよくある範囲です。挽板は表面の木が厚いぶん、浅い傷なら削って直せることがあります。突板はごく薄いので、削って直すのには向きません。

日本農林規格(JAS)は、挽板と突板それぞれの厚みを数字で定めてはいません。ただし、表面を仕上げる材料の厚さが1.2mm以上のものは、厚みを表示する決まりになっています。カタログに厚みの数字が書いてあるかどうかも、比べるときの手がかりです。

呼び名だけで厚みは決まらないので、選ぶ製品の仕様書で確かめておくと安心できます。

出典:農林水産省「フローリングの日本農林規格

サンプルで色や滑り、角の触感を確かめます。「表面材の種類と厚み、補修方法を教えていただけますか」と聞くとほかの素材と比べやすくなります。自然素材の選び方も、質感と手入れの参考になります。

5.上がり框をなくすフラット玄関が合う条件

上がり框をなくすフラット玄関が合う条件

フラット玄関は、段差をなくして移動しやすくする選択肢です。一方でデメリットもあり、砂や靴を止める境界と、座って靴を履く場所は弱くなります。

メリットとデメリットを並べたうえで、建物形式や風雨・積雪・外構を確認して、低い段差やベンチ・手すりを含む中間案まで比べたいところです。

5-1.フラット玄関のメリットと子育て期の使い勝手

段差がなければ、車椅子やベビーカーを持ち上げずに通しやすくなります。ロボット掃除機も玄関ホールから土間へ進みやすく、床が連続して見えるため玄関に広がりを感じやすい点もメリットです。

子育て期には、抱っこしながら段差をまたぐ動作を減らせます。一方、框へ腰掛けられないため、座って靴を履きにくくなります。これがフラット玄関の最も大きなデメリットです。フラット化と同時に壁際へベンチを置けば、子どもの靴を履かせる場所と通路を分けられます。

雨の日に子ども2人と帰宅する場面を思い浮かべ、濡れた靴、荷物、ベビーカーの置き先まで決めると、フラット玄関の使い勝手を判断できます。

5-2.砂・泥・靴の境界を建物条件ごとに対策が必要

段差がないぶん掃除機は通しやすくなりますが、砂を止める物理的な境界は弱くなります。雨風を受けやすい玄関では、フラット化だけを決めず、砂と水を止める位置まで図面で決めることが大切です。

戸建ては玄関ドアが屋外へ面しやすく、風向き、雨の吹き込み、玄関ポーチ、外構舗装の状態に影響します。外廊下のマンションも風雨と砂を受けやすい反面、内廊下のマンションなどは外からの砂が比較的入りにくい傾向があります。強風地域ではドアの開閉時に砂が舞い込むため、風除室(玄関ドアの外側に設ける小さな部屋)を設けられるか担当者へ聞くのがおすすめです。

積雪地域では、雪でドアが開かなくなる事態を避けるため、玄関の床レベルを上げる必要があります。段差を低くするバリアフリーとは逆向きの条件です。積雪量と除雪方法を先に確かめ、風除室の有無も含めて高さを決めることになります。

砂・泥・水を室内へ運びにくくする対策は、次の5つです。

玄関マット ドア内外のどちらで砂を落とすか決める
土間の範囲 靴とベビーカーを置ける奥行きを取る
収納の位置 靴を脱ぐ場所から近づける
風除室 風雪を受け止める前室を検討する
掃除の動線 掃除機とほうきを出しやすくする

建物と気候に合わせて境界を補えば、フラット玄関でも掃除と汚れ対策を両立しやすくなります。

5-3.框なしの木口処理と5つのアイデア

上がり框をなくしても、床材の木口を切りっぱなしにはしません。金物の見切り、樹脂の見切り、タイルを床端へ巻き込む納まりなどがあります。

「床材の木口を何で保護し、交換時はどこまで外しますか」と担当者へ確認すると安心です。

アイデア 段差 向いている家 注意するポイント
標準の段差 高さを確保 座って靴を履きたい家 昇降と転倒を確認
低い段差 小さく残す 境界と移動を両立したい家 つまずきやすさを確認
フラット+見切り ほぼなし 車椅子や掃除を優先する家 砂・水と木口処理
固定式台つき 2段に分ける 昇降を小刻みにしたい家 固定方法と通路幅(公的な指針に合わせるなら踏み段は奥行き300mm以上・幅600mm以上で1段)
ベンチ・手すり併設 選択可能 着座と姿勢保持が必要な家 下地と手の届く位置

よくある後悔は、大きく2つに分類できます。

ひとつ目は、段差を低くしすぎて座って靴を履けなくなり、あとからベンチを足すことになった後悔です。

ふたつ目は、フラットにしたものの砂と水の止め方を決めておらず、毎日の掃除で失敗したと感じる例です。どちらも、框の有無だけで決めたときに起こりやすくなります。

框の有無だけで決めずに、境界・移動・靴の着脱にあう組み合わせを選ぶことが重要です。雨の日の玄関写真を見ながら、砂・水・靴を止める位置を図面へ書き込んでください。

6.注文住宅の打ち合わせで確認する6つの項目

注文住宅の打ち合わせで確認する6つの項目

上がり框で決めることは、高さ・形・素材・框をなくす場合の納まり・手すりの下地・見積もりの区分の6つです。

図面・実物のサンプル・見積書を同じ日に並べて突き合わせておくと「標準で付くのか」「追加料金なのか」という行き違いを減らせます。

6-1.高さ・形状・素材を図面とサンプルで照合する

平面図だけでは、土間から床までの高さや框の厚みは読み取りにくいものです。縦方向の納まりが分かる断面詳細図で、見付と見込の寸法・床材とのつながりを確かめます。形については、玄関収納の扉や通り道と重ならないかも見ておきます。

素材は、カタログの写真だけで決めないのがおすすめです。上がり框、床材、土間の材料の実物サンプルを並べて、昼と夜の色、濡れたときの滑りやすさ、角の手ざわりを比べます。ハウスメーカーの展示場で近いものを見られるなら、靴を脱ぎ履きするところまで試すと選びやすくなります。

図面の名称だけで承認せず、断面寸法と実物サンプルが一致するかを決定前に照合しましょう。

6-2.標準仕様とオプションの見積り内訳を分ける

框の材料そのものが標準で付いていても、形を変えることや、どこまでの工事するかまで標準に入っているとは限りません。注文住宅の標準仕様とオプション仕様も参考に、商品の代金と工事の代金を分けて確かめます。

框をなくす場合は、床・土間・収納の端をどう仕上げるかで追加のお金がかかるかどうかも聞いておくと安心です。見積書では、框の材料が「造作材(大工が現場で加工する木の部材)」としてまとめられていることもあります。

確認する費目 見積書での見え方 聞くこと
框材の商品代 材料費・造作材 標準品かオプションか
大工工事 木工事・造作工事 加工と取付の範囲
養生 工事費に含む場合あり 玄関床を守る範囲
廃材処分 撤去費・処分費 新築変更でも発生するか
諸経費 一式表記の場合あり 算定対象と追加条件

見積書の書き方は、ハウスメーカーと工務店で違うことがあります。「一式」とだけ書かれていたら、框の材料・工事・養生・ごみの処分・諸経費に分けた内訳を担当者へお願いしてみてください。

変える前と後で、いくら差が出るのかを比較しやすくなります。

6-3.手すり下地と将来の改修について打ち合わせ前に質問する

将来的につける手すりは、取り付ける場所だけでなく、壁のどこを補強しておくかまで決めておきます。しっかり留められる高さと幅を図面に書き入れ、壁をふさぐ前に写真を撮って残しておくのがおすすめです。

引き渡し資料の保管方法は注文住宅の打ち合わせ準備も参考になります。

時間がない家庭では、担当者へ先に質問を連絡しておくと、当日は一方が質問。もう一方が図面と見積書を照合すると進めやすくなります。

質問の前に、断面詳細図・実物サンプル・見積書の3点を手元に用意しておくと、その場で照合できます。担当者へ送る質問は次の6つです。

  • 上がり框の仕上がり高さと、見付(正面から見える高さ)・見込(奥行き方向の寸法)を記した断面詳細図を見せていただけますか。
  • 上がり框の形状と玄関収納の取り合い(となり合う部材がぶつかる部分)が分かる図面を見せていただけますか。
  • 上がり框と玄関床材を並べて比べられる実物サンプルはありますか。
  • 框なしへ変更した場合の、床材の木口(床材を切った端の面)と土間の見切り(仕上げ材の境を納める部材)の方法を図で示していただけますか。
  • 将来の手すり用下地補強の範囲と固定できる高さを図面に記録していただけますか。
  • 上がり框の材料と施工を分け、養生・廃材処分・諸経費を示した内訳を示していただけますか。

質問と答えを、図面の番号・見積書の版(バージョン)・決めた日と一緒に残しておくのがおすすめです。工事中に確かめたいときも、何年か先に直すときも、そのまま資料として使えます。

6つの質問を共有メモへ貼り、担当者へ打ち合わせ前に送りましょう。

7.将来の補修・交換の進め方と介護保険

将来の補修・交換の進め方と介護保険

家を引き渡してもらったあとの相談先は、原則として家を建てた住宅会社です。保証の窓口があるからです。住宅の傷みは、どんな症状かとどこまで及んでいるかを分けて見ます。

段差をつくり変えるときに、介護保険を使うなら工事を始める前に申請するところまで含めて考えましょう。

7-1.傷・浮き・きしみから補修範囲を見分ける

色あせ、角の白化、浅いへこみは、表面だけを直せる場合があります。浮きやきしみは接着部や固定下地、腐食は水分の入り口まで点検が必要です。

最も傷みやすいのは、踏む平面よりも靴で蹴りやすい出隅(外側へ出た角)です。症状の写真と発生場所を分けると、どこまで工事するかを見分けやすくなります。

7-2.交換・式台・段差変更を触る範囲

費用は工事名だけでは比べられません。上がり框を残す補修と、土間や床まで解体する改修では、触る範囲が大きく異なります。

工事の種類 触る範囲 価格を左右する条件 工期の目安
表面の補修 仕上げ面・角 補修する面積と塗装する範囲 短い傾向
リフォーム框でカバー 既存框の表面 框の長さと既存框の傷み具合 短い傾向
框の単体交換 框・周辺の床端 框の長さと床の下地の状態 おおむね1日
固定式台の設置 式台・固定下地 式台の寸法・固定下地・手すりを併設するか 短い傾向
土間・床を含む全面改修 撤去・下地・土間・床 解体する範囲と土間の仕上げ材 数日以上も

見積もりを頼むときは、気になる症状の写真や玄関の断面詳細図、引き渡し時の仕様書を添えると、同じ範囲で比べやすくなります。

上がり框の交換費用に、公的な統計はありません。参考になるのはリフォーム会社紹介サイトが公表している目安です。框の単体交換はおおむね3万円〜8万円、工期は1日程度とされています。

ただし、これは同サイトへ寄せられた事例をもとにした数字であり、全国の相場を示すものではありません。同じ「段差を直す工事」でも、框だけを替えるのか、土間や床の下地まで壊すのかで金額は大きく変わります。家を建てた住宅会社へ、触る範囲をそろえて見積もりを頼むのがおすすめです。

7-3.固定式台の介護保険は着工前に相談する

2026年8月の執筆時点では、介護保険で住まいを直すときの上限は、支給限度基準額(給付を計算するときの上限)といって、ひとりにつき生涯で20万円です。

要支援か要介護かにかかわらず、同じ金額になります。この20万円は、手すりの取り付けや段差の解消など複数の工事をあわせた生涯の合計額です。玄関だけで使い切る前提の金額ではありません。

20万円の工事をした場合、かかった費用の原則9割にあたる18万円が戻り、自己負担は2万円という計算です。給付の割合は収入によって8割・7割になる方もいます。

このほか、上限が残っていれば何回かに分けて使えること、要介護の区分が大きく上がったときや引っ越したときは、あらためて20万円まで使えるようになることも決められています。実際に使う段階で、市区町村の介護保険窓口へ確かめてください。

かんたんには動かせない固定の式台をつけたり、上がり框を2段にしたりする工事は、段差をなくすものとして介護保険の対象になります

一方、持ち運べる式台と、昇降機や段差解消機のように機械の力で段差をなくす設備は対象になりません。この線引きは、全国どこでも同じ国のルールです。介護保険を使う可能性があるなら、原則として着工前に、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談し、市区町村へ事前申請しましょう。

提出する書類の様式、いつまでに申し込むか、いったん全額を払ってあとから戻してもらうのか(償還払い)、工事をする会社へ直接払ってもらうのか(受領委任払い)といった進め方は、市区町村ごとに違います。

出典:厚生労働省「介護保険における住宅改修

親と近くに住む予定や、しばらく泊まってもらう予定がある家庭なら、いま介護向けにつくり込んでしまわず、あとから固定の式台を置けるようにしておく手もあります。

8.条件の表で上がり框の仕様を最終判断する

条件の表で上がり框の仕様を最終判断する

結局どれを優先すればよいかは、家族の顔ぶれと毎日の動きから逆にたどれます。

下の表をスマートフォンに保存しておき、当てはまる条件を打ち合わせで確かめてください。

8-1.暮らしの7つの条件から確認仕様を逆引きする

条件 確認する寸法・仕様 判断の目安 住宅会社へ聞くこと
小さな子どもがいる 框高・角の仕上げ 抱っこで昇降しやすい 親子で高さを体感できる見本はありますか
ベビーカーを毎日使う 置き場・通路幅 置いても動線をふさがない 通路幅を図面に示していただけますか
将来の車椅子を想定する ポーチから床までの高低差 フラットな経路をつなぐ 高低差を断面図で示していただけますか
座って靴を履きたい 框高・ベンチ・手すり 座る場所と通路を分ける ベンチと手すりを置ける壁はありますか
砂や雪が多い立地 床レベル・砂や水の境界 風向きと積雪量を優先する 立地に合う床レベル案はありますか
ロボット掃除機を使う 段差・見切り 框なしや低い段差を比べる 掃除機が通れる見切り案はありますか
親の近居や短期の滞在がある 固定式台を置ける幅・手すりの下地 今は作り込まず、あとから足せる余地を残す 式台を後付けする場合の幅と、下地を入れておく壁を教えていただけますか

条件ごとに高さ・框なし・補助設備・砂対策を結び付けると、確認漏れを減らせます。

8-2.利用回数と変更しにくさで優先順位をそろえる

夫婦で意見が分かれたら、好みではなく毎日の利用回数と、あとから変更しにくいかで順位を決めましょう。

高さや土間の床は変更しにくい反面、ベンチや固定式台などの補助設備はあとから足しやすいものです。忙しい家庭は、表の該当行だけなら打ち合わせ前の5分ぐらいで確認できます。

前述した表で当てはまる行を2つ選び、夫婦で優先順位をそろえておきましょう。

まとめ

上がり框は、玄関の土間とホールの境で床の端を守り、外と中を分けて靴を履いたり上がり降りしたりを助ける横材です。高さも、形も、素材も、框をなくすかどうかも、抱っこや将来の移動といった家族の動きから決めることが大切です。

いつもどおりの段差、低めの段差、フラット、ベンチや手すりを足したかたち。どんなかたちであれ、各家庭にピッタリなかたちがあります。玄関の広さと毎日の使い方をもとに、住まいにあう組み合わせを選んでかまいません。

制度の条件を満たしていて、家族の動きと優先順位に合っているなら、どれを選んでも正解です。 図面の実際の寸法とサンプル、見積書を照らし合わせておけば、子育ての時期の使いやすさと、先々への備えを両立できます。

本記事を判断の材料として、玄関づくりに役立ててください。

今回紹介した寸法や費用は、あくまで一般的な目安です。最後は図面に書かれた実際の寸法と、選んだ製品をハウスメーカーや工務店の見積もりで確かめてください。

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