注文住宅で中庭を取り入れるなら押さえておきたい7つのこと|形・広さ・代替案などから判断する方法

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注文住宅で中庭を取り入れるなら押さえておきたい7つのこと|形・広さ・代替案などから判断する方法
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注文住宅で中庭が向くのは「外で過ごす場所が欲しい」と「隣家の2階からの視線をよけたい」を同時に実現したいと考えた方です。隣家の視線を防げるかは、中庭を囲む建物の高さと中庭の幅、隣家の窓の高さと距離で大きく変わります。

注文住宅の打ち合わせで、担当者から中庭のある家を提案されて、施工例やSNSの写真には憧れるけれど、費用や掃除、大雨の後悔の声を読んで決めきれない。そんな方も少なくありません。

採光や目隠しだけなら、高窓・目隠しフェンスで足りることも多くあります。叶えたい暮らしから逆算して、中庭の形や広さ、代わりの方法を順に比較していけば、7つの項目に納得して決められます。

ただし、写真の印象だけで中庭を選んでしまうと、部屋の広さや家のなかの動きやすさ、雨水の流れ、手入れのしやすさを見落としがちです。家を建てる地域によっては、光だけでなく、隣家からの目線や風の通り道も土地ごとに違います。

夫婦で中庭への憧れと予算のどちらを先にするかが違っても、叶えたいことと負担を同じ表で比べると話し合いやすくなります。

この記事で学べるコト

  • 中庭をつくるべきか、別の方法が合うかがわかる
  • 敷地と用途に合う中庭の形・広さがわかる
  • 排水・断熱・耐震・防犯で見る図面と仕様がわかる
  • 中庭あり・なしの見積もりを同じ条件で比べる方法がわかる

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目次

1.中庭で叶えたい6つの目的を代替案と比べる

中庭で叶えたい6つの目的を代替案と比べる

「中庭が欲しい」という希望の中身は、家庭ごとに違います。採光をとりたいのか、人目が気になるのか、子どもの外遊びスペースなのか…

次の6つの目的に優先順位を付けて、坪庭や高窓などと比べた中庭のメリット・デメリットを見れば、代替案では満たせない目的があるかどうかで、中庭が要るかを判断できます。

1-1.中庭で解決したい6つの目的に優先順位を付ける

中庭を取り入れるか考える前に、叶えたいことを6つに分けます。

  • 採光・通風(光を取り込む、風を通す)
  • 視線対策(プライバシーを守る)
  • 外遊び(子ども・ペットが過ごす)
  • 物干し・家事
  • 食事・くつろぎ
  • 植栽・眺め

1番目の採光と通風は、同じ窓で叶うとは限りません。窓から光が入っても、向かいに風の出口がなければ空気は通りにくくなります。採光なら方位や建物の高さ、通風なら窓の位置と開け方まで見る必要があります。

夫婦で意見を出し合うなら、それぞれが別々に上位3つを選び、重なった目的から話すのがおすすめです。使う時間帯も一緒に考えておくと、休日だけの憧れと平日に使う場所を切り分けられます。

優先順位は、暮らしの中で使う回数まで考えて付けると判断しやすくなります。

1-2.坪庭・高窓・目隠しフェンスと比べた中庭のメリット・デメリット

中庭のメリットは、外で過ごす場所と、まわりの視線をさえぎる囲いを1か所で持てることです。

一方デメリットは、囲む分だけ外壁・窓・排水と手入れが増え、冬の日当たりも不利になりやすいことです。

叶えたいことによっては、中庭より小さな坪庭(眺めることが主の小さな庭)や窓の工夫で事足ります。住宅の密集地では、隣家の高さや窓の位置も含め、それぞれの案を使える条件まで見比べてください。

目的 中庭で満たすもの 代わりの方法 中庭によって失うもの(室内・土地) 手入れにかかる負担
採光・通風 方位・幅・建物の高さから光が届き、向かい合う窓で風が抜ける 高窓・天窓・吹き抜けで必要な部屋へ光が届く 中庭と周囲の通路に使う広さ 窓・床・排水口の掃除
視線対策 中庭を囲む建物の高さと中庭の幅、隣家の窓の高さと距離しだいで、隣家2階からの視線も避けやすい 目隠しフェンスや植栽は道路や1階からの視線向き。2階からの視線は窓の位置や高さを変える 壁の分だけ庭や室内が狭まる 目隠し・植栽の手入れ
外遊び 室内から見守れ、出入口を施錠できる 南側の庭・ウッドデッキ(隣家2階からは見えやすい)。2階テラスは、手すりの高さを確かめ、足をかけられる物を置かない場合に候補になる 遊び場に充てる土地と室内の広さ 床掃除、遊具の片付け
物干し・家事 洗濯室から近く、雨や視線を避けられる 2階テラスや目隠し付きデッキへ短く移動できる 家事室や収納に使える広さ 床・物干し金物の掃除
食事・くつろぎ キッチンから近く、日差しを避ける場所がある 南側の庭やウッドデッキに日よけを付けられる 食卓や収納に回せる室内・土地 床・家具・落ち葉の掃除
植栽・眺め 見たい窓と植栽の位置、育つ日照が合う 坪庭や建物脇の庭を窓から眺められる 窓辺の収納や部屋に使える広さ 水やり、剪定、落ち葉掃除

インナーテラス(屋根と壁に囲まれた半屋外の土間やテラス)も候補になります。雨を避けやすい一方、屋根や壁の囲まれ方で面積の扱いが変わります。

面積の扱いの違いは、2-2.屋根の有無で床面積と建築面積の確認点を分けるの表で解説します。代わりの方法は、目的を満たす条件と手入れまで含めて比べることが大切です。

1-3.代替案で満たせない目的があるかで中庭の要否を決める

中庭を先に考えたいのは、外で過ごす場所(子どもの外遊び・物干し・食事)と、隣家の2階からの視線よけを同時にほしい場合です。南側の庭やウッドデッキでも外で過ごせますが、目隠しフェンスや植栽で防げるのは道路や1階からの視線までで、隣家2階からは見えやすいまま。外で過ごす場所と視線よけを1か所で満たせるのが、建物で囲む中庭です。

ただし、視線を防げるかは、中庭を囲む建物の高さと中庭の幅、隣家の窓の高さと距離によって変わります。囲む建物が高く、中庭の幅が狭いほど視線は防ぎやすくなります。

しかし、冬の日は中庭の床や部屋に届きにくくなり、法律の採光の計算でも不利になりやすくなるので注意が必要です。北側の部屋を明るくしたいだけなら、高窓や天窓で足りる場合もあります。

外で過ごす場所と隣家の2階からの視線よけを両方ほしいなら中庭が候補に残ります。代替案で目的をすべて満たせるなら、代わりの方法を先に見積もるのがおすすめです。

ハウスメーカーや工務店の担当者へプランを頼むときは、「視線よけと外遊びを同時に満たす中庭のプランと、別の方法によるプランを、同じ条件で見せていただけますか」と伝えると比べやすくなります。

この1行は、7-1.中庭あり・代替案を同じ条件で依頼するで紹介する「次の打ち合わせで聞く5つの質問」のあとに書き足せます。中庭をやめる、小さくする、代わりの方法を選ぶ。どの選び方も、差額と手間に見合えば、家づくりにおける合理的な決め方です。

夫婦それぞれが譲れない目的を1つ丸で囲みましょう。

2.日当たり・視線・法規から中庭を確保できる場所

日当たり・視線・法規から中庭を確保できる場所

同じ広さの中庭でも、南に高い隣家がある土地と、周りが低い土地では冬の日当たりが変わります。平屋か2階建てかによっても、家がつくる影は変わります。

平面図の空きだけで決めず、断面図、外からの目線、法律の決まり、その土地の気候までを重ねて、中庭を置く場所を絞ります。

2-1.方位・隣家・道路・高低差を敷地図と断面図に書き込む

まず敷地図に、方位と道路の位置、隣の家が何階建てか、窓がどの階のどのあたりにあるか、土地の高さの差、車を置く場所を書き込みます。見落としやすい点は、土地探しの確認ポイントも参考になります。

日当たりは、家を縦に切った断面図と、日照シミュレーション(季節と時刻ごとに、日の当たり方や影の落ち方を示す図)で見ます。法律の日影規制で使う「日影図」は、隣の土地へ落ちる影を確かめる図で、目的が違います。

担当者には「冬至と夏至の時刻ごとの日照シミュレーション」を頼み、この段階ではまず、太陽がいちばん低い冬至の図で、中庭の床とリビングに日が届く時間を見ておきます。

図面で見る視点は「道路から」「隣家の2階から」「中庭をはさむ部屋どうし」の3つの向きに分けると、どこを目隠しするか考えやすくなります。

隣家の2階から丸見えになりそうな土地なら「隣家の2階の窓から、リビングと中庭がどこまで見えるか、断面図に目線の線を引いて見せていただけますか」と頼むと、カーテンを開けて暮らせるかを判断しやすくなります。

平面図の空きだけで決めず、冬至の日照シミュレーションで中庭の床とリビングへ日が届く時間を見てから、中庭を置く場所を決めます。

2-2.屋根の有無で床面積と建築面積の確認点を分ける

屋根のない中庭は、ふつう床面積にも建築面積にも含まれません。ただし、屋根や壁を付けたり、中庭側に深い軒を出したりすると、扱いが変わることがあります。

執筆時点(2026年9月)の建築基準法では、床面積は「各階で壁などの中心線に囲まれた部分の広さ」、建築面積は「外壁や柱の中心線に囲まれた部分を上から見た広さ」と決められています。

各階の床面積を足した延べ床面積は容積率(敷地の広さに対する延べ床面積の割合)に、建築面積は建ぺい率(敷地のうち建物が占める割合)に使います。軒やひさしを1m以上出すと、軒の先から1m内側の線までが建築面積に入るため、夏の日差しをさえぎる深い軒を付けるときは、建ぺい率とあわせて見ておくことが大切です。

出典:
e-Gov法令検索「建築基準法施行令」
国土交通省「床面積の算定方法について」

それぞれの計画ごとに見るべきポイント・担当者への質問例を下表にまとめました。該当する箇所を確認してください。

計画 面積で見ること 見積もりで分ける費目 担当者への質問
屋根のない中庭 床面積・建築面積・建ぺい率、中庭側の軒やひさしの出 外壁・窓・基礎・排水・外構 「申請のとき、中庭を床面積と建築面積に入れるかどうかを、図で示していただけますか」
屋根付き中庭 屋根の範囲(建築面積)、外気への開き方と使い方(床面積)、面する窓の採光 屋根・柱・防水・照明・建具 「屋根を付けると、床面積・建築面積と、中庭側の窓の採光の計算はどう変わりますか」
ピロティ(柱で支えた1階の吹き放ち空間) 外気への開き方と室内のように使うか(床面積)、柱に囲まれた範囲(建築面積。ふつう入る) 構造・防火・仕上げ・照明 「床面積と建築面積に入れるかどうかと、その理由を図面で示していただけますか」
インナーテラス 外気への開き方と室内のように使うか(床面積)、面する窓の採光 窓・断熱・空調・床仕上げ 「床面積に入るかどうかと、その理由を図面で示していただけますか」

屋根を付けると、中庭側の窓の採光の計算が変わる場合があります。インナーテラスがどの扱いになるかは、確認検査機関などの判断になります。

中庭は床面積に入らなくても土地は使うので、その分だけ部屋や庭に回せる場所が減ります。建ぺい率と容積率に、まだ建てられるゆとりがあるかも別で見る必要があります。

面積の扱いの最終的な判断は、ハウスメーカーや工務店の設計の担当が、建築確認の申請先となる指定確認検査機関(民間などで建築確認を行う機関)や特定行政庁(自治体の建築確認の窓口)に確かめるのが一般的です。

施主がすることは、担当者に「中庭の面積の扱いを、確認検査機関や役所にも確かめてもらえますか」と頼むことです。

2-3.採光と隣地境界・防火の決まりを担当者に聞く

法律の明るさの基準を満たすことと、住んで明るいと感じることは別ものです。そのうえで、中庭のまわりでは、採光・境界からの距離・目隠し・防火の4つの決まりが、窓の置き方に関わります。

採光の決まりで数えるのは、窓の面積そのものではなく、採光に有効な部分の面積(窓の面積に採光補正係数をかけた広さ)です。採光補正係数は、窓の上にある建物の高さと、向かいの壁や境界線までの距離の比から出す数値で、窓が採光に役立つ度合いを表します。

同じ大きさの窓でも、向かいの壁が近いほど、法律上は光が入りにくい窓として数えられます。中庭側へ窓を集めると、外向きで目隠しが要る窓は減らせる一方、囲む建物が高く中庭の幅が狭いほど、中庭側の窓は採光に数えにくくなります。

執筆時点(2026年9月)の決まりと、担当者への質問は次のとおりです。

決まり 中庭で起きること 担当者への質問 根拠
採光 住宅の居室(居間や寝室など住むための部屋)は、採光に有効な部分の面積が床面積の1/7以上。2023年4月1日からは、床面で50ルクス以上の照明を付けた部屋は1/10以上。囲む建物が高く中庭の幅が狭いほど中庭側の窓は数えにくく、0になる場合もある 「法律の採光の計算で、中庭側の窓をどれだけ数えているか、部屋ごとの計算表を見せていただけますか」 建築基準法施行令19条・20条
境界からの距離 建物は境界線から50cm以上離すのが原則。防火地域・準防火地域で外壁が耐火構造なら、境界線に接して建てられる 「境界線からの距離は、何を根拠に決めていますか」 民法234条・建築基準法63条
目隠し 境界線から1m未満で、他人の宅地を見通せる窓・縁側(ベランダを含む)には目隠しが要る。民法と違う慣習があれば慣習に従う。2階テラスや2階中庭の手すりまわりも、境界線に近ければ当たりうる 「目隠しが要る窓やテラスはありますか。中庭側へ窓を移すと減らせますか」 民法235条・236条
延焼のおそれのある部分 防火地域・準防火地域では、隣地境界線や道路の中心線から1階は3m以下、2階以上は5m以下の範囲にある窓に防火設備(火が燃え移りにくい窓)が要る。中庭側の窓でも、距離しだいで範囲に入る 「延焼のおそれのある部分に入る窓はどれですか。中庭側の窓も含めて図に示していただけますか」 建築基準法2条6号・61条

出典:
国土交通省「令和4年改正 建築基準法について」
国土交通省「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律等の施行について」
e-Gov法令検索「民法」
e-Gov法令検索「建築基準法」

4つの決まりは同じ窓に重なってかかることがあるため、表を1回の打ち合わせでまとめて聞いておくと安心です。

2-4.豪雨・積雪・凍結・強風など地域気候を加える

家に囲まれた中庭では、雨、雪、落ち葉の逃げ場が限られます。短い時間の大雨、雪の積もり方、凍結、強い風、海沿いの塩害、周りの木から落ちる葉の量は、中庭の場所や排水の考え方に関わります。

近所で見聞きした(大雨で水がたまった道、雪が残りやすい場所、落ち葉の多い木など)実際におきている事象を担当者へ伝え、どのくらいの雨の強さや雪の量を見込んで、排水と屋根を計画しているかを聞いておくと安心です。

その土地の気候は中庭の場所を選ぶ段階で伝えて、排水などの詳しい設計へ引き継ぐのがおすすめです。

2-5.敷地の条件ごとに見る図面と担当者への質問

本章で見てきた敷地の条件は、次の表で見比べられます。

敷地条件 図面で見る場所 中庭への影響 担当者への質問
方位と隣家の高さ 敷地図・断面図・日照シミュレーション 季節ごとに光の届き方が変わる 「冬至と夏至の時刻ごとの日照シミュレーションを見せていただけますか」
道路と隣家の窓 配置図・立面図 道路や2階からの視線が入る 「道路・隣家の2階・中庭をはさむ部屋どうしの3つの向きの視線を、図に描いていただけますか」
高低差と駐車 断面図・外構図 道路や車から中庭が見えやすくなる 「車を止めたとき、道路や車から中庭とリビングがどこまで見えるか、断面図で見せていただけますか」
建ぺい率・容積率の余裕 面積表・配置図 部屋と中庭の配分を左右する 「中庭案の面積表をいただけますか」
地域の雨・雪・風 外構図・周辺写真 水・雪・落ち葉がたまりやすい 「この地域の短い時間の大雨と積雪を、排水と屋根の計画でどのくらい見込んでいるか教えていただけますか」

図面と質問を行ごとにまとめておくと、打ち合わせの聞きもらしを減らせます。

隣の家の階数と窓の位置を追記した敷地図と現地の写真があれば、次の打ち合わせで、日当たりと視線の話からすぐに始められます。

3.L字・コの字・ロの字など5つの形を敷地と目的で選ぶ

L字・コの字・ロの字など5つの形を敷地と目的で選ぶ

名前だけで中庭の形を選ぶと、家に囲まれる面の数に目が向きがちです。しかし、形が変われば、雨水を外へ逃がす方法や家のなかを歩く距離も変わります。

敷地といちばん叶えたいことを重ねて、L字、コの字、ロの字、町屋型、2階中庭から候補を2つに絞りましょう。

3-1.L字・コの字・ロの字を囲まれ方と逃げ道で比べる

L字・コの字・ロの字は、中庭の2面・3面・4面が家に囲まれる形です。L字は外へ大きく開くため、開けた側からの目線を木や目隠しでどう和らげるかを考えなくてはいけません。コの字は、開けた面が1つで向きと目隠しを組み合わせ、光とプライバシーのバランスを見るのが大切です。

ロの字は4方を家が囲むため、道路や隣家からの目線を避けやすい一方、水、家具、人が出入りできる出入口は限られます。ロの字を選ぶなら、排水口が詰まったときに水が家の中へ入らない逃げ道を先に決めておくことが重要です。

囲まれる面が増えるほど外壁面積や窓が増えやすく、そのぶん費用も上がりやすくなります。耐力壁(地震や風に耐える壁)を置ける場所にも関わるため、大きな窓だけを先に並べないようにしてください。中庭の形と同じタイミングで、外への逃げ道と壁の場所を見ておくのがおすすめです。

3-2.町屋型・2階中庭を狭小地の選択肢に加える

細長い土地では、町屋型も候補になります。町屋型とは、間口が狭く奥に長い敷地で、建物の途中に中庭をはさむ形です。奥の部屋へ光や風を届けやすい一方、玄関から奥へ向かう生活動線が長くならないかを見ておかなくてはいけません。

地上の広さが限られるなら、2階中庭(2階の床の上につくり、まわりを建物で囲んだ外の場所。まわりが開いた2階テラスとは違います)や、3階建てで上下に場所を取る案も考えられます。2階の中庭は外からの目線をかわしやすい一方、洗濯物や外で使う家具を室内から階段で運ぶ動線と、水を地上まで流す方法を取り入れる必要があります。

必要な土地を「何坪以上」と一律には決められません。部屋と中庭の幅、車の台数、建ぺい率(敷地のうち建物が占める割合)によって、使える場所が変わるためです。

担当者には、平面図だけでなく断面図と面積表も添えた案を頼むと、細長い土地や上下の階の使い方まで比べられます。

3-3.敷地といちばん叶えたいことで絞る

5つの形は、どれが一番とは言えません。光、目線、外遊び、物干しなどから、いちばん叶えたいことを1つ決め、敷地で使える形をもとに考えます。

形状 向く敷地・目的 光と視線 水の逃げ道と動線 確かめること
L字 外へ開く余地があり、庭とつなげたい 2面から光を取り込みやすいが、開く側の目隠しが要る 水を外へ逃がしやすく、回り道を抑えやすい 開く方向の隣家・道路・風を見る
コの字 開く1面の向きを選べる土地 3面に窓を置ける一方、開口側から視線が入る 外への道は残るが、両端の移動が長くなる場合がある 開口の向きと目隠しを対で見る
ロの字 外の目線を避け、中庭を家の中心にしたい 四方から室内へ光が入るが、建物の影も受ける 水・物・人の道が限られ、遠回りが増えやすい 詰まり時の逃げ道、搬入、外壁を見る
町屋型 間口が狭く奥に長い土地 奥の部屋へ光を届けやすく、部屋どうしの視線に注意 前後の移動と水を外へ出す道が長くなりやすい 奥行き方向の動線と配管を見る
2階中庭 地上を駐車や部屋に使いたい 道路からの視線を外しやすく、隣家上階は要注意 階段移動と地上までの水の道が加わる 防水、排水、荷物運び、手入れを見る

隣家の2階など、目隠しフェンスでは防げない視線が入らない面が2面以上あればL字、1面ならコの字、1面もなければロの字を候補にし、視線を防げるかは断面図の視線の範囲で確かめます。

間口が狭く奥に長い土地なら、町屋型も並べて比較しましょう。地上に広さが足りなければ2階中庭も比べられますが、隣家の上の階からの視線は、同じく断面図で確かめてください。

平日の朝と夕方を思い浮かべながら、支度、洗濯、帰宅後の片付け動線を間取り図の上で指でなぞると、見た目だけではわからない生活動線と家事動線の遠回りが少ないプランを比較できます。

4.使い方と動線から中庭の広さを決める

使い方と動線から中庭の広さを決める

中庭は何畳あれば足りるのか。答えは、中庭で何をするかによって変わります。物干しに使うだけなのか、家族4人で食事をするのかで、必要な広さはまるで違うものです。

畳数の目安で決めてしまうと「狭くて使えない」「広げた分だけ部屋が削られる」かのどちらかになりがちです。置く物と人の動きを図面に描き、部屋や収納とのかね合い、毎日の家事の流れを想像しながら広さを決めるのがおすすめです。

4-1.中庭でする動作と置く物の寸法を測る

広さの決め手は、中庭で「誰が」「何を」「同時に」するかです。まず、いちばん多く集まるときの人数と、一緒にしたいこと(子どもが遊ぶ横で洗濯物を干す、など)を書き出します。次に、テーブルと椅子、物干し、遊具、ウッドデッキなど、置きたい物を列挙していきましょう。

ここで挙げた物は寸法を測り、縮尺図(実物を同じ割合で縮めた図)に置いてみてください。椅子を引いて座るスペースや、洗濯かごを抱えて歩く幅も描き込むと、広さが足りるかどうかひと目でわかります。

図面の上では、内法寸法(壁の内側から内側までの、実際に使える寸法)で考えるのが基本です。壁の中心から測った寸法や畳数では、壁の厚みの分だけ使える幅が小さくなるからです。担当者には「畳数ではなく、壁の内側から内側までの寸法を図面に書いていただけますか」と頼むと、家具を置いて確かめる図面としてそのまま使えます。

たとえば、家族4人で食事をする場合で計算してみます。

テーブルを幅120cm×奥行き80cm、椅子を引いて座る分を片側60cm、料理を運ぶ通り道を60cmと仮定すると、奥行きの方向は80cm+60cm×2+60cm=2.6m、幅の方向は120cm+左右の通り道60cm×2=2.4mです。内法2.6m×2.4mが、テーブルと椅子を配置する場合の計算例になります。ご自身のテーブルと椅子の寸法に置き換えて計算してください。

室内の床と中庭の段差、出入口の幅も見ておくと安心です。テーブルや遊具を運び入れるときの通り道も必要になります。用途ごとの寸法の出し方は、次のとおりです。

用途 必要な物・人数 確かめる寸法 中庭に隣接する部屋 代わりの方法
眺める・植栽 植栽、照明、眺める人の椅子 窓から木までの距離+木が育つ幅 リビング・和室 坪庭・窓辺の植栽
物干し 物干し、洗濯かご、洗濯物を干す人数(1~2人) 竿の長さ+かごを置いて動ける幅 洗面室・家事室 2階テラス・室内干し
子どもの外遊び 遊具・水遊びの道具、子どもの人数と見守る大人の人数(1人~2人) 遊具の大きさ+まわりの空きスペース+見守る大人の場所 リビング・ダイニング 南側の庭・ウッドデッキ
食事・くつろぎ テーブル、椅子、家族の人数 テーブルの奥行き+椅子を引く分×2+運ぶ通り道 キッチン・ダイニング ウッドデッキ・インナーテラス
友人を招く 来客用の椅子、来客を含めた人数 全員分の椅子を並べた幅+立って話せるスペース リビング・玄関まわり リビングを広げる・2階テラス

中庭の広さは畳数で決めず、いちばん多く集まるときの人数と置く物を内法の図面に描き、人が通る幅まで図面に書き足して決めるのが大切です。

4-2.中庭を広げると狭くなる部屋・収納・駐車の場所を見比べる

土地の広さが決まっていれば、中庭を広げた分だけ、どこかの場所が狭くなります。削られやすいのは、部屋、収納、廊下、車を置く場所の4つです。2階を広げるなど建物を縦に伸ばして部屋の広さを守る方法もありますが、階段の上り下りが増えてしまい、建築費にも影響してしまいます。

「延べ床面積の何%を中庭に」といった決まった割合はありません。敷地の形や車の台数、建ぺい率(敷地のうち建物が占める割合)の余裕によって、削る場所が家ごとに違うためです。町屋型のように奥に長い敷地なら、幅ではなく奥行きの向きで広さを変えられる場合もあります。

ハウスメーカーなどの担当者には、「中庭を今のプランより広げた場合と狭めた場合、どの部屋や収納が何cm変わるか、それぞれの違いを図面で見せていただけますか」と頼んでみましょう。

中庭の広さを変えた2つのプランを依頼しておけば、後述する「次の打ち合わせで聞く5つの質問」のあとに1行で書き足せます。変わる寸法が並んでいると、夫婦で「どちらを残したいか」を話し合いやすくなります。中庭の広さは、引き換えに狭くなる部屋や収納に納得できるかで決めましょう。

4-3.家事動線と将来の用途変更を間取りに落とし込む

中庭のまわりをぐるりと回れる間取りは、行き止まりがなく便利に思えます。ただ、回れることと近いことは別の話。家事動線が近道になるか遠回りになるかは、洗濯の流れで見ると判断しやすくなります。洗う場所、干す場所、しまう収納の3つを間取り図の上で線で結び、プランごとに線の長さで比較してみてください。

たとえば、中庭をはさんで洗面室と物干し場が反対側にある間取りでは、雨が降り出すたびに家を半周して洗濯物を取り込むことになります。晴れた日の写真だけではわからない、住んでから気づきやすいポイントです。

平日と休日では、どのように中庭を使うかも変わります。平日の朝に5分で洗濯物を干す場面と、休日に家族で食事をする場面を、分けて思い描くのがおすすめです。毎日くり返す5分の動きのほうが、休日の楽しみよりも暮らしへの影響は大きくなりがちです。朝の支度や帰宅後の片付けといった生活動線も、同じ間取り図に重ねておきましょう。

中庭の使い方は、年月の経過とともに変わってきます。子どもが大きくなれば中庭で遊ぶ回数が減り、在宅勤務が始まれば仕事の合間に息抜きをする場所に、老後は草木を眺めて過ごす庭になるかもしれません。今の使い方だけで床の仕上げや広さを決めず、使い方を変えやすい余地を残しておくと、使わなくなる心配を減らせます。子どもの見守りや家事の流れをもっと詳しく知りたい方は、子育てしやすい間取りも参考にしてください。

毎日の近道になり、使い方が変わっても生かせるか。2つの視点で見ると、中庭の広さと置き方を判断できます。

使いたい家具の寸法を測り、図面の縮尺に合わせて紙で切り抜いて、図面の上に置いてみましょう。縮尺1/100の図面なら、1mの家具は1cmです。

5.中庭側の大きな窓で暑さ・寒さ・耐震・防犯を確かめる

中庭側の大きな窓で暑さ・寒さ・耐震・防犯を確かめる

光を取り込もうと中庭側の窓を大きくすると、夏の暑さ、冬の寒さ、地震に耐える壁、防犯の死角の4つが同時に変わります。打ち合わせのたびに1つずつ聞いていると、どれかが抜け落ちがちです。

この4つの論点を1枚にまとめて窓を決める前に見比べると、家全体で釣り合っているかがわかります。

5-1.季節ごとの日照シミュレーションと法の採光を分けて見る

「2.日当たり・視線・法規から中庭を確保できる場所」で紹介した採光の決まりを満たしているからといって、住んでいて明るいと感じるわけではありません。暮らしの明るさは、第2章での「冬至と夏至の時刻ごとの日照シミュレーション」を並べて、朝・昼・夕方にリビングのどこまで日が届くかで見ることが大事。春や秋の様子も気になるなら、春分の図も加えてもらうと安心です。

冬は太陽が低く、中庭の向かい側の建物の影に入りやすい季節です。夏は太陽が高く、中庭の床からの照り返しで部屋が暑くなることもあります。室内の風通しは、中庭をはさんで向かい合う窓に、風の入口と出口ができるかどうかでわかります。明るさと風通しは、法律の計算とは別に、季節ごとの図と窓の開け方で見ておきます。

5-2.窓の性能と日射遮蔽を住宅全体で比べる

窓は、壁に比べて熱が出入りしやすい場所です。2026年9月時点では、2025年4月以降に建て始める新築の家は、原則としてすべて省エネ基準を満たさなければいけません。省エネ基準は2つの基準でできています。

1つは、冬に家の熱が逃げにくいか、夏に日差しの熱が入りにくいかを、屋根・壁・床・窓を合わせた家の外側全体で見る基準(外皮性能。数字はUA値とηAC値で、どちらも小さいほど性能が高い)。

もう1つは、冷暖房・換気・照明・給湯で使うエネルギーの量を見る基準(一次エネルギー消費量)です。満たしているかは、窓の種類や商品名ではなく家全体で決まり、確かめ方には、計算で確かめる方法と、断熱材や窓・設備の性能が決められた水準を満たすかで確かめる方法(仕様基準)の2通りがあります。

一次エネルギー消費量は光熱費そのものではありませんが、冷暖房や給湯で使うエネルギーの量なので、光熱費に関わる数字です。また、中庭側の窓は、冬に表面が冷えると結露が出やすく、窓の性能と換気の計画で防ぎます。

出典:
国土交通省「【建築物省エネ法第10条】省エネ基準適合義務の対象拡大について」
国土交通省「省エネ基準の概要」

Low-E複層ガラス(2枚のガラスの間に空気などの層をはさみ、薄い金属の膜で熱を伝えにくくしたガラス)を選んでも、窓の数や大きさしだいで家全体の断熱性能は変わります。夏の日射遮蔽(日差しの熱を部屋に入れないこと)は、軒や庇(窓の上に張り出した小さな屋根)、外付けのシェードで、部屋に入る前にさえぎるのが基本です。

軒や庇を1m以上出すと、建築面積に入る部分ができ、建ぺい率に関わります。くわしくは断熱と気密の考え方と省エネ基準の適合義務化も参考になります。

多くの家が密集して建ち並ぶ地域に多い防火地域・準防火地域では、境界線や道路の中心線に近い窓に防火設備(火が燃え移りにくい窓)が必要です。中庭側を向いた窓でも距離しだいで当てはまります。窓の種類や大きさ、費用にも関わるため、窓の性能とあわせて担当者へ聞いておきましょう。

担当者には「中庭側の窓を含めて、省エネ基準を満たしている根拠(計算の結果か、仕様基準のチェック表)を見せていただけますか」と頼み、中庭あり・なしの2つのプランで比較するのがおすすめです。

5-3.大きな窓と地震に耐える壁の位置を同じ図面で見る

中庭に面した窓には、耐力壁(地震や風に耐える壁)を置きにくくなります。木造の家では、壁量(地震や風に耐えるために必要な壁の量)と、壁を家全体にかたよりなく置けているかが大切です。

2025年4月1日から、木造の建物(木造の一戸建てを含む)の壁量などの基準が見直されました。省エネ化で重くなった建物に合わせて、必要な壁の量や柱の太さを出す考え方です。移行のための経過措置は2026年3月末で終わり、2026年4月以降に工事を始める家は新しい基準で確かめます。あわせて2025年4月からは、木造2階建ての家なども、建築確認で構造の審査を受けるようになりました。

出典:
国土交通省「木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準について」
国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」

単純に窓が多いから「地震に弱い家になる」とは限りません。ただし、打ち合わせの途中で窓を広げると、壁の置き方も変わります。「中庭側の窓と耐力壁の場所を、同じ図面に描いて見せていただけますか」と頼んでおきましょう。

耐震等級(住宅性能表示制度で、地震への強さを1〜3で表す等級。数字が大きいほど強い)で比べたい場合は、壁量とは別に「耐震等級はいくつで、評価書を取る計画ですか。中庭側の窓を広げても、同じ等級を保てますか」と聞きます。

中庭側の窓を大きくするなら、省エネ基準の確認結果と、耐力壁の場所を描いた図(耐震等級を計画するならその見通しも)をそろえて見比べてから、窓の大きさを決めてください。

5-4.明かり・鍵・見通しで中庭の死角を減らす

中庭を検討する際には、防犯面も意識しなくてはいけません。家に囲まれた中庭は、道路から入り込みにくくなる一方、いったん入られると外から見えにくい場所です。プライバシーを守る囲いが、見通しの悪さにもなるわけです。

警察庁も、塀や垣は敷地の境をはっきり示しながら、見通しをさまたげないように気を配るよう案内しています。塀や柵が2階の窓やバルコニーへの足場にならない置き方も、同じページで案内されています。

出典:警察庁「住まいる防犯110番/防犯性能の高い建物部品の紹介」

人が近づくと点くセンサーライト、夜も中庭を見渡せる明かり、中庭側の窓の補助錠や格子、屋根づたいに2階へ入り込めない配置。防犯は囲い方だけで決めず、明かりや鍵、見通しを組み合わせて考えるようにしましょう。

5-5.窓を決める前にそろえる資料と質問

もらった資料は夫婦で使うフォルダに集め、わからない所を打ち合わせの前に1つのメモへまとめておくと、短い時間でも聞きもらしを減らせます。表の質問は、気になる行から使えば十分です。表では、耐震を壁量と耐震等級の2行に分け、窓まわりの結露も加えています。

論点 確認する資料 見る数字・位置 起こりうる問題 担当者への質問
明るさ 冬至と夏至の時刻ごとの日照シミュレーション 冬至の朝・昼・夕方に日が届く所、夏の日差しの入り方 冬に部屋の奥まで日の光が届かない 「冬至と夏至の時刻ごとの日照シミュレーションを見せていただけますか」
暑さ・寒さ 省エネ基準の計算書、または仕様基準のチェック表 UA値・ηAC値・一次エネルギー消費量(仕様基準なら、満たした項目) 夏に暑く、冬に寒い部屋ができてしまう 「中庭側の窓を含めて、省エネ基準を満たしている根拠(計算の結果か、仕様基準のチェック表)を見せていただけますか」
耐震(壁量) 壁量の計算・壁の配置図 耐力壁と窓の位置 窓を広げると壁が足りなくなる 「中庭側の窓と耐力壁の場所を、同じ図面に描いて見せていただけますか」
耐震等級 住宅性能表示制度の評価書を取る計画か 計画している等級 窓を広げると、計画していた等級を保てないことがある 「耐震等級はいくつで、評価書を取る計画ですか。中庭側の窓を広げても、同じ等級を保てますか」
防犯 外構図・照明の計画 死角、照明の位置、鍵の付く窓 侵入されると外から気づきにくい 「中庭の死角と照明の位置を図にしていただけますか」
結露 窓の仕様書・換気の計画 窓の表面温度、空気の通り道 冬の窓まわりに水滴やカビが出る 「中庭側の窓の結露を防ぐ仕様を教えていただけますか」

6つの答えがそろえば、窓の大きさを決める判断材料が手元にそろいます。

省エネ基準の確認結果、窓と耐力壁を描いた図、耐震等級の計画、防犯の計画、結露を防ぐ窓と換気の仕様は、中庭のプランを残すと決めたあとの2回目以後の打ち合わせで詳細を詰めていきます。

6.大雨・子どもの安全・手入れと30年の負担に備える

大雨・子どもの安全・手入れと30年の負担に備える

中庭を採用したことによる後悔は、多くのページで取り上げられていますが、排水、湿気や臭い、虫、夏の照り返し、手入れの手間に集約できます。

どれも「気をつける」だけでは防げません。大雨の逃げ道、後悔の原因、子どもやペットの事故が起きやすい7つの場面、手入れを誰が担当するか、30年の点検・補修をいつ誰に頼むかまで、図面・仕様・担当・時期の4つに落としておくと後悔を防ぎやすい中庭になります。

6-1.通常排水と詰まり時の逃げ道を図面に表す

中庭の排水は、ふだんの雨の通り道と、詰まったときの逃げ道の2本に分けて考えます。ふだんの雨は、水勾配(水が流れるように床につける傾き)に沿って排水口へ集まり、集水ます(地中で雨水を集めて配管へ流す箱)を通って敷地の外へ出ていきます。

困るのは、落ち葉や泥で排水口がふさがったときや、短い時間の大雨で流しきれないとき。行き場のない水は、室内への浸水につながります。そこで欠かせないのが、オーバーフロー(あふれた水の逃げ道)です。

「短時間の大雨で排水口が詰まった場合、あふれた水は室内以外のどこへ流れる設計になっていますか」と聞き、室内と中庭の床の高さの差、掃除のための点検口、排水口の数と場所も図面で見ておきます。傾きや段差の数字は地域の雨や床の仕上げで変わるため、設計の条件とあわせて聞くと安心です。

排水口が詰まったときに水がどこへ逃げるのかを、図面で説明してもらえない計画なら、契約前に見直しを頼むのがおすすめです。

6-2.湿気・臭い・虫・照り返しなど中庭の後悔を原因から防ぐ

湿気やカビ、臭い、虫の後悔は、原因がほぼ共通しています。中庭に水が残ることと、風が抜けないことの2つです。水たまりや湿った落ち葉は虫と臭いのもとになり、風が抜けなければ床や壁が乾かずにカビが出やすくなります。

水勾配と排水口の位置、風の入口と出口になる窓の位置を図面で見ておくと、4つの後悔をまとめて防ぎやすくなります。

夏の照り返しは、床の素材と色、日よけの有無で変わります。冬の寒さや冷暖房の効きは、中庭側の窓の大きさと性能で決まる部分が大きく、5-2.窓の性能と日射遮蔽を住宅全体で比べるで紹介した「省エネ基準の確認結果」で見比べられます。原因ごとの見どころと質問は、次の表のとおり。計画のなかで心配な箇所だけ拾えば十分です。

リスク 起こるきっかけ 図面・仕様で見る所 ふだんの対応 担当者への質問
排水口の詰まり 落ち葉・泥・砂が流れ込む 排水口の数と場所、点検口 こまめにごみを取る 「排水口の掃除はどこから行えますか」
短時間豪雨 排水が追いつかない強い雨 あふれた水の逃げ道、床の高さの差 大雨の前に排水口を空ける 「この地域の短い時間の大雨を、排水の計画でどのくらい見込んでいるか教えていただけますか」
湿気・カビ・臭い 水が残り、風が抜けない 日照シミュレーション、窓の開け方、床材 窓を開けて風を通す 「中庭の風の入口と出口はどこですか」
虫・落ち葉 植栽、水たまり、周りの木 植栽の種類、水がたまる所 落ち葉と水たまりを残さない 「虫が集まりにくく、落ち葉の少ない木や草花の候補を挙げていただけますか」
夏の暑さ(照り返し) 床や壁が日差しで熱を持つ 床材の色と素材、日よけ 日よけを出す 「照り返しの少ない床材はどれですか」

6-3.子ども・ペットの事故に備えた計画をたてる

囲まれた中庭は、子どもやペットを遊ばせやすい一方、事故の起きやすい場面もあります。

  • 夏の床は「タイルや石が熱くなり、やけどや熱中症のおそれがある」
  • 水盤(水を張った浅い池)や水遊びは「浅くてもおぼれることがある」
  • 出入口の段差は「出入りのときにつまずきやすい」
  • 2階の窓は「中庭側の窓から落ちることがある」
  • 大きなガラスは「走ってきた子どもがぶつかる可能性がある」
  • 植物は「口に入れると危ない葉や実がある」
  • 出入口の鍵は「子どもが1人で外へ出てしまう恐れがある」

担当者には「リビングやキッチンから中庭全体が見えるか、ガラスの種類と手すりの高さを、図面と仕様書で示していただけますか」と頼んでおくことが大切です。

ハウスメーカーや工務店の見学会に子どもと行けるなら、段差や扉を試してもらい、子どもの目線で危ない所を探すのもひとつの手です。場面ごとに備えておくと、中庭は見守りやすい遊び場になります。

6-4.清掃・植栽・外装・防水の担当を決める

中庭のメンテナンス(掃除や点検、補修などの手入れ)は、誰がやるかを決めていないと続きにくいものです。窓の外側の掃除、落ち葉拾い、排水口のごみ取り、水やりは、家族で受け持つのが一般的です。

高い木の剪定は造園業者、ウッドデッキやタイルの補修は外構業者に頼みます。外壁や防水、建物の中や壁の中を通る排水管の点検は、保証の窓口でもある、家を建てたハウスメーカー・工務店へ相談します。

平日に手入れの時間をとりにくいことは、最初に担当者や造園業者へ伝えておきます。一度にたくさんの葉を落とさない常緑樹(1年中葉がついている木)や、汚れが目立ちにくい床材を選ぶと、手入れを減らしやすくなります。人工木のデッキも手入れを減らしやすい素材ですが、掃除や点検がいらなくなるわけではありません。

共働きで平日に時間をとりにくい家庭なら、家族の分担は平日と週末で分けて考えると継続しやすくなります。

たとえば、「平日は帰宅後に排水口のごみだけを見て、落ち葉拾いと床掃除は週末にまとめて実施する」のような分け方です。小学生くらいの子なら、落ち葉拾いを一緒にするのもひとつの手。作業ごとに担当を決めておくことが、手入れを長く続けるいちばんのコツです。

6-5.30年の点検・補修の時期と頼む先を決める

住み始めてからのメンテナンスは、時期ごとに並べると予定が立てやすくなります。

時期 家族がすること 専門業者へ頼むこと
毎週〜毎月 排水口のごみ取り、床の掃き掃除 –
梅雨前・台風前 排水口と集水ますの詰まりを見る 詰まりが取れないときの配管の掃除
秋(落ち葉の時期) 落ち葉拾い、雨どいの詰まりを見る 高い木の剪定
毎年1回 デッキや床材の傷み・色あせを見て、説明書にある塗り直しの時期と比べる –
引き渡しから10年目まで 保証期間の終わりの時期を確かめる 外壁・防水・窓まわりの点検
10年〜30年 点検の結果をもとに補修の予定を立てる 防水のやり直し、デッキや床材の交換

上表の時期はあくまで目安です。実際の周期は部材の説明書と保証書で決まります。新築住宅の屋根・外壁・窓など、雨水の入りを防ぐ部分は、引き渡しから10年間、住宅会社が欠陥の責任を負うと法律(住宅品質確保法)で決まっています。

屋根や外壁の中、屋内を通る雨水の排水管も、この10年の対象です。一方、デッキやタイル、地面の排水ますなどの外構は10年の対象に入らず、外構工事の保証は契約ごとに違うため、保証書で見ておきます。長期優良住宅の認定を受けた家では、10年を超えない間隔で点検する計画が求められます。

出典:
国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」
国土交通省「長期優良住宅のページ」

家族で担う作業と業者へ頼む作業を色分けし、1年の手入れ時間を見積もりましょう。

7.中庭あり・なしの2つのプランを同じ条件で比較する

中庭あり・なしの2つのプランを同じ条件で比較する

中庭のあるプランとないプランを、ばらばらの条件で見積もってしまうと、差額に何が入っているのかがわかりません。

家の広さや断熱性能、外まわりの工事の範囲をそろえた2つの案を並べてはじめて、中庭にかかるお金と手間がはっきりします。

7-1.中庭あり・代替案を同じ条件で依頼する

そろえたいのは、延べ床面積、構造、断熱性能(目標にする断熱の水準)、設備、外構の範囲、仕上げの6つです。まずは同じ会社に、「中庭あり」と「中庭なし(坪庭や高窓などの代わりの方法)」の2つの間取りを出してもらいます。1つでも違うと、差額のうちどこまでが中庭の分なのかを見分けられません。

ほかのハウスメーカーや工務店にも同じ条件を渡して、相見積もりをとると、会社ごとの特徴や違いもわかります。頼み方は見積もりの依頼方法を参考にしてください。

次回の打ち合わせでは、相談したいことを1回にまとめて伝えると、担当者も準備しやすくなります。すでに中庭のプランを受け取っているなら、提案を否定せず、比べる案を足してもらう形で切り出すのがおすすめです。

切り出し方は「中庭のプラン、とても気に入っています。夫婦で納得して決めたいので、比較するためのプランもあわせて見せていただけますか」のような形です。

次の打ち合わせで聞く5つの質問

  • 「今の中庭案と、中庭なしで高窓や目隠しなどを使う案を、延べ床面積・構造・断熱性能・設備・外構の範囲・仕上げをそろえて見せていただけますか」
  • 「2つのプランでそれぞれの断面図と面積表をいただけますか。断面図には、隣家の2階の窓からリビングと中庭がどこまで見えるか、目線の線も引いていただけますか」
  • 「2つのプランでそれぞれの、冬至と夏至の時刻ごとの日照シミュレーションを見せていただけますか」
  • 「外壁・窓・基礎・屋根・排水・照明・床の仕上げ・植栽・外構に分けた見積もりをいただけますか」(1回目の見積もりは概算で、窓や外構の仕様が決まるまで前後します)
  • 「契約前に出していただける資料と、費用のかかる資料を教えていただけますか」

各章で紹介した質問は、この5つのあとに1行ずつ書き足します。中庭のプランを残すと決めたら、2回目の依頼として、第5章・第6章で挙げた資料を2つの案それぞれについてまとめて頼みます。

省エネ基準の確認結果、窓と耐力壁を同じ図面に描いた図、耐震等級と評価書を取る計画、結露を防ぐ窓と換気の仕様、排水の逃げ道、防犯の計画、子どもの安全、保証の窓口と期間、窓の仕様を反映した見積もりの出し直し、30年の点検・補修の費用の見込みです。

1回目の回答を見て、中庭のプランが複数あれば、2回目へ進める中庭の案を1つに絞ります。どの中庭案も目的に見合わないとわかったら、その時点で代わりの方法に決めてもかまいません。2回目の答えがそろうと、後述する比較表を最後まで埋められます。

同じ工事でも、見積書のどこに入れるかは会社ごとに異なります。「御社の見積もりでは、中庭の排水工事はどこに入っていますか。他社では外構工事に含まれていました」と聞くと、抜けや同じ条件で比べられているかに気づけます。

7-2.中庭の費用の差・減る部屋・30年の手入れを並べる

2つのプランがそろったら、合計の差だけを見ずに、外壁・窓・基礎・屋根・排水・照明・床の仕上げ・植栽・外構と、場所ごとの差額も並べます。外構費は建物とは別の見積書に分かれることもあるため、両方を足して比べると、中庭のどこにお金がかかっているかがわかります。

延べ床面積と仕様をそろえた場合、中庭を囲む面が多い形ほど外壁と窓が増えるため、L字よりコの字、コの字よりロの字のほうが費用は上がりやすくなります(形からくる傾向で、窓の大きさや敷地の条件によって入れ替わります)。防火地域・準防火地域では、延焼のおそれのある部分に入る窓に防火設備が必要な場合も差がでやすくなります。

中庭の費用を調べると、「坪単価が3万円〜5万円上がる」「総額が10%〜15%増える」「中庭5坪分の建築費がかかる」「土地は30坪以上必要」といった数字をよく見かけます。公的な統計には中庭だけを取り出した金額がなく、「中庭の工事」に含める範囲も住宅会社ごとに違うため、全国で共通の金額は出せないのが実情です。

坪単価には決まった計算方法がなく、何の面積で割るか、どこまでの工事費を含めるかは会社によって違います。さらに、屋根のない中庭はふつう延べ床面積に入らないのに、中庭を囲む外壁・窓・排水の費用は工事費に入ります。そのため、同じ延べ床面積でも中庭のあるプランは坪単価が高く出やすく、坪単価どうしを比べても差の中身はわかりません。中庭の費用は坪単価で比べず、総額と場所ごとの差額で比べるのが確実です。

「土地は30坪以上必要」も同じで、敷地30坪・建ぺい率60%なら、建築面積は18坪までです(緩和がない場合の計算例)。残りの12坪を駐車場所・中庭・通路で分け合うことになり、容積率や斜線制限(道路や隣地の日当たりなどを守るための高さの制限)によっても変わるため、必要な土地の広さは一律には決まりません。

差額が出たら、その金額で代わりの方法(高窓や目隠しフェンスなど)がどこまでできるか、30年の手入れの費用を足すといくらになるかを並べると、高い・安いを判断しやすくなります。減る部屋や収納の広さ、生活動線の長さ、1年あたりの手入れの時間も、同じ表に並べます。お金では表せない負担まで含めて見比べると、夫婦の話し合いはスムーズに進みます。

7-3.排水・耐震・暑さ寒さ・保証の答えを表に書き残す

第5章と第6章で聞いた答え(排水の逃げ道、壁量と耐力壁の場所、耐震等級、省エネ基準の確認結果、保証範囲)は、口で聞いたままにせず、後述する比較表へ書き残しておきます。見落としやすいのは保証範囲の分かれ目で、次の2つに分けて聞いておきます。

  • 「中庭の排水のうち、建物の中や壁の中を通る管と、地面の排水ますでは、保証の窓口と期間がそれぞれどうなりますか」
  • 「中庭の床や壁の防水は、建物の保証に入りますか。外構工事の保証との境目はどこですか」

採点は、夫婦がそれぞれ別々に7-4の表を確認して、得られることと負担の両方に1点〜5点をつけます。表の横に書き込むのがおすすめです。2人の点の差が大きい項目が、夫婦で考え方が分かれているところなので、そこから話し合います。最後に答えが空いている箇所だけを住宅会社へ返すと、打ち合わせの回数を増やさずにすみます。

7-4.中庭を採用するか、小さくするか、別の方法にするかの最終判断

最後は、次の表で2つのプランを見比べます。印刷するかスクリーンショットで保存しておけば、家族と担当者が同じ表を見ながら話せます。

比較する項目 中庭あり 中庭なし・代わりの方法 差が出る理由 未回答・確認先
満たせる目的 満たせる目的を記入 満たせる目的を記入 代わりの方法では満たせない目的が残るか 夫婦で採点
初期費用(場所ごとの差額) 7-2の9つの場所ごとの額を記入 同じ場所の額を記入 外壁面積と窓の数、防火設備の要否 見積書
部屋・収納・廊下・駐車場所 部屋・収納・廊下の広さと駐車場所を記入 同じ項目を記入 中庭をまわる廊下と、中庭に使う土地 面積表・平面図
隣家2階からの視線 断面図の目線の線で、見えない範囲を記入 目隠しや窓の位置で防げる範囲を記入 囲む建物の高さ、中庭の幅、隣家の窓の高さと距離 断面図
冬の日当たり 冬至の日照シミュレーションで日が届く時間を記入 同じ時刻の日差しの入り方を記入 囲む建物の高さと中庭の幅 日照シミュレーション
生活動線 洗濯・帰宅の動線を記入 同じ動きの動線を記入 中庭を通り抜けるルートと迂回ルート 間取り図
排水・浸水の備え あふれた水の逃げ道を記入 庭や屋根の排水を記入 囲まれた床の水の行き場 担当者
暑さ・寒さ 省エネ基準の確認結果を記入(計算していない場合は、仕様基準のどの項目で満たしたか) 同じ項目を記入 窓の大きさと性能 計算書・仕様基準のチェック表
耐震 壁量の確認結果と、耐震等級(評価書を取るか)を分けて記入 同じ項目を記入 窓の大きさと耐力壁の場所 構造の資料
防犯・子どもの安全 死角・照明・鍵、ガラスの種類・手すりの高さを記入 同じ項目を記入 囲まれた場所の見通し 外構図・照明の計画・仕様書
30年の手入れと保証 1年の手入れ時間、30年の補修費の見込み、保証範囲を記入 同じ項目を記入 植栽・床材・防水の量 保証書・外構業者

表を埋めると、結論は次の4つのどれかに落ち着きます。

  • 採用する:代わりの方法では満たせない目的が残り(隣家2階からの視線よけが目的なら、断面図の目線の線で防げると確かめられ)、差額と手間に家族が納得できる
  • 小さくする:中庭を採用する目的はあるが、差額や手間に見合わない、または部屋や収納が足りなくなる。中庭の幅を縮めたプランや、外へ開いたL字に変えたプラン(開く2面に、目隠しフェンスで防げない視線が入らない場合)を頼む
  • 代わりの方法にする:高窓や目隠しフェンスなどの代わりの方法で、目的をすべて満たせる
  • 保留する:排水の逃げ道や保証の範囲など答えのない行が残っている、または断面図で視線を防げないとわかったなど、目的そのものを見直す必要がある

延べ床面積・構造・断熱性能・設備・外構の範囲・仕上げの6つをそろえた2つのプランで差額と手間を比べ、表の答えを「採用する」「小さくする」「代わりの方法にする」「保留する」の4つのどれかに当てはめて決めます。

答えの出ていない行は、質問の文にして契約前の打ち合わせへ持っていくのがおすすめです。

まとめ

中庭は、建物に囲まれたなかで自然にふれあい癒しを享受できる素敵な場所です。囲むほど外からの視線はさえぎりやすくなる一方で、外壁・窓・排水と手入れが増え、冬の日当たりや法律の採光は不利になりやすくなります。中庭の良し悪しは、得られる暮らしが差額と手間に見合うかで決まります。

外で過ごす場所と隣家2階からの視線よけを同時にほしい家庭なら、中庭は有力な候補です。一方、光だけ、目隠しだけなら、坪庭や高窓、目隠しフェンスで足りることもあります。家事動線や収納を守るために、中庭を小さくする選び方もあるでしょう。「採用する」「小さくする」「別の方法に切り替える」どれも条件が合えば理にかなった答えで、SNSの写真や「やめたほうがいい」という声だけで決める必要はありません。

代わりの方法では満たせない目的が残るかを見極め、視線よけが目的なら断面図で防げるかを確かめたうえで、延べ床面積・構造・断熱性能・設備・外構の範囲・仕上げをそろえた2つのプランで差額と手間を比べてから、中庭をつくるかどうかを決めましょう。

※本記事の法令・制度は2026年9月時点の情報で、面積の扱いや採光、構造・省エネの判断は計画地や設計によって変わるため、図面と見積もりをもとに、担当者を通じて、特定行政庁・指定確認検査機関の判断を確かめてもらってください。

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