空き家を活用する10の方法|今後の空き家問題について考えよう

空き家を活用する10の方法|今後の空き家問題について考えよう空き家を活用する10の方法|今後の空き家問題について考えよう

近年「空き家問題」がニュースや新聞でも取り上げられ話題となっています。2019年4月26日に総務省より発表されている「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)でも以下のような結果がでています。

平成30年住宅・土地統計調査出典:「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)

全国の総住宅数は6,242万戸、そのうち空き家件数は846万戸、空き家率は13.6%と過去最高の結果が出ています。つまり、10軒に1軒は空き家が発生しているという計算になります。

さらに年々空き家率は推移しており今後もますます増えていくと予想されています。その主な理由としては、人口減少や高齢化、さらには新築中心の住宅政策が増えるだろうという見通しからです。

しかし、これ以上空き家が増え続けるとあらゆる問題が起こります。建物の倒壊、ごみの不法投棄、治安の悪化、火災の原因などが主な問題事例になります。空き家問題を少しでも減らそうと空き家活用に取り組んでいるビジネスや企業が増えつつあります。今回はそんな取り組みをされているビジネスや企業の実例をいくつか紹介していきます。

住居を相続して空き家になるであろうと悩んでいる方、もしくは空き家になってしまい数年経ってしまいどのように空き家を活用してよいのかわからないという方のために少しでも参考になれば幸いです。

1.空き家の活用方法10選

あなたが空き家所有者になった場合、その空き家をどうすれば良いのかわからないという方が大半だと思います。しかし、せっかくの思い入れのある住居を何も活用せずに空き家のままにしてしまって本当に良いのでしょうか。

せっかくなら上手く空き家を活用した方が良いとは思うかたが大半だと思います。

一体今までどれくらい多くの空き家ビジネスが生まれているのか、その実例を踏まえて今から空き家の活用方法を10選ご紹介していきますので是非とも参考にしてみて下さい。

1-1.空き家バンク

空き家バンク

全国の地方自治体が行っているサービスに「空き家バンク」というサービスがあります。
「空き家バンク」とは、空き家所有者から物件の情報を集め、ホームページに物件情報を提供し、空き家所有者と希望利用者をマッチングさせる取り組みです。しかし、あくまで地方自治体はマッチングさせるまでであり、その後は当事者同士でどのように活用するか、直接話し合いやり取りをする流れとなります。

今では、市町村の半数以上の都道府県4分の1以上が空き家バンクを開設しておりその数は平成27年度12月時点で750にも及ぶと言われています。これだけ空き家バンクの数が増えた背景には、情報提供だけでは空き家問題の解決が出来ず、今も尚活用されていない空き家が増え続けている現状があると言えます。

特に地方の人口が減少している地域にとっては問題視されており、田舎から移住する若者をターゲットに、空き家バンクを利用して移住した方へインセンティブを設ける制度なども増えてきています。主なサービス内容はリフォーム等の改修費用の助成・補助制度です。

また、現在の空き家バンクは自治体単位で運営していますが、今後は空き家バンクの登録を一元化し、全国版の空き家バンクをスタートする動きも出てきています。

メリット
  • 登録料、成約料もかからず空き家物件掲載が出来る
  • 地方自治体に任せて空き家利用者と簡単にマッチングが出来る
デメリット
  • マッチング後は利用者との話し合いは自ら行う
  • 空き家所有者と利用者との賃貸借契約の手続きも自ら行う
  • 第三者の不動産業者に契約や管理を頼む場合は金額が発生する

1-2.コミュニティスペース

コミュニティスペース

コミュニティスペースとは、地域の住民の方が集まり触れ合うための場所の事を言います。
空き家を有効活用する一つとして、空き家所収者が収益を度外視して、主に地域活性化や地域貢献を目的に地方自治体やNPO法人へ空き家を寄贈して、空き家をコミュニティスペースとして活用するという事例も増えつつあります。

事例として、世田谷区の「世田谷区社会福祉協議会」が行った「小林ふれあいの家」が該当します。

元々お住まいだった小林様から「地域の皆様で有効に活用して欲しい」と住居を寄贈され、世田谷区社会福祉協議会のメンバーがリフォームし、社協所有の活動拠点として利用しているそうです。ミニデイ1団体、サロン3団体、子育てサロン1団体の5団体が活動を行っており、男性のボランティアの有志メンバーにより、花壇の植え替えや敷地内の除草作業を一か月毎に行い、大切に寄贈された住居を活用しています。

参考:世田谷区社会福祉協議会 小林ふれあいの家

また、もう一つの事例として同じく世田谷区の「一般財団法人世田谷トラストまちづくり」が行った「シェア奥沢」も同様の事例です。

世田谷区では近年空き家が56,000戸程あり問題視されていました。そこで、平成25年度から「空き家等地域貢献活用モデル事業」の取り組みを開始しました。その内容は空き家所収者や地域活動団体を中心に、空き家を地域貢献活用できる企画として募集をするというものでした。そのモデルケースとして選ばれたのが「一般財団法人世田谷トラストまちづくり」が行った「シェア奥沢」です。

モデル候補として選ばれた世田谷区からの助成金を元に、昭和初期に建てられた築80年の古民家を再生し、コミュニティスペースとして地域の方々に利用されています。活用方法はコワーキングスペース、シェアキッチン、トークイベント、音楽鑑賞会、子供が参加できるものづくりワークショップなど広範囲に及びます。公共施設とは違い様々な活用方法が出来る使い勝手の良さや、お洒落な雰囲気から人気を博しています。

参考:一般財団法人世田谷トラストまちづくり シェア奥沢

メリット
  • 空き家を無駄にせず、地域活性化や地域貢献が出来る
デメリット
  • 老朽化している場合の耐震工事の費用、維持費、家賃の調整が必要
  • 地方自治体やNPO法人による費用対効果の判断次第で運営可能か決まる

1-3.民泊施設

民泊施設

「民泊」とは、一般の住宅を宿泊施設として一時的に観光客に提供する仕組みの事を言います。近年、外国人観光客が急激に増加しているものの、宿泊施設が足りていないという事が問題視されており、空き家を民泊施設として利用するべきではないか、ということで注目されており事例も増えつつあります。

通常は民宿など宿泊施設として取り扱う場合は「旅館業法」に基づき、防犯や衛生面などの基準をクリアし、都道府県知事の許可が必要となります。しかし、収益目的としてではなく、あくまで一時的な宿泊という目的であり、180日以内の営業日数であれば民泊として「旅館業法」の許可がなくても扱うことが認められてきています。

そのため、政府は東京オリンピックに向けて外国人観光客の宿泊施設不足の問題の解決策として民泊を行うべく「国家戦略特区」を設置しました。また、「国家戦略特区」の自治体であれば、「旅館業法」を適用せずとも民泊を行う事が出来るという、民泊条例を定める事を可能としました。

事例としては、茨城県常陸太田市(旧里美村)の「NPO法人遊楽」が行った「里美古民家の宿荒蒔邸」が該当します。

「NPO法人遊楽」は、常陸太田市(旧里美村)からの行政補助を受けて、築150年の旧市街地の立地にある80坪の平屋建ての古民家を、伝統的な雰囲気を醸し出す囲炉裏端やかまどなどを残したまま整備して、会員制の貸し別荘型の農家民宿(簡易宿所)として蘇らせました。

会員制のため会費は年間10,000円で一泊1名3,000円、1日1組限定で4名~利用が可能です。蕎麦打ちや餅つき体験などの田舎暮らしも満喫する事が出来て、心身ともにリフレッシュが来ると評判で、年間300~400人ほどの利用があり大変人気の施設です。

参考:NPO法人遊楽 里美古民家の宿「荒蒔邸」

メリット
  • 旅行客が多く需要が多いため、集客も比較的簡単に行える
  • 初期費用が少なく民泊経営が行える
  • 短期滞在者が多く辞めたい時に辞める事が出来る
デメリット
  • 周辺住民からの理解を得る必要がある
  • 世界各国からの旅行客とのトラブルが発生する可能性がある
  • 旅館業者、旅館業法との兼ね合いが問題視される

1-4.店舗活用

店舗活用

空き家有効活用の一つとして店舗として活用するというケースが増えてきています。
その背景には、地方では空き家問題だけではなく商店街の空き店舗問題も影響しています。

そのため、地方の自治体では産業復興支援として補助金を出して運営を促しているケースもあり、最近では商工会議所なども支援の一環として対応している所もあるそうです。

立地条件が悪い場合は、物理的条件に左右されない事務所や倉庫としての活用もあるそうですが、立地の良い場合は自治体や観光復興団体などが借り上げを行いカフェや土産物店やレストランなどに転用し運営しているそうです。

しかし、最近は住居やビジネスに向かないような立地条件の悪い場合でもマーケティングやコンセプトを工夫して、隠れ家的お店として構える事で成功もしているので店舗としての活用方法は今後も増えそうです。

事例として、兵庫県神河町の「かみかわ田舎暮らし推進協会」が行った「かみかわ銀の馬車道」がそうです。

神河町は人口1万人程度の町で、近年人口減少に伴い空き家が目立つようなっていたそうです。そこで、「かみかわ田舎暮らし推進協会」は神河町空き家プロジェクトの一環として、空き家バンクと補助金制度を活用して空き家を店舗(兼住宅)に改修しました。

うどんや蕎麦、ピザ、パン工房、マッサージ店、古民家を活かしたレストランやカフェといった多くの空き家を店舗に活用させています。また、店舗の改装費の補助だけではなく移住者の悩みを聞く相談員の配置などきめ細やかなサポートも行った事で、神河町への移住者も多く増えて、今では地域の交流の場としても活用されているそうです。

参考:かみかわ田舎暮らし推進協会 かみかわ銀の馬車道

メリット
  • 空き家を無駄にせず、地域活性化や地域貢献が出来る
  • 企業へ定期借地契約、自ら店舗運営の場合どちらも収入を得られる
デメリット
  • 周辺環境の市場調査を行う必要がある
  • リフォームなどの工期が長くなる
  • 内装工事費用の負担が大きくなる

1-5.福祉・医療・介護施設

福祉・医療・介護施設

高齢化社会が進むにつれて、介護施設の不足も問題となっている背景を受けて、空き家を福祉・医療・介護施設に活用する事例も増えつつあります。

特に高齢化が進んでいる田舎ではニーズが高く、空き家を利用したフランチャイズ型デイサービス事業を展開している企業や、一部の自治体ではグループハウスやデイサービスへ空き家を転用する事業者に対して補助金を出しているケースもあります。こちらの補助金でバリアフリーへのリフォーム、火災報知器やスプリンクラーの設置といった工事費用の一部として使われます。運営費用に関しては事業者負担となっています。

また、2016年1月に政府は、空き家を在宅介護対応可能住居へ転用する事業を進める事を発表しています。この事業が進む事で、家族が介護に対応できない際の短期間宿泊施設としての利用や、介護する家族との長期間同居できる場所として利用できる空間を提供する事が可能となるので多くの期待が寄せられています。

さらに、今後は待機児童問題も増えている現状のため、介護施設と同様に保育施設などの空き家活用も進むと考えられます。すでに、東京都では待機児童問題解消のため、空き家を利用した保育施設の事業者に対して補助金を出すなどの取り組みを行っています。

事例として、「空き家バンクで福祉のまちづくりを考える会」が行っている「空き家バンク情報センター」の活動がそうです。

「空き家バンクで福祉のまちづくりを考える会」とは、福祉に特化した空き家活用を目指して取り組んでいる特定非営利活動法人であり、地域福祉の増進に寄与するため、空き家などを活用して行う福祉のまちづくり活動を行っています。

活動拠点である鳴門市では、約2,690戸の空き家があると言われており問題視していた事をきっかけに、空き家を福祉のまちづくり活動に活用する事によって、地域の人達の目に触れやくなり、地域に根ざした活動拠点に繋がるのではないかと考え行動を開始しました。平成25年2月に設立し、平成26年5月に特定非営利活動法人に認定されたそうです。

平成20年にボランティア活動の一環として、自宅の一角を改造し、子どもや地域の人々の憩いの場を創出した「コミュニティはうすTSUDOI」は、放課後児童の健全育成を図る目的で開設されました。

また、活動に賛同された「NPO法人 JCI Teleworkers’ Network」は平成16年度より、遊休施設となっていた「鳴門市役所堀江出張所」を鳴門市から借用し、活動拠点「JCI鳴門UPセンター」として障がい者支援活動の拠点として活用しています。同じく活動に賛同された、「NPO法人 コスモスはうす」は空き家になりそうな民家を再生し、高齢者の宅老所として運営しています。

参考:空き家バンクで福祉のまちづくりを考える会 空き家バンク情報センター

メリット
  • 空き家を無駄にせず、地域活性化や地域貢献が出来る
  • 施設が不足しているためニーズが高い
デメリット
  • 医療・福祉・介護の働き手が不足している
  • 地方自治体やNPO法人など対応可能な運営団体を探す必要がある

1-6.文化施設

文化施設

昔ながらの伝統ある古民家は文化施設として活用するという手段もあります。
古民家はヒノキなどの良質な木材で作られている事も多く、住宅の保存環境も良いため、
文化施設として残して伝統を引き継いでいくという意味ではとても良いでしょう。

ただし、文化施設として扱うにあたり耐震工事の費用や運営費などを考えると個人で管理をするのは難しいため、運営してくれるNPO法人や自治体を探さなくてはいけません。

基本的に古民家の再生に関しては、地域の市民や団体(歴史文化活動団体や商業団体など)が参加する研究会や委員会により活用構想や管理運営などを検討して運営をしているので、いくつか相談をしてみましょう。

事例として、「NPO法人吹田歴史文化まちづくり協会」が行っている「吹田歴史まちづくりセンター浜屋敷」がそうです。

平成12年5月に「NPO法人吹田歴史文化まちづくり協会」は、江戸末期に建てられた庄屋屋敷の歴史的古民家を所有者から寄付され、市民の文化活動や交流の場として活用する事を目的に、平成14年6月改修工事を始め平成15年3月に「吹田歴史まちづくりセンター浜屋敷」として完成しました。

市と市民の皆さんが協働しながら、地域に息づく歴史や文化を保存し発展させる事により、吹田の歴史と文化のまちづくりに貢献しようと取り組み、観光や交流の場としても役立つ文化施設として親しまれています。

参考:NPO法人吹田歴史文化まちづくり協会 吹田歴史まちづくりセンター「浜屋敷」

また、もう一つの事例として「NPO法人伊勢河崎まちづくり衆」が行っている「伊勢河崎商人館」もそうです。

「伊勢河崎商人館」は、江戸時代から300年以上続いてきた酒問屋(元小川酒店)を活用したまちづくりの拠点施設です。江戸時代からの代表的な商家の建物を残す事により、水運で栄えた問屋街河崎の歴史的文化を伝える貴重な文化遺産として、伊勢市に保存再生を粘り強く話し合い働きかけた事により、伊勢市が土地を購入し建物を修復する事になりました。

しかし、交渉過程で開館後の運営管理費や人件費などの負担は住民が責任を持って行なうという確約を求められ、責任の所在を明確にするために平成11年に「NPO法人伊勢河崎まちづくり衆」を設立しました。

伊勢市が平成13、14年の2年に渡り修復工事を行い、「NPO法人伊勢河崎まちづくり衆」のまちづくりの拠点施設として平成14年8月25日に「伊勢河崎商人館」は開館しました。
河崎の伝統的な町並みを活かし、景観を次の世代に引き継ぐ役割と共に、河崎に住む人と訪れた人が観光し交流する場として運営をしており、平成18年には伊勢市の指定管理施設に指定されました。

さらに、伊勢市を代表する文化施設としての活用だけでなく、近隣にある空き家や空き蔵の所有者と、商業施設や飲食施設等の開業希望者とのマッチングも行い、実際に契約にも繋がっており地域活性化にも貢献しています。

参考:NPO法人伊勢河崎まちづくり衆 伊勢河崎商人館

メリット
  • 空き家を無駄にせず、地域活性化や地域貢献が出来る
デメリット
  • 老朽化している場合の耐震工事の費用、維持費、家賃の調整が必要
  • 地方自治体やNPO法人による費用対効果の判断次第で運営可能か決まる

1-7.移住者体験施設

移住者体験施設

「移住者体験施設」とは、生活に必要な家具や家電製品が備え付けて、移住希望者に生活物資の揃った住宅を一定期間貸し出し、即座に生活体験をしてもらうことで移住に繋げようとする試みの事を言います。期間として数日~数ヶ月間を、無料または安価に貸し出す方式が採用されています。

多くの自治体では過疎化による税収入の定価から、移住対策事業として田舎暮らしが体験できる体験用住宅の提供や体験ツアーなどを行うようになりました。自治体によって名称は異なっており、移住体験住宅、お試し居住住宅、お試し暮らし住宅、生活体験住宅、田舎暮らし体験住宅など様々です。

実は今まで自治体では、自治体の施設見学や自然体験、地場産業の体験など、複数の体験プログラムを用意した移住体験ツアーなど数多く企画を計画し運営を行っていましたが、多額の費用や時間を割いても思ったような成果が出ていない現状でした。

なぜなら、短期間の移住体験ツアーでは、限られた時間内のため本来の日常を体験する事が出来ず移住するかどうかを判断する事が出来なかったためです。そこで、多くの自治体は「移住体験施設」を設置した方が、日常生活を体験して貰う事も出来て、移住促進にも重要ではないかと考えるようになりました。

そのため、空き家を移住体験施設として活用している自治体も増えてきている現状です。

事例として、岐阜県加茂郡白川町の「白川町 移住・交流サポートセンター」が行っている「田舎暮らし体験住宅 どさない」がそうです。

「白川町 移住・交流サポートセンター」は、白河町を知らない町外在住者の方にも安心して暮らせるようにと、田舎暮らし体験住宅に「心配ない・大丈夫」という意味の白河町の方言の「どさない」と名付けて運営しています。

田舎暮らし体験住宅「どさない」では、定期建物賃貸借契約で借り上げた空き家を、移住希望者に光熱水費など諸経費込みで利用料1ヶ月30,000円、最長3ヶ月間提供しています。
また、田舎暮らし体験住宅は2軒あり、平成4年築と明治37年築の古民家です。

どちらも白河町内にありますがそれぞれ魅力が違い、自然を近くに感じられる佐見地区か、町内の中心地に位置する三川地区か選べるので、どちらが自分の生活に合うのかなど判断する事が出来るので利用者からは好評を得られています。

参考:白川町 移住・交流サポートセンター 田舎暮らし体験住宅「どさない」

また、もう一つの事例として神奈川県三浦市の「三浦市役所」が行っている「トライアルステイ(お試し居住)」もそうです。

「三浦市役所」は不動産株式会社と提携し、「トライアルステイ」という事業を立ち上げ、
三浦市への移住を検討されている方に、空き家を活用して短期間のお試し居住を体験してもらう「移住のきっかけづくり」を行うプログラムの取り組みを行っています。

こちらは通年の事業ではなく、実施時期の間だけ不動産株式会社と提携して、空き家を借り上げて、参加者へ転貸する仕組みを取っています。今回の実施時期は2019年7月~2020年1月まで、約3週間~1カ月の滞在期間に合わせて移住希望者を募集しています。

因みに候補となる空き家はプログラムの一環のため、賃料は市場価格を参考に決められ、リフォーム費用も掛けずに現状のまま貸せる物件のみ対象となります。いわば短期間の間のみ体験用住宅として貸す形のため、賃貸物件のような位置づけですが、滞在の間に移住希望者がそのままその物件を借りる例もあります。毎年募集人数よりも多くの滞在希望者がいるため、今後も人気のイベントになりそうです。

参考:三浦市役所 トライアルステイ(お試し居住)

メリット
  • 空き家を無駄にせず、地域活性化や地域貢献が出来る
  • 集客に困らずに運営が出来る、安定的な収入が得られる
デメリット
  • 地方自治体やNPO法人による費用対効果の判断次第で運営可能か決まる
  • 自治体で所有する住宅がある場合、そちらを優先して活用される
  • リフォームなどせず現状のまま貸せる物件に限られる

1-8.シェアハウス

シェアハウス

シェアハウスとは、1軒家を数人で共有して居住する居住形態の事を言い、それぞれ賃貸人は独立しているため賃貸借契約を入居者数結びます。また、シェアハウスの特徴としては賃貸人毎に賃料、敷金、礼金、更新料のやり取りとなり、シェアハウス利用者を限定して受け入れる事が出来ます。

シェアハウスの利用者の目的は様々ですが短期滞在者が多いため、期間が終了したら確実に出て行ってもらう事が出来る定期借家契約を結ぶ事が基本的な契約の流れとなります。

現状、田舎では賃貸物件が充実していなく、マンションやアパートよりも戸建ての物件が多いものの、利用者の多くの単身者にとってはあまりにも大きい物件となってしまう傾向でした。そこで、空き家をシェアハウスとして貸し出すという活用方法が生まれました。

利用者からしてみれば1人で物件を借りるより賃料を安くできるという点もあり、空き家所有者からしてみても入居者が数人いれば収入は得られて空室リスクも減るため、双方にとっても利点があるとの事で、シェアハウスの需要も増えてきています。

とはいっても、空き家をシェアハウスとして利用するにあたり、部屋を個別に分けて鍵を付けたり、シャワーやトイレを複数設置、キッチンや共有スペースにも工夫が必要です。
そのため、初期費用はかかりますが一部リノベーションをしなければ現状のまま空き家を
シェアハウスとして活用するのは難しいでしょう。

次に問題になるのが入居者を探す事です。
そこでおすすめしたいのがシェアハウス利用者とマッチングできるサイトの利用です。
シェアハウスの需要が高まっているためマッチングサイトも増えています。

ただし、1点注意が必要なのはサイトを利用して入居者をとマッチングする事は出来ますが、賃貸借契約の締結、やり取りなどは直接自分で行わなければいけませんので、心配の方は別途不動産業者にお願いするなどの対応が必要です。

また、シェアハウスの管理が最後は問題となります。複数の入居者を管理する必要があるので、自分一人で管理するのは正直大変でしょう。シェアハウス内の人間関係トラブルや
掃除やごみ出しなどのルール決めなど、入居者のフォローがこまめに必要です。

そこで管理会社に管理は委託する事をおすすめします。

しかし、管理会社にシェアハウスの管理委託をすると、一般のマンション管理より大変なため管理費用が少し高額になります。管理費用の目安は平均的に賃料の10%くらいです。その分、通常の賃貸よりも複数の入居者から収入が得られる事を考えるとそこまで高いという事もないでしょう。

メリット
  • 空き家を無駄にせず家賃収入を得られる
  • マッチングサイトを利用して入居者を集められる
  • 空室リスクの心配が少ない
デメリット
  • 管理が面倒くさい、人間関係トラブルが多い
  • リノベーション費用など初期費用が掛かる
  • マッチング後は利用者との話し合いは自ら行う
  • 空き家所有者と利用者との賃貸借契約の手続きも自ら行う
  • 第三者の不動産業者に契約や管理を頼む場合は金額が発生する

1-9.借主負担DIY型賃貸

借主負担DIY型賃貸

「借主負担DIY型賃貸」とは、借主が自己負担でリフォームをする前提で、空き家に手を入れない状態で空き家を賃貸する方法の事です。

通常は貸主である所有者が、内外装の修繕を行い、きれいな状態にした上で賃貸を行う事が主流でした。その理由は、借主が新しい物件やきれいな物件に契約する確立が、当たり前ですが高かったからです。

しかし、最近ではDIYも話題となり、自分自身で住居をリフォームしたいという方の傾向が多く増えてきました。そこで、住居に支障がある程の大きな修繕でなければ、そのまま借主に引き渡し、借主が自分で修繕しながら居住するDIY型賃貸が増えてきたのです。

ですが、借主負担DIY型賃貸にしても、貸主としても承服できない修繕はあり得るため、事前に修繕可能箇所の取り決めは必要です。それでも空き家オーナーからしてみたら事前にリフォームする手間や費用が掛からず賃貸が出来て、物件を返却される際には原状回復する必要もないため簡単に収益を得られる最適な活用方法です。

さらに、空き家バンクを利用して借主負担DIY型賃貸の借主を探す事が出来れば、初期費用も全く掛からずリスクも抑えられて収益も出せるので、これ以上にない空き家の活用方法と言えるでしょう。

メリット
  • 初期費用が掛からず家賃収入を得られる
  • 物件がきれいになって返ってくる
  • リフォームなどせず現状のまま物件を貸せる
デメリット
  • 修繕費が借主負担なので家賃が安い
  • 事前に修繕可能箇所の取り決めを決める必要がある
  • 不動産業者に仲介・契約・管理を頼む場合は金額が発生する

1-10.売却

空き地の売却

空き家のまま所持している大きな理由は、固定資産税や都市計画税の軽減処置による負担額を抑える目的であるが、住んでいない家や土地に毎年かかる税金は家計にとって負担が大きくなってきます。また、2014年11月27日に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法」で「特定空き家」と認定された場合は、今まで受けていた税制優遇が受けられなくなり納税額はさらに膨れ上がります。

そのため、空き家の立地条件によって活用方法が定まらないもしくは、収益化できない場合は売却してしまうのも一つの活用方法と言えます。

2016年度の税制改正により、譲渡所得金額から最大3,000万円まで控除できる「空き家に係る譲渡所得の特別控除」が新たに設けられたため、相続によって所有した空き家は売却しやすくなっているので、売却できるときに売却してしまうのが得策です。

また、空き家がある状態で売却しようと考えている場合、ホームインスペクション(住宅診断)をしてから売却することで、買主への物件購入の判断材料になるだけでなく、売主にとっても売却しやすくなるといったメリットもあります。そのため、空き家の売却時にはホームインスペクション(住宅診断)が今後注目されると予想されます。

メリット
  • 物件を維持・管理するための負担が不要になる
  • 空き家の条件によっては譲渡所得税を抑えられる
デメリット
  • 思い入れのある家を手放すため自責の念にかられる場合がある
  • 室内の家具などの私物を処分もしくは整理に費用がかかる

2.空き家の相談窓口

前述では空き家の活用方法と事例について解説してきました。空き家の活用といっても様々な方法があるため、ご自身でどのような活用方法を実施するかの判断は難しいと思います。

空き家の相談先といっても様々な企業や団体で相談を受けています。所有している空き家をどのように活かすべきか、最適な方法を提案してくれる最良のパートナーを探してみましょう。

2-1.不動産業者

空き家の相談先としてまずあげられるのが不動産会社です。空き家の巡回サービスを始め、各種設備のメンテナンスや清掃など行うサービスを提供しています。また、空き家の管理だけでなく、所有している空き家の条件から、売却すべきか、賃貸として貸し出すべきかといった活用方法を提案してくれます。

企業によっては、専任の税理士による簡易診断や売却相談といった、空き家に関する相続相談を行っているので、子供に相続予定がある場合などは相談してみるとよいでしょう。

不動産会社を選ぶ基準としては、所有している空き家を対応エリアとしている不動産会社に相談してみるといいですが、会社規模によって対応していないケースもあるので、大手・地場問わず複数社の話を伺ってみましょう。

2-2.自治体(空き家バンク)

全国各地の自治体が地域活性化や地域内外の住民交流を目的に行っているサービスで、空き家の所有者と空き家に住みたい利用者の間に入りマッチングさせる取り組みです。空き家バンクは、三方よしのビジネスモデルとなっており、近年注目されています。

売り手は、毎年かかる納税負担といった空き家を抱える不安から解消され、買い手は、その地域に住みたいニーズが満たされるだけでなく、物件を安く購入や借りることができます。また、空き家バンクで成約した場合は、条件によって助成金を修繕費に充てられるといったメリットがあります。

また、自治体も倒壊や衛生上といった住環境に悪影響をあたえる建物を抑制できるだけでなく、移住者が増えることで、得られる税収や地域活性化に期待できるといった地域社会に貢献したサービスです。

各自治体では空き家バンクの相談窓口を設けていますので、自治体のホームページをご覧ください。

2-3.NPO法人

空き家の活用や管理、相続問題に対して支援している非営利団体で自治体と連携して活動しています。業務で空き家の管理を行うことで、魅力ある物件として提供できるだけでなく、手つかずのまま放置される空き家をなくすことを目的に活動している団体です。

空き家の管理以外にも、空き家に関するリサーチやコンサルティングを行っています。空き家の専門家として各地でセミナーや相談会を開催しているので、機会があれば参加してみるとよいでしょう。

一部地域では対応できないエリアもありますが、現在は対応できるエリアを拡大しているので、今後は全国で相談できるようになることを期待しています。

まとめ

本記事で紹介している通り、日本では年々空き家が増加しています。そのなかでも、物件の所有者が相続人不在のまま亡くなってしまったり、相続人はいるものの相続放棄によって、所有者が不明の土地や空き家が増えているのが現状です。

所有者不明の土地や空き家が増加傾向にあるため、国や自治体は空き家を問題視しており、税制改正や法規制によって空き家問題の解消に向けた動きが見受けられます。

不動産という資産を次の代にどのように残すか考えるのも重要です。活用方法で紹介した通り、活用が見いだせるのであれば、地域や社会にとって有益な価値を提供できます。しかし、どうすることもできない負債になるような不動産の場合は、残される次の世代のことを考え、どう残さないかを考えなくては、この空き家問題は解消されず増加の一途をたどるでしょう。

そうならないために、ご自身で所有する空き家に向き合い最善の方法を見つけ出してください。

※本記事は2019年5月現在の情報を基に作成されています。

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