以前、ウッドショックによる住宅価格の高騰について解説する記事を公開しました。あれから1年が経ち、今の住宅業界の実情をあらためて紹介しようと本記事を執筆しています。
2021年にあったウッドショックは「木材の在庫不足による木材の価格高騰」が住宅価格に大きく影響したのが主な原因です。
木材の在庫不足に陥った原因としては、
- アメリカや中国で木材の需要が高まったことによる日本国内への輸入量が低下
- コンテナ不足によって船便が遅滞
- 国産材の自給率が低く輸入材に依存
の3つがありました。国内における木材の在庫が逼迫したため木材価格が高騰しました。そのため、各社は販売価格の見直しをおこない坪単価で1万円~5万円ほどの値上げに踏み切ったのです。
各社の坪単価の改定によって、たとえば、30坪の住宅を建てるとなると1棟あたり30万~150万ほど値上がりするなど、住宅価格の高騰が起こっています。ウッドショックから約1年が経過しますが、2021年のときとは違う原因で、2022年時点も木材不足が続いています。
さらに、2022年以降は木材価格の高騰の他にも住宅価格が上がる5つの理由が見込まれています。
そこで今回は、最新の不動産価格指数や木材価格の推移を見ながら、なぜ今後ますます住宅価格の上昇が見込まれるのか詳しく解説します。
この記事で学べるコト
- 木材価格がどのように推移しているかわかる
- 住宅価格が高騰している理由がわかる
目次
1.最新データでみる不動産価格の推移と木材価格の推移
不動産価格は国土交通省が公表している「不動産価格指数」。木材価格は農林水産省が公表している「木材流通統計調査」から調べることが可能です。
この2つのデータから、これまでどのような変化があり現在がどのような状況なのかを少なからず把握できます。
そこで、上記2つの最新データを見てみましょう。
1-1.【2022年4月5日:公表】最新の木材価格
2022年4月5日に農林水産省が公表した木材流通統計調査によると、木材価格の推移は次の図のとおりに推移しています。
参考:農林水産省「木材流通統計調査 木材価格(令和4年3月)」
※木材流通統計調査 木材価格(令和4年3月)を参考に筆者が作成
2019年1月から横ばいで推移していた木材価格ですが、ウッドショックが騒がれ始めた2021年4月以降、右肩上がりで価格が上がっています。樹種によって上がり幅は異なるものの、約1.2倍~1.7倍ほど値上がりしています。
2022年3月時点でも木材価格は高水準で推移している状況です。
1-2.【2022年3月31日:公表】最新の不動産指数
次に不動産価格指数を見てみましょう。国土交通省が2022年3月31日に公表した不動産価格指数は次の図のとおりです。
引用:国土交通省「不動産価格指数(令和3年12月・令和3年第4四半期分)」
不動産価格指数の数値は2010年の平均を100として数字を可視化しています。
データ自体は2021年12月まで数値になりますが、区分所有のマンションは2013年3月以降から右肩上がりに増加傾向にあり、2021年12月には173.4ポイントまで上昇しています。住宅地と戸建住宅においては、多少の上がり下がりはあるものの2020年6月ごろまで横ばいで推移していたのが、2020年7月以降から指数が徐々に上昇傾向です。
先ほどの木材価格の推移と照らし合わせると、木材価格が高騰した4月から3ヵ月遅れで住宅価格に影響がでているのがわかります。2022年3月時点でも木材価格が高い状況が続いていることから、住宅価格もまだまだ高い状況が続くと予想できるでしょう。
2.木材価格・住宅価格の高騰が止まらない5つの理由
それでは、どうして木材や住宅の価格が依然として高い状況なのか詳しく見ていきましょう。冒頭で解説したように2021年のウッドショックとは違う理由で価格を押し上げている要因があるからです。
2022年4月時点で価格を高騰させている理由として次の5つがあります
- ウッドショックとは違う理由の木材不足
- 半導体不足による住宅設備の生産不足
- 円安による輸入品の高騰
- 原油高による輸送費の高騰
- カーボンニュートラルに向けた住宅性能の向上
2-1.ウッドショックとは違う理由の木材不足
一時はウッドショックが収まりつつあると考えていたウッドショックですが、ロシアによるウクライナ侵攻によって木材不足が先の見えない状況に陥っています。
林野庁の発表によると、ロシアが2022年末まで丸太や単板などの輸出を禁止しました。日本で流通している木材のなかでロシア材の比率は低いものの、欧州への木材輸出が多いことから日本への供給不足が続くと見られているため先行き不透明な状況です。
参考:林野庁「ロシアによる「非友好国」への単板等の輸出禁止」
これにより、木材供給の不安は拭えず価格に影響が出ると考えられているため、木材不足が続き価格の高騰は避けられないでしょう。
2-2.半導体不足による住宅設備の生産不足
木材不足に起因しているロシアへの経済制裁の影響は、住宅設備の生産にも影響がでてくると予想されています。とくに、新型コロナウイルスの蔓延によって、オフラインからデジタルへの移行が急速に進んだ結果、半導体の需要が増加したため供給が追いついていません。
そこに拍車をかけるようにロシアによるウクライナ侵攻によって半導体不足が深刻化しています。半導体で必要な素材はロシア・ウクライナのシェアも含まれているからです。
この半導体不足で住宅設備の生産停止や生産遅延が発生しています。直接的に住宅設備の値崩れにどの程度影響が出るか確かなことは言えませんが、半導体不足が住宅設備の価格に少なからず反映される恐れがあります。
2-3.原油高による輸送費の高騰
木材の在庫不足の他に、原油高による輸送コストの高騰が木材の販売価格をあげるひとつの原因です。原油の値段が上がることで木材の輸送コストが上がります。その結果、輸送コストを回収するため木材価格を引き上げるしかありません。
家を建てるのに木を多く使う住宅では、輸送費の値上がりと在庫不足による木材価格の高騰が、トータルでかかる建築費用の増加につながります。
2-4.円安による輸入品の高騰
4月28日の円相場は約20年ぶりに1ドル131円台と円安水準のニュースが世間を騒がせました。木材の輸入・住宅設備の輸入など、輸入品に頼っている現状では円安による輸入コストの上昇が住宅価格に影響してきます。
いくつもの輸入品で建築される住宅は、ひとつひとつの商品単体では金額の上がり幅は小さいものの、積もり積もって建築コストが高騰する要因のひとつとなるでしょう。
2-5.カーボンニュートラルに向けた住宅性能の向上
昨今の住宅事情としては、カーボンニュートラル社会の実現に向けて住宅性能を向上させるよう政府はロードマップを策定して動いています。そのため、これから新築される住宅においては一定の基準を満たした性能を有していなくては新築を建てられない法改正が控えています。
一定の基準を満たした性能というのが省エネ性能や断熱性能などを指しています。これらの性能を満たすには、どうしても建築コストが上がってしまいます。
すでに、基準を満たしている住宅を提供するハウスメーカーや工務店においては影響が少ないですが、ローコスト住宅を売りにしている低価格帯の業者の建築コストも今後は上昇する恐れがあります。
まとめ
ウッドショックから約1年近くが経過しようとしている今も、木材の在庫が逼迫している状況が続いています。ただし、1年前の木材不足とは違う理由で供給数が追いつかず先行きは不透明です。
さらに、半導体不足や原油高・円安によって住宅に必要な木材・設備などが値上がりしています。住宅に求められる性能がますます向上することで、住宅価格は高騰すると見込まれます。
住宅取得を考えている方は建築コストも気になるでしょう。そこで早めに気になっているハウスメーカー・工務店に相談して見積もりしておくのがおススメです。
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