以前まで住宅購入は憧れだった方も、住宅ローンの低金利・住宅ローン控除の延長・グリーン住宅ポイントなど、優遇制度の後押しもあって注文住宅の購入を検討している方も多いのではないでしょうか。
このように、住宅購入を検討している方に向けた明るい話がある一方、「住宅業界では危機的な状況」が訪れています。
とくに注文住宅など戸建て住宅の購入に直接関わる話です。
この危機的な状況というのが、購入する住宅価格が高騰する恐れがあるということです。
そこで本記事では、住宅業界で今、起こっている話や住宅価格が高騰する理由について解説してきます。
これから住宅購入を検討している方は、本記事で知識をみにつけてください。
この記事で学べるコト
- 住宅価格が高騰する理由
- ウッドショックが起きた3つの要因
- ウッドショックによる4つの問題点
目次
1.住宅価格の変化と今後の住宅価格が高騰するかもしれない理由
「注文住宅の費用相場っていくらなのだろう?」思ったら、過去の統計データを調べるとよいでしょう。
これまで住宅価格がどのように変化してきたのかを調べると「住宅を購入するにはいくら必要か」「今は不動産の買い時か」など、知ることができるからです。
この、統計データは国土交通省が公表している次の2つで調べられます。
- 不動産価格指数
- 住宅市場動向調査
この2つのデータから、これまで住宅価格がどのように変化してきたのか見てみましょう。
1-1.戸建ての住宅価格はマンションに比べると値動きの幅は小さい
まずは「不動産価格指数」をご覧ください。
2021年5月31日に公表された不動産価格指数によると、次の通りです。
引用:国土交通省「不動産価格指数(2021年5月31日 公表)」
不動産価格指数の数値は、2010年の不動産価格の平均値を100%として算出されています。
2021年2月時点では、マンションは158.9%と2013年移行から大きく上昇しているのに対し、住宅地は102.7%、戸建て住宅は103.0%と、値上がり幅が小さいのが特徴です。
このように、不動産価格指数を調べると戸建ての住宅価格は2010年から3%。土地を含めると6%ほど増えているのがわかります。
ぜひ、指数を参考に今が買い時なのか、検討してみましょう。
1-2.土地代を含まない注文住宅の建築コストは3,168万円(全国平均)
もうひとつの参考データは、国土交通省が公表している「住宅市場動向調査」です。
この住宅動向によると、注文住宅の平均建築コストは次の通りです。
全国平均 | 三大都市圏 | |
---|---|---|
2016年 | 3,100万円 | 3,146万円 |
2017年 | 3,073万円 | 3,015万円 |
2018年 | 3,205万円 | 3,431万円 |
2019年 | 3,235万円 | 3,327万円 |
2020年 | 3,168万円 | 3,383万円 |
参考:国土交通省「令和2年住宅市場動向調査」
上表に記載されている平均建築コストは、土地を含まない建物にかかった費用の平均費用です。
2017年から2018年にかけて建築コストが上がったものの、2018年以降は緩やかに減少しています。
この「不動産価格指数」と「住宅市場動向調査」の2つを見れば、「マンションは上昇しているけど戸建てはあまり変わっていない」「注文住宅の建築コストも下がっているから問題なさそう」と、本記事のタイトルにある住宅価格の高騰と「ほど遠いじゃないか!」と思われる方も多いでしょう。
しかし、そのような状況ではいられない出来事が、住宅業界に訪れています。
それが、ウッドショックです。
ウッドショックによって木材価格が高騰し、木材の供給が追いつかなくなっています。
現に、一部のハウスメーカーや工務店では「受注数を制限する」「着工が遅れる」といった、ひっ迫した問題になっています。
これから戸建て住宅の購入を検討している方には「建築コストが高騰するかもしれない」というのを覚えておいてください。
そこで、次章からはウッドショックの概要と住宅取得で起こりうる問題について解説していきます。
2.ウッドショックが起きた3つの要因
そもそも、ウッドショックってなんのこと?と疑問に思われる方も多いでしょう。
ウッドショックとは、早い話が木材の供給量が少なく、住宅を建てたくても建てられないということです。
このウッドショックを引き起こした要因は次の3つが挙げられます。
- アメリカや中国で住宅需要が高まり木材の輸出量が低下している
- コンテナ不足によって船便が遅滞している
- 国産材の自給率が32.4%と輸入材に依存している
そこで次に、この3つの要因とウッドショックによって起きる問題ついて順を追って解説していきます。
2-1.【要因その1】アメリカや中国で住宅需要が高まり木材の輸入量が減っている
ステイホームによっておうち時間が増えたのは日本だけではありません。とくに、アメリカや中国ではステイホームによって住宅需要が高まっています。
しかし、木材はコロナの影響で減産。それなのに住宅需要が増えたので木材の供給が追いつくはずがありません。住宅需要の高まったアメリカや中国が、木材の主要生産地である欧州材や北米材を高値で買い付けているため、日本に供給される木材量が少なくなっています。
下記のグラフは、林野庁が発表している木材輸入実績をもとに作成した集成材の輸入量です。
参考:林野庁「木材輸入実績」を参考に筆者が作成
グラフをご覧いただいておわかりいただけると思いますが、2020年7月以降から輸入量は低下。2021年3月には、7月時の約60%の数量しか輸入できていません。
2-2.【要因その2】コンテナ不足によって船便が遅滞している
コロナによる船便の長期停滞やステイホームによる物流の活発化、スエズ運河の座礁事故による航路閉鎖によって、世界的なコンテナが不足に陥っています。
慢性的なコンテナ不足によって日本にくる予定だった船便が遅滞しているのです。
仮に海外で運よく木材を買い付けられても入荷しない状況が続いているので、国内の在庫が少なくなり住住宅業界のひっ迫につながっています。
2-3.【要因その3】国産材の自給率が32.4%と輸入材に依存している
林野庁が公表している「クリーンウッド法定着実態調査事業報告書(平成30年度)」によると、日本の国産材自給率は2018年時点で36.6%。建築や家具などで使用する用材だけに絞ると32.4%です。
つまり、国内で使う木材の6割~7割は輸入材に頼っているということです。
輸入材に頼っていた状況が長らく続いていた日本では、輸入材が入ってこないため、少ない国産材の取り合いが起こり価格高騰の要因となっています。
しかし、日本国内の林業は、林業従事者の減少や高齢化、林道・システム化などの整備遅れといった問題があるため、急に国産材への切り替えるは難しく、調達ができない状況が続いています。
3.ウッドショックによって起こりうる4つの問題
ここまで、ウッドショックの概要からウッドショックが起きた要因について解説してきました。
そこで次にウッドショックによって起こりうる4つの問題について紹介していきます。
この章で紹介する問題は次の4つです。
- 木材価格の上昇による住宅価格の高騰
- 入居予定日までに引き渡しが完了しない
- 二重の支払いによる負担額の増加
- 樹種の変更による仕上がりイメージとの違い
注文住宅を建てようと考えている方はもちろん、すでに契約を結んでこれから着工を控えている方にも影響している問題です。ぜひ、参考にしてください。
3-1.木材価格の上昇による住宅価格の高騰
木造価格が上昇=原価があがるので住宅の建築コストが高騰する恐れがあります。
ウッドショックの要因でもお伝えしている通り、木材の需要と供給のバランスが崩れているからです。
次のグラフは、農林水産省の公表資料である「木材価格統計調査」から、スギ・ひのき・米ツガの木材価格の推移です。
参考:農林水産省「木材価格統計調査」を参考に筆者が作成
2020年は木材の価格に変化がなかったものの今年の3月から徐々に価格が上がり、2021年5月には過去2年間で一番高い価格にまで高騰しています。
木材の単価があがることで、ハウスメーカーや工務店は建築コストもあがり、住宅価格が高騰するであろうと予測できます。
3-2.入居予定日までに引き渡しが完了しない
入居を予定している日までに引き渡しが完了しないという問題もあります。
ウッドショックによって木材が手に入らず工事が遅れるので完成予定がずれ込むことが想定されるからです。
施工会社では材料確保のため仕入れ業者に働きかけているようですが、木材自体の在庫不足で確保が困難な状況になっています。
そのため、着工できる物件数が減って着工待ちが増えるといった悪循環に陥っており引き渡しが遅れてしまいます。
3-3.二重の支払いによる負担額の増加
工期が遅れることで「入居を予定している日に間に合わない」という問題の他に、二重支払いによって毎月の負担額が増えしまう恐れがあること理解しておきましょう。
注文住宅を建てる際には、土地と建物のそれぞれを購入することになります。
良い土地を見つけたから先に土地だけ購入して、その次に注文住宅の建築を進めていこうと考えている方は注意が必要です。
通常、ローンの返済が始まるのは引き渡し後です。
つまり、土地を購入して引き渡しが完了したら、土地の購入額の返済が始まります。
しかし、建物が建つ前に返済していくので、土地のローン返済と同時に仮住まいの家賃を支払わなくてはいけません。
このように、注文住宅の建築が進まず工期が伸びてしまうと二重で支払う期間が増えるため、結果として月々の負担額が増加することにつながってしまいます。
3-4.樹種の変更による完成イメージと仕上がりの違い
すでに契約を結んで着工がこれからの方は、樹種の変更によって完成していたイメージと仕上がりに違いがでてくるかもしれません。
ウッドショックによってハウスメーカーや工務店では、手配できる木材の種類が限定されているため、当初予定されていた樹種から変更を余儀なくされるケースがでてきています。
たとえば、米マツや米ツガなどで構造体を組む予定だったものが、ウッドショックによって強度が少し落ちる杉に変更を余儀なくされた場合、強度を保つために木を太くする必要があります。
木が太くなることで完成していたイメージと異なった仕上がりになる可能性があるのです。
そのため、これから着工する方は、お願いしている施工会社に木材の入荷状況に問題がないか、樹種が変更されるとしたらプランのどこに変更が生じるのか、確認すると良いでしょう。
4.引き渡しの期限が決まっている方は施工会社に早めの相談を
補助制度を活用して住宅購入を検討されている方、入園・入学前に新居で生活を始めたい方など、建物の引き渡し期限が決まっているなら施工会社に早めの相談をおすすめします。
2021年6月現在、グリーン住宅ポイントやすまい給付金などの補助金の対象となるには、いつまでに、引き渡しや入居が完了していなくてはならないと条件があるからです。
たとえば、グリーン住宅ポイントは、入居後の完了報告を2022年4月30日まで。
すまいの給付金にいたっては、2021年12月31日までに引き渡し・入居が完了していなければ、給付金を受け取ることができません。
注文住宅の場合、着工から建物が完成する竣工までの期間は3カ月から5カ月程度が通常です。
竣工から引き渡しまでも1カ月ほどかかるので、工事が始まってから入居できるまで4カ月から6カ月の期間が必要になります。
さらに、土地探しから始める場合、土地探しの他に施工会社とのプラン打ち合わせ・工事請負契約の締結を含めると、だいたい6カ月~1年の期間が追加されます。
しかし、一部のハウスメーカー・工務店では、ウッドショックによって木材が手に入らず、すでに着工が遅れています。着工待ちの行列ができているなかでスケジュール通りに進められません。
今後1年から2年はウッドショックの影響が続くと見られているため、期限がある程度決まっている方は、施工会社に早めの相談をしてみましょう。
まとめ
戸建ての住宅価格は、データをひも解いてみるとマンションほど大きな値上がりはしていません。
しかし、今後の建築コストはウッドショックによって高騰する恐れがあります。
住宅価格の高騰の高騰以外にも「引き渡しが遅れる」「毎月の負担額が増える」「仕上がりが異なる」といった問題も想定しておかなければいけません。
注文住宅を検討している方で、入居スケジュールに期限がある程度決まっているなら、早めにハウスメーカーや工務店など施工を依頼したい企業に相談することをおすすめします。
本記事を参考に、あなたの後悔しない家づくりになれば幸いです。
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