土地には「地目」という言葉があるのはご存じでしょうか?
地目とは、土地の登記項目のひとつで、これから「土地を購入する」「土地を相続する」など、土地の所有者になる予定があるなら、地目についても知っておかなくてはいけません。
地目では、土地の使い方を制限しています。その種類も豊富で最低限の知識は身につけておくと良いでしょう。
そこで今回は、地目についての基本的な知識や地目の種類、調べる方法、変更登記が必要になった際の手続きの流れなど、地目について徹底解説していきます。
この記事で学べるコト
- 地目の種類と用途
- 地目の調べ方と必要な書類の取得する方法
- 地目の変更手続きのやりかた
目次
1.地目とは土地の用途を表す用語
不動産登記法では、土地の登記のひとつに「地目」があります。
この地目とは、土地を主にどのような用途で使うのかを示したものです。
不動産登記規則の第99条及び不動産登記事務取扱手続準則の第68条により、土地の利用状況によって区分されています。
区分された地目は、2020年6月現在。23種類の地目に定められています。
1-1.23種類の地目と土地の利用目的
不動産登記法では、土地の登記事項のひとつに「地目」があり、23種類に区分されています。
地目の種類と土地の利用目的は以下の通りです。
地目 | 目的 |
---|---|
田 | 農耕地で用水を利用して耕作する土地 |
畑 | 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地 |
宅地 | 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地 |
学校用地 | 校舎、附属施設の敷地および運動場をいう。 |
鉄道用地 | 鉄道の駅舎、附属施設および路線の敷地のすべてをいう。 |
塩田 | 海水を引き入れて塩を採取する土地 |
鉱泉地 | 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口およびその維持に必要な土地 |
池沼 | 灌漑(かんがい)用水でない水の貯留地 |
山林 | 耕作の方法によらないで竹林の生育する土地 |
牧場 | 獣畜を放牧する土地をいう。牧畜のために使用する建物の敷地、牧草栽培地および林地などで、牧場地域内にあるものはすべて牧場とする |
原野 | 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地 |
墓地 | 人の遺骸、遺骨を埋める土地 |
境内地 | 本殿、拝殿、本堂、社務所、庫裏、教団事務所などの建築物がある一画の土地や参道として用いられる境内に属する土地(土地宗教法人法の第3条第2号および第3号)※宗教法人の所有に属しないものを含む |
運河用地 | 運河法の第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地 |
水道用地 | 給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、濾水場、そく水場又は水道線路に要する土地 |
用悪水路 | 灌漑(かんがい)用又は悪水排泄用の水路 |
ため池 | 耕地灌漑(かんがい)用の用水貯溜池 |
堤 | 防水を目的に築造した堤防をいう。 |
井溝 | 田畝又は村落の間にある通水路 |
保安林 | 森林法に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地 |
公衆用道路 | 一般の交通の用に供する道路。個人の所有する土地であっても、一般交通の用に供する道路は公衆用道路に該当する |
公園 | 公衆の遊楽のために供する土地 |
雑種地 | いずれの22の地目にも該当しない土地 |
1-2.登記上の地目と実際の用途は必ずしも同じわけではない
土地の登記時に必要な地目ですが、登記上の地目と実際に土地の用途として認識されている地目とでは、必ずしも同一ではありません。
これは、登記上の地目=「登記地目」と、固定資産税や都市計画税の納税通知書に記載されている地目=「課税地目」の2つ地目があるからです。
【登記地目】
登記申請したときの地目
【課税地目】
市区町村役場の担当者が土地の現況や利用目的を確認して認定した地目
土地の用途が登記地目と変更があった場合、変更があった日から1カ月以内に登記の変更手続きをしなくてはいけません。
これは不動産登記法で、土地の所有者に義務付けられています。
所有者が変更の手続きを怠った場合には、不動産登記法第164条により10万円以下の過料が課せられます。
そのため、登記地目の用途が変更したら忘れずに登記変更を行いましょう。
2.地目の調べ方は土地所有の有無で違う
「これから土地を購入したい」と考えている方は、購入した土地を「どのように利用するか」のイメージができているはずです。
前述で解説している通り、土地は地目によって利用目的を表しています。
そのため、土地探しをはじめる際には、目的通りに利用できる土地なのか、地目を調べなくてはいけません。
また、土地探しにおいては、過去の地目が判断材料のひとつになります。
今は「宅地」として販売されている土地でも、昔から宅地だったわけではない土地もあります。
なぜなら、以前は「田」「池沼」「ため池」だった土地を、都市開発で区画整理され「宅地」として販売している可能性があるからです。
たとえ、地盤改良工事など施されて整地された土地でも、地震による大きな揺れで液状化する恐れはゼロとは言えません。
購入を検討している土地があった際には、今の地目だけではなく過去の地目にも目を向けてみましょう。
そこで、次からは地目の調べ方について紹介します。地目を調べるには土地の有無によって調べ方が少し異なります。
2-1.所有している土地の地目を調べる2つの方法
所有していない土地の地目を調べるには、以下の2つの方法があります。
- 固定資産税納税通知書を確認する
- 土地の登記済権利証を確認する
すでに所有している土地を調べる場合には、固定資産税納税通知書や土地の登記済権利証を確認する方法があげられます。
固定資産税納税通知書は、毎年4月~6月ごろにかけて市区町村役場から送られてきます。
納税する年の1月1日時点で土地や家屋の所有者。つまり課税対象者に対して送られてくる通知書です。
この固定資産税納税通知書には地目の項目が記載されていますので、確認してみましょう。
土地の登記済権利証は、登記申請を済ませた方に法務局から交付されていた書類です。
登記済権利証は所有者が保管する書類ですので、手元にあれば確認しましょう。
この2つの方法の他に、市区町村役場に電話で確認する方法があります。
電話で確認する際には、土地の所有者である証明が必要になります。そこで、固定資産税納税通知書の通知番号などを伝えることで教えてくれるケースがあります。
ただし、担当者によっては教えてくれない場合もあるので、確実に地目を調べる方法とは言えません。
そのため、この方法は確実に地目を調べたいなら、「固定資産税納税通知書」または「登記済権利証」を確認すると良いでしょう。
2-2.所有していない土地の地目を調べる方法
所有していない土地の地目を調べるには、以下の方法があります。
- 登記事項証明書や登記事項要約書を確認する
購入予定の土地など、所有していない土地の地目を調べたい場合には、登記事項証明書や登記事項要約書を取り寄せて確認します。
登記事項証明書や登記事項要約書は、土地の地番さえわかっていれば手数料はかかりますが、どなたでも請求できます。
前述で紹介した固定資産税納税通知書や登記済権利証が見当たらないときは、登記事項証明書や登記事項要約書を確認する方法で調べましょう。
3.登記事項証明書や登記事項要約書を取得する方法はそれぞれ違う
地目の調べ方について解説してきましたが、つづいては登記事項証明書や登記事項要約書の取得方法ついて紹介します。
地目を調べるうえで、現在の登記情報を知れる登記事項証明書や登記事項要約書は正確に把握できるのでまず間違いのない方法です。
取得方法の解説を始める前に、登記事項証明書と登記事項要約書の違いについて簡単に触れていきます。
3-1.登記事項証明書と登記事項要約書の違い
登記事項証明書は、法務局で管理している登記記録を証明書として発行している書面です。
一方、登記事項要約書はその名の通り、登記記録を要約している書面です。つまり登記情報の必要箇所の要点だけをまとめた書面です。
この2つの書面で大きく違うのは、法的な証明力があるかないかです。
所有権などを証明するために効力があるのは登記事項証明書です。しかし、登記事項要約書には証明する効力はありません。
3-2.登記事項証明書と登記事項要約書を取得する方法の違い
前述で解説している通り、2つの書面では決定的な違いがあります。
そのため、証明力のある登記事項証明書は複数の請求方法があるのに対し、登記事項要約書はひとつの方法しかありません。
【登記事項証明書の取得方法】
- 法務局を訪れて窓口で交付
- 法務局のホームページから請求様式をダウンロード、必要事項を記入し郵送による交付申請
- 登記・供託オンライン申請システムを利用して請求(平日の8時30分~21時まで利用可能)
【登記事項要約書の取得方法】
- 取得したい土地を管轄している法務局の窓口で交付
上記の通り、2つの書面で取得方法が異なります。
登記事項証明書は、窓口で交付してもらう他に、郵送やオンライン請求ができるので、ご自身の都合に合わせて請求方法を選べます。
それに対し、重要事項要約書の取得には取得したい土地を管轄している法務局へ訪れて交付申請しなくてはいけません。
3-3.登記事項証明書を取得する手順
それでは次に、複数ある登記事項証明書を取得するための大まかな流れについて解説していきます。
前述で説明している通り、登記事項証明書は「窓口交付」「郵送」「オンライン請求」の3つの方法で取り寄せることが可能です。
【窓口交付の手順】
- 法務局または地方法務局へ行く
- 登記事項証明書交付請求書を記入する
- 収入印紙を添付し申請する
【郵送の手順】
- 法務局のホームページから「登記事項証明書等」の交付請求様式をダウンロードする
- 登記事項証明書交付請求書を記入する
- 収入印紙を添付する
- 返信用の封筒と切手を同封して管轄の法務局へ郵送する
【郵送の手順】
- 「登記・供託オンライン申請システム」のホームページにアクセスする
- かんたん証明書請求をクリックする
- 「登記事項/地図・図面証明書交付請求書」を選択し必要項目を入力する
- 請求内容を確認し送信する
- 送信後に手数料を電子納付する
オンライン請求の詳しい操作方法は「かんたん証明書請求による請求手続の流れ」を参照いただくと、便利です。
地目の変更を考えている方は、登記事項証明書とあわせて、地積測量図も請求しておくと良いでしょう。
土地の測量図である「地積測量図」は、地目を変更する際に必要な書類です。そのため、同時に取得しておくとスムーズに変更手続きを進めることができます。
4.農地以外の地目変更はそんなに難しいことではない
「田」や「畑」などの地目は農地法が関わってくるため、地目の変更手続きが複雑なり時間や知識が必要になります。
しかし、それ以外の地目変更についてはそこまで難しくはありません。
地目変更に必要な手続き方法や土地の調査方法など、変更登記に必要な最低限の知識があればどなたでも変更はできます。
4-1.地目変更登記の手続き方法
地目の変更は、変更したい土地を管轄している法務局で行う手続きです。
「田」「畑」など、農地の地目の土地を、耕作以外の目的で利用する転用の場合には、農地法によって届出や許可が必要になります。
そのため、ここでの手続き方法は、農地以外からの地目変更というのをご理解ください。
地目変更登記の手順は、大きく以下の3点です。
- 土地地目変更登記申請書の書類を作成する
- 管轄の法務局に提出する
- 登記が完了したら登記完了証を受け取る
このように、手順をみてみると土地の所有者がご自身で手続きを行っても、そこまで難しくはない作業しょう。
ただし、土地地目変更登記申請書の記入項目には土地の所在、地番、地目、地積、または不動産番号が必要になってきます。(不動産番号がわかれば所在地などの記入は省略できます)
また、「宅地」に地目変更する際には、地積の項目に小数第二位まで記載しなくてはなりません。
そのため、地目を変更する際には地積がわかる「地積測量図」を手元に用意しておきましょう。
4-2.農地を転用するには農地法の手続きを先に行わなければならない
農地の地目変更を行う場合には、地目変更登記の手続きの前に農地法の手続きを行わなくてはいけません。
なぜなら、地目が「田」「畑」などの農地は農地法という法律があります。農地法の許可なく自宅などへの建築行為は禁止されており、厳しい罰則が設けられているからです。
農地を転用する手続き自体はご自身でも行うことができます。しかし、農業委員会の担当者との打ち合わせや現地調査の立ち合いなど、時間が必要なのと専門知識を有していなくてはいけません。
そのため、農地からの転用を行う場合には、農地転用の専門的な知識のある行政書士や不動産会社に相談すると良いでしょう。
まとめ
今回は土地の用途を表す「地目」について解説してきました。
地目とは、対象の土地をどのように使うのかを区分しています。その種類は23種類です。
地目を調べると土地について、さまざまな判断ができるようになります。「目的に適している土地か」だけでなく、過去の利用状況から地盤の強度など仮説をたてられるので、土地探しの判断材料のひとつになるでしょう。
そして、地目を調べるのは難しい作業ではないこともご理解いただけたのではないでしょうか。調査を委託して無駄な費用をかけるよりも、ご自身で調べれば費用はおさえられます。
また、地目を変更もご自身で申請できます。しかし、農地から転用する場合には地目変更の手続き以外に、農地法の手続きを済ませなくてはいけません。
地目の変更はご自身でできる範囲なのか。難しいようなら不動産会社や専門分野の方に相談してみると良いでしょう。
土地を探すうえで、地目は重要な指標のひとつです。これから、土地の購入を検討されている方の助けに、本記事が参考になれば幸いです。