注文住宅を建てるときに、多くの方は坪単価を気にするでしょう。各社の建築費用の目安を把握するには、坪単価×建物の床面積で計算するからです。
予算内で理想の注文住宅を建てるなら、建築会社を選ぶときのひとつの指標になります。
このように比較検討の材料となる坪単価ですが、正しく理解しておかないと想定よりも高い見積もり金額に驚く人も少なくありません。
そこで本記事では、坪単価の概要から最新の相場、坪単価を抑える方法について解説します。記事の最後には、坪単価だけで業者選定を判断するのは危険な理由についても紹介していますので、企業選定をこれから始める方、今まさにどこの会社にしようかピックアップしている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事で学べるコト
- 坪単価とは何か?の概要がわかる
- 坪単価の計算方法がわかる
- 坪単価を抑える方法がわかる
- 坪単価だけで建築会社を比較してはいけない理由がわかる
目次
1.坪単価ってなに?坪単価とは「1坪あたりの建築費用」
坪単価というのは、家を建てるのにかかる建築費用を1坪(約3.3057㎡)あたりの費用に換算した単価です。
たとえば、坪単価が50万円のハウスメーカーで35坪の家を建築する際に、1,750万円の建築費用で家が建てられると、概ねの費用感を把握することができます。
ただしこの坪単価は、どのように算出するか定義されているわけではありません。
各社が公表している坪単価をそのまま鵜吞みにして「A社の坪単価は●●万円だから、大体●●万円の費用を見積もっておけば予算内におさまるだろう」と高を括ってしまうと、実際に見積もり金額を見て驚愕することになるでしょう。
そこで次に、坪単価の計算方法について注意したいポイントについてさらに詳しく解説します。
2.定義がないからこそ注意したい!坪単価の計算方法
前述で紹介したとおり、坪単価は「建築費用÷床面積(坪数)」で算出できます。しかし、計算式にある「建築費用」は何の費用を指しているか、「床面積(坪数)」が建物のどこの床面積から計算されているのかで、算出される坪単価が大きく変わります。
そこで、「建築費用」と「床面積(坪数)」の2つが何を基準に坪単価を算出しているのかポイントを押さえましょう。
2-1.建築価格は家が建つだけの費用?
坪単価で計算される建築費用は「家が建つ費用=建物本体価格」をもとに算出されるケースが多いです。しかしこれでは、家を建てるのに「いくら費用がかかるのか」が坪単価からはわかるものの、家が建つ費用だけでは快適な生活を送るための家づくりはできません。
具体的に坪単価で計算する建築費用には、家を建てるのに必要な本体工事が含まれているのが一般的です。しかし、坪単価を安くみせるためにガスや水道などライフラインを整える工事や諸費用・設計費など、業者に支払う金額の一部が含まれていない場合があるのを留意しましょう。
家が完成しても実際に生活できなければ何の意味もありません。坪単価は「家は建つけど、生活できるレベルに満たない家の価格」という点を覚えておきましょう。
2-2.床面積は「延べ床面積」と「施工床面積」の2つある
もうひとつ注意いただきたいのが、坪単価の計算式で用いる床面積です。
坪単価の計算で使用する床面積は会社ごと指標としている面積が異なり、2つの床面積に分類できます。
延べ床面積 | 建築基準法にもとづいて、建築確認申請に記載されている建物の床面積の合計。玄関ポーチなど含まない面積 ※施工床面積より面積は小さくなる |
---|---|
施工床面積 | 玄関ポーチ、ウッドデッキやバルコニー、押し入れなど、建築工事に含まれるすべての面積 ※面積が大きくなる |
坪単価の計算で使用する床面積は施主にとってリアルな費用感がわかる「延べ床面積」で計算する会社もあれば、坪単価を低くみせるために「施工床面積」で計算している会社もあります。
具体的に、延べ床面積と施工床面積で算出する方法とでは、同じ建築費用でも次のように算出される坪単価に違いがでます。
【条件】
建築価格:3,000万円
延べ床面積:150㎡(45.37坪)
施工床面積:158㎡(47.79坪)
●延べ床面積による計算方法
3,000万円÷45.37坪=661,230円
●施工床面積による計算方法
3,000万円÷47.79坪=627,746円
このように、どの床面積の値で計算するかによって金額が異なります。坪単価が安いからといって、建築費用も安くなるとは限らないので注意しましょう。
3.最新の坪単価の相場
住宅で使用する構造は主に「木造(W造)」「鉄骨造(S造)」「鉄筋コンクリート造(RC造)」の3つに分類できます。この章では、構造別の坪単価と相場感について紹介します。
最新の坪単価を知るには、国土交通省が公表している「建築着工統計調査報告」を確認するのがおすすめです。下記で紹介する表は2020年度の建築物の着工状況から、構造別に坪単価を試算したものです。
坪単価 | 平均工事予定額 | 1棟あたりの平均床面積㎡(坪数) | |
---|---|---|---|
木造 | 約56.9万円 | 2,030万円 | 117.86㎡(35.65坪) |
鉄骨造 | 約82.7万円 | 4,065万円 | 162.41㎡(49.12坪) |
鉄筋コンクリート造 | 約85.5万円 | 33,949万円 | 1311.96㎡(396.84坪) |
参考:政府統計の総合窓口(e-stat)「2020年度 建築着工統計調査 時系列表」をもとに筆者が作成。用途別(居住専用住宅)のデータに絞り込み、構造別にそれぞれの数値を試算。
とくに注文住宅などの戸建ては、木造や鉄骨造で建てられることが多く、上記の数値を目安として捉えておくと良いでしょう。
鉄筋コンクリート造はマンションの建築が多く、1棟あたりの平均床面積や工事予定額を引きあげる結果となっています。
次に、住宅を建てるとなるとハウスメーカーや工務店に依頼して建築することになるため、坪単価をベースにどんな建築会社やどんな家が建てられるのか相場感を見ていきましょう。
坪単価の相場 | 企業・建築例 |
---|---|
30万円~50万円 | ・ローコスト住宅メーカー、地元の工務店 例)建売住宅、デザインがシンプルな標準仕様の注文住宅 |
50万円~70万円 | ・中小規模工務店 例)木造の住宅。一部オプション設備を採用した注文住宅 |
70万円~90万円 | ・大手ハウスメーカー 例)鉄骨造の住宅。大手ハウスメーカーが提供する規格住宅に設備のグレードをアップさせた注文住宅 |
90万円~ | ・大手ハウスメーカーやゼネコン 例)鉄筋コンクリート造の住宅。フルオーダーの高級注文住宅 |
上記はあくまで目安です。導入する設備のグレードや設置する数などによって、坪単価は大きく変わります。
4.坪単価に影響する6つの要素
前述で目安を紹介しましたが、坪単価は主に6つの要素に影響して金額が変わります。そこでこの章では、具体的に坪単価は何に影響してくるのか、掘り下げて解説します。
坪単価に影響するのは次の6つです。
- 坪単価の計算方法
- 建築構造
- 建物の外観デザイン
- 設備や建材のグレード
- 間取り
- 建築エリア
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
4-1.坪単価の計算方法
「2.定義がないからこそ注意したい!坪単価の計算方法」でも紹介しているとおり、坪単価の計算方法に定義はありません。
どこまでの建築費用が含まれて計算された坪単価なのか、床面積は何を基準に算出されているのかで、坪単価の金額は左右されます。
本記事をご覧いただいている方にとっては言わずもがなですが、各社がどのような計算方法を採用しているか確認しましょう。
4-2.建築構造
こちらも前述で解説しましたが、建物の建築構造によって坪単価は変わります。建築資材の原価があがれば、販売価格もあがるからです。
注文住宅で主に利用される構造は「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3つです。木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造の順で坪単価は上昇傾向にあるため、注文住宅の依頼を検討している会社はどんな構造が得意なのか、前もって調査しておきましょう。
4-3.建物の外観デザイン
建物の外観デザインも坪単価に影響します。デザイン性に富んだ建物の外観は、施工の難易度が高く工期が伸びるため、建築費用をあげてしまう要因になるからです。また、外壁材の使用量が増えるため、単純に金額もあがります。
たとえば、外周に凹凸をつけてデザインに変化を加える、1階と2階で不均衡のデザインにするといった複雑デザインは、建築コストが高くなるので坪単価も高くなります。
4-4.設備や建材のグレード
住宅に導入する設備や建材のグレードをアップすると、坪単価もあがります。一般的に、企業が公表している坪単価は、標準の設備や仕様で建築した場合の金額だからです。
そのため、標準設備からグレードをあげると、設備や建材の単価がアップするので坪単価もあがってしまいます。
4-5.間取り
坪単価はどのような間取りを採用するかによって変わります。
間取りを増やすと建築資材や照明機器などの導入が増えるため、建築費用が割高になります。壁で区切られることによって、壁で使う建築資材・開放的な空間よりも照明の設置が必要になるからです。
また、1階と2階の水まわりの配置がまとまっていない場合や収納スペースを増やすことでも建築費用は高くなります。
4-6.建築エリア
建築エリアも坪単価に影響します。とくに都心と地方とでは、都心の方が坪単価は高くなる傾向にあります。単価が高くなる要因としては人件費が主な理由です。
住宅と住宅との距離が近く住宅密集地帯で建築するケースが多い都心では、交通量の多い幹線道路など、交通整理に人が必要で人件費がかかります。
また、重機の出入りができない道路幅の狭いエリアで建築する場合も多く、人の手で建材を運び入れる必要があるため、人員確保や工期が増えてしまいます。
このように、建築エリアでも人件費に違いがあり、建築費用にも影響してくるので、結果として坪単価が割高になります。
5.坪単価を比較する際は「同一条件」で
坪単価は、建築会社を選ぶときのひとつの指標です。そこで、坪単価をベースに予算内で理想の注文住宅を建てられる会社なのか、判断することになるでしょう。
ここまで、本記事をご覧いただいている方ならすでにご理解していますが、会社によって
坪単価の計算方法は異なります。
比較検討はとても大切です。しかし、金額だけの比較ではなく「どのように計算された坪単価なのか」という表面化されていない部分まで、突っ込んで営業担当に確認することをおすすめします。
「延べ床面積と施工面積のどちらで計算されているか?」「坪単価には何の費用が含まれているのか?」「設計費や諸費用は含まれているのか?」など、詳細な情報を集めて、同一条件で坪単価を比較しましょう。
6.坪単価を抑えるには?建築費用を抑えるしかありません
注文住宅を建てるにあたって坪単価を抑え、なんとか予算内におさめたいと考える方もいるでしょう。そこで、この章では坪単価を抑える方法について解説します。
坪単価を抑えるといってはいますが、結論、建築費用を抑えなければ坪単価は下がりません。床面積を減らしても、導入する設備の数やグレードは減らないからです。そのため、坪数が小さいとしても坪単価は高くなる傾向です。
そこで、坪単価を下げる=建築費用をさげる3つのポイントを紹介します。
- 設備や建材のグレードは不要であれば落とす
- 建物の外観デザインはできるだけシンプルに
- 内装も間仕切りの壁や建具を減らしてシンプルに
できるだけ不要な設備・建材のグレードを下げることで建築費用を抑えることが可能です。デザインをシンプルにすれば、凝ったデザインよりも工事にかける時間を短縮し、人件費を削れるため建築費用を削減できます。
別の記事で具体的なコスト削減方法を紹介していますので、あわせてこちらの記事も参考にしてください。
7.坪単価だけで判断するのはNG|見えないコストにも目を向ける
各社を比較するうえで坪単価はひとつの指標ですが、かといって坪単価だけで建築会社をきめてしまうのは早計です。
予算の兼ね合いもあり、注文住宅の建築費用に着目することについては問題ありません。しかし、費用に関しては中長期的な視点も必要です。
実際に引き渡された住まいで生活していくのは、これから何十年も続きます。暮らしはじめてからかかるお金。たとえば、光熱費やメンテナンス費・毎年の納税額など、今は見えていない費用も考えて総合的な判断をしなければいけません。
できるだけ建築費用を抑えて住宅を取得したとしても、メンテナンス費用を考えていなかったため、数年後にまとまった修繕費が必要になるケースも少なくないからです。
たとえ初期投資が増えたとしても、トータルコストがお得になれば初期投資を回収できる可能性があります。
このように「安く住宅を手に入れる」ことを目的にしてはいけません。本来、住宅を購入する目的は人それぞれですが、根底には「マイホームを手にいれて快適な生活を送りたい」という想いがあるため、あまりにも坪単価に気を取られてしまい本来の目的を見失わないようにしましょう。
まとめ
坪単価の計算方法には定義がありません。そのため、各社が公表している金額だけを安易に信用してはいけません。坪単価で比較をするなら、どのように計算された数字なのか把握する必要があります。
坪単価はあくまで、建築会社を選定するうえでの基準のひとつです。坪単価にばかり気を取られてしまい、本来の目的を見失わないように検討してください。
「どこの建築会社に相談しよう?」
業者選びを始めるなら
各社のプランを無料で比較!
- 注文住宅は一生に一度の大きな買い物。絶対に失敗したくない!
- 家族の理想を叶えてくれる建築会社が判断できない。。。
- オシャレな写真を参考にしてるけど、取り入れたいプランがありすぎる!
ひとつでも当てはまるなら、
複数社のプラン比較がおすすめです
家族の理想をカタチにできる注文住宅。
理想を実現するためには、優れたパートナー選びが重要。
しかし、自分とマッチする建築会社を探すためには
各社のモデルハウスを見学
問い合わせフォームからカタログ請求
と、一社一社調べるには時間も手間もかかる...
そこで、すきま時間の情報収集で利用してほしいのが
「タウンライフ家づくり」です。
タウンライフ家づくりでは、家づくりで大切な「資金計画」から「間取り」など、あなたの要望にあったプランをまとめて比較できます。
もちろん利用は無料!
提案してくれた企業と契約しないといけない縛りもありません。
これから理想の家づくりを始めるなら、まずは自分にピッタリな間取りプランを把握しましょう。