注文住宅を建てるときには、買主が注文者となり建築会社(請負人)に仕事を依頼します。
建築会社(請負人)は買主(注文者)がオーダーした家を完成させることを約束し、買主(注文者)はその完成した建物の成果に対して報酬を支払う約束をするため、「工事請負契約」の締結が必要です。
この工事請負契約を締結するときに注意しなければならないのが、契約内容に不備がないか隅から隅まで確認することです。
契約内容にもとづいて建物を完成させる契約になるため、契約書に判を押す前はとくに慎重にならなくてはいけません。
そこで今回は、工事請負契約を締結する前に確認してほしい8つの注意点を紹介します。すでに複数のハウスメーカーと商談中の方、これからハウスメーカー選びを始める方は、ぜひ本記事で解説している内容に目を通してください。
この記事で学べるコト
- 工事請負契約の概要がわかる
- 契約する前に確認しておく8つの項目がわかる
- 契約トラブルを回避するポイントがわかる
目次
1.工事請負契約書とは?
冒頭でも解説したとおり、工事請負契約とは「買主の注文した建物を建築会社が完成させることを約束し、その成果に対して買主が報酬を支払う約束をする」契約です。
次からは、工事請負契約書がどのような内容で構成されているのかを詳しく紹介します。
1-1.工事請負契約書を締結する=本契約を結ぶこと
建築会社を1社に絞り込んで仮契約が済んだあとに、詳細プランを打ち合わせます。打ち合わせを重ねて、理想のプランができあがったら工事請負契約の締結です。
工事請負契約書は、買主が注文住宅の工事を建築会社へ委託するときに用いられる契約書です。つまり工事請負契約=本契約にあたります。
工事請負契約の内容については、建設業法19条で次の項目を書面に記載して契約書を締結するように定められています。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項
引用:建設業法 – e-Gov法令検索「建設業法」
建築会社によっては、売主側で契約時に盛り込んでおきたい内容に項目を変更しているケースもあります。
上記に該当する項目の変更があった場合は、その変更を書面に記載しなくてはいけませんので、変更点がないか確認しましょう。
また、上記にある建設業法の説明では、少しわかりにくい部分もありますので、契約前に確認してほしいポイントは「2.工事請負契約で確認しておきたい8つの項目」で詳しく紹介します。
1-2.【一例】工事請負契約書に記載されている内容
建築工事請負契約を締結する際には、以下の4つの書類があります。以下で構成されているので、それぞれ内容をしっかりと確認しなくてはいけません。
- 建築工事請負契約書
- 建築工事請負約款
- 設計図書
- 工事費見積書
たとえば、契約書に記載されている内容としては次のような項目が記載されています。
工事内容 | どこに、どのような建物を、どのくらいの広さで建築するのか |
---|---|
工期 | いつからいつまでの期間で工事するのか、また、いつ頃完成する予定か |
引き渡し | 建物が完成後、どのくらいの期間で引き渡しをおこなうのか |
建築費用 | いくらで工事を請け負うのか、その費用をいつ・いくら支払うのか、住宅ローンを利用する場合は、どこの金融機関を利用するのか |
上記はあくまで一例ですが、確認する項目はさまざまです。
そこで次からは、契約を締結する前に確認してほしい具体的な8つの項目を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
2.工事請負契約で確認しておきたい8つの項目
前述でも解説していますが、そもそも工事請負契約は「契約内容のとおりに建物を建築すること約束する」契約です。
建売のように、すでに完成している建物を見学して購入できる住宅とは違い、注文住宅は、これから建てる未完成の住宅を購入しなくてはいけません。
そのため、買主と建築会社の双方が合意するために工事請負契約を締結します。
契約を結ぶにあたり、契約内容で必ず確認してほしい項目は、次の8つです。
- 希望したとおりの建築プランになっているかを確認する
- 建築プランの内容に沿った見積もりになっているか確認する
- 提示された見積もり総額はすべて含んだ費用か確認する
- キャンセルの場合の対応が記載されているか確認する
- 工事のスケジュールと引き渡し予定日が希望どおりになっているか確認する
- 支払いのスケジュールが明確になっている確認する
- ローン特約がついているかを確認する
- アフターメンテナンスの保証内容・期間が記載されているか確認する
各項目について詳しくみてみましょう。
2-1.希望したとおりの建築プランになっているかを確認する
注文住宅では設計担当と詳細プランの打ち合わせを重ね、理想の家にするためにプランをすり合わせます。
そのため、工事請負契約を締結する際には、打ち合わせでまとめたプランどおりになっているかを設計図書で確認しましょう。
設計図書は配置図や図面、仕様書・構造計算書など、工事を正確に実施するうえで必要な書類です。
設計には意匠設計・構造設計・設備設計の3つがあり、提案時は基本的に意匠設計が用いられます。意匠設計はどちらかといえばデザインに特化している設計のため、「意匠設計=建築できる」とは限りません。
設計図書を確認する際には、建築基準法などの法規制に適合した構造上の設計もしているかも確認しましょう。建築基準に満たないプランでは、建物を建築できないからです。
担当者に確認のうえ、希望どおりのプランになっているか。また、そのプランは実際に建てることが可能な建築基準に適合しているかを確認しましょう。
2-2.建築プランの内容に沿った見積もりになっているか確認する
見積額が希望の建築プランと相違ないか確認しなくてはいけません。「2-1.希望したとおりの建築プランになっているかを確認する」で解説した設計図書にある図面と見積書を照らし合わせて、導入する設備・採用した建材の品番や数に間違いないか確認しましょう。
見積もりに抜け漏れがあると「希望していた建材と違う」「数が足りないor多い」「追加工事で予算オーバーする」などトラブルになりかねません。
見積書を隅々まで確認して、正確な内容になっているかのチェックが必要です。
2-3.提示された見積もり総額はすべて含んだ費用か確認する
見積書の確認では「2-2.建築プランの内容に沿った見積もりになっているか確認する」で紹介したプラン内容に沿っているかを確認する他に、見積額=家づくりの総額かも確認が必要です。
建築会社によって見積もりに記載されている項目は異なります。本体工事費・付帯工事費・諸費用・別途工事費などの項目で構成されていますが、見積額に何が含まれているかは建築会社によってまちまちです。
とくに注意したいのが、別途工事費に含まれている項目です。見積もり時点でいくら費用がかかるかが明確になっていない項目が記載されているケースが多く、後に費用の支払いが必要になるからです。
契約する前には、3~5社ほど相見積もりを依頼しましょう。複数社の見積もりを比較することで「A社は〇〇という項目が見積もりに含まれていないが他の会社は見積額に含まれている」など、見積もりを比較してボトルネックを見つけることが可能です。
ただし、注文住宅の見積もりには「概算見積もり」と「詳細見積もり」の2種類の見積もりが存在します。決まった見積書に統一されているわけではないため、建築会社に依頼する際のポイントがあるので注意してください。
以下の記事で、建築会社に見積もりを依頼する際のポイントについて詳しく解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
2-4.キャンセルの場合の対応が記載されているか確認する
工事請負契約約款には、キャンセルにともなう事項が記載されています。買主都合の場合、または売主都合の場合、キャンセルをどのように扱うのかが記載されている重要な項目のひとつです。必ず目を通しましょう。
記載内容に不明な点があれば、その場で営業担当に確認しなくてはいけません。曖昧な記述はトラブルの原因になりかねませんので、記載されている内容がすべてクリアになるように注意深く理解するのが大切です。
キャンセルして契約を白紙に戻す場合にいくらかかるのか、いつ・どのタイミング・どのような条件なら全額返金されるのか。遅滞した場合にいくら違約金を請求できるかなど、さまざまな記載があります。
記載内容でわからないことがあれば都度、営業担当に確認するようにしましょう。
2-5.工事のスケジュールと引き渡し予定日が希望どおりになっているか確認する
工事請負契約には工事スケジュールと引き渡し予定日の記載があります。記載されているスケジュールが希望どおりになっているか確認しましょう。
ただし、着工してから家が完成するまでのスケジュールが実現可能な期間なのかを判断しなくてはいけません。工法や工事の規模によっても期間は異なりますが、目安としては2ヵ月半~4ヵ月ほどです。
また、工期が伸びた場合の対応はどのようになるかを確認しましょう。
たとえば、賃貸住宅に住んでいて引き渡し後に引っ越しを考えている場合、工期が伸びて引き渡し予定日がずれ込んでしまうと、賃貸の更新や途中解約による違約金が絡んできます。
そのため、現実的なスケジュールなのかを確認する他に、引き渡しがずれ込んだ場合にどのような対応になるかを確認が必要です。
2-6.支払いのスケジュールが明確になっている確認する
工事請負契約に建築費用の支払いスケジュールが明確になるように記載されているか確認しましょう。
注文住宅の支払いは、「契約時」「着工時」「上棟時」「竣工時」の計4回にわけて建築費用を支払うのが通常です。
それぞれのタイミングで支払う金額は契約する建築会社によって内訳が異なりますが、契約時に手付金として「1割」。着工時・上棟時・竣工時でそれぞれ3割ずつ支払うのが概ねの目安になります。
いつ・どのタイミングで・いくら支払うのか。契約書を確認しておくのが大切です。
2-7.ローン特約がついているかを確認する
工事請負契約時のトラブルのひとつに、住宅ローンの本審査が通らないケースがあります。注文住宅を購入されるときには、多くの方が住宅ローンを利用します。予定していた金融機関のプランや金利で審査が通らないと、後々の返済計画が予定から大きく崩れてしまいます。
そこで、工事請負契約の内容にローン特約がついているか確認しなくてはいけません。
ローン特約は、仮に住宅ローンの本審査が通らなかった場合に契約を白紙に戻して、契約時に支払った手付金を全額返してもらう条件付きの約束です。建築会社との合意で取り決める内容になるため、必ず確認しましょう。
2-8.アフターメンテナンスの保証内容・期間が記載されているか確認する
着工中や引き渡し後など、建物に不具合が発生する場合があります。人がつくるものですし、引き渡し後で多少なりとも気になる箇所がでてくるものです。
そこで契約時には、依頼する建築会社のアフターメンテナンスの保証内容や期間を確認したうえで、契約書に記載されているかを確認しましょう。
注文住宅では、瑕疵担保責任があり建築を請け負う会社に最低10年間の責任が義務付けられています。
そのため、どこからどこまでが保証の範囲内か、保証範囲外の不具合にはどのようなアフターメンテナンスでサポートしてくれるのか。引き渡し後も安心して暮らせるように、保証内容を把握しておくのが大切です。
3.契約後のトラブルを回避するポイント
建築会社の営業トークで「後からプランは変更できますから、まずは本契約してからプランを決めましょう」や「月内に契約してくれれば特別に〇〇もつけますから、まずは本契約しましょう」などという言葉に惑わされてはいけません。
たしかに、工事請負契約を締結して着工後に契約した内容の一部を変更することはできます。しかし、変更する場合や追加の工事を行う場合には「変更契約」を改めて締結しなくてはいけません。予算オーバーになるケースも十分あるので注意が必要です。
契約するときに大切なポイントは次の2つです。
- 本契約するときの建築プランは詳細までプランが決まってから。簡易なプラン提案で契約を決めるのはNG
- 本契約は着工に移れる状態にまで打ち合わせを重ねて、着工の直前になってから
工事請負契約を締結する際は、十分に時間をかけて打ち合わせを重ねて、自身や家族が納得できる状態になったときに行動します。決して期日に迫られて契約するものではありません。
注文住宅は時間のかかる大きな買い物です。営業担当からの甘い言葉に惑わされず、慎重な契約を心がけましょう。
まとめ
契約してから後悔しないためにも「契約内容を十分理解し、希望に対して抜け漏れのない契約になっているか」が大切です。
契約を結ぶ際に書面に残らない口約束はNG。「言った言わない」「聞いていた話と違う!」とならないように、必ず書面で双方の合意形成できていなくてはいけません。
本記事で紹介した8つの項目が希望どおりの内容になっているかを確認してください。
キャンペーン時期や月内の契約でお得になるからと焦って契約する必要はありません。じっくり内容を吟味して、後悔しない家づくりを目指してください。
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