

2025年5月に経済産業省のホームページで、ZEH・ZEH-M委員会が普及促進の方向性を示した資料を公表しました。
参考:経済産業省「ZEH・ZEH-Mの普及促進に向けた今後の検討の方向性について」
資料のなかでは「ZEH基準の定義」を見直す方針が示されており、これから注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入を検討している方に大きく影響する話しです。
そこで今回は、ZEH・ZEH-Mの普及促進に向けた今後の検討の方向性についての資料をもとに、2027年4月に予定されている戸建てのZEH基準の見直しについて詳しく解説します。
家づくりのために土地を探し始めた方やそろそろマイホームの購入で動き出そうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
※ZEH基準の見直しは、執筆時点の資料を参考にしています。今後の議論によって内容を変更する可能性があるので、ご注意ください。
この記事で学べるコト
- ZEH基準の見直しを検討している理由がわかる
- 基準の見直しで変更されるポイントがわかる
- 新ZEH基準の適用スケジュールがわかる
- 新ZEH基準のメリットとデメリットがわかる
1.ZEH基準の見直しを検討している3つの理由

資料を読み解くと、主に次の3つの理由からZEH基準の見直しを検討しています。
- カーボンニュートラル社会の実現
- 2030年までに省エネ住宅の義務基準をZEHレベルに引き上げ
- 2024年11月にGX志向型住宅が新設された
それぞれの理由をみていきましょう。
1-1.カーボンニュートラル社会の実現
政府は2050年までに温室効果ガスの排出を2013年度対比で実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目標に掲げています。住宅性能を高めることは、カーボンニュートラル社会の実現を目指すうえで重要な要素のひとつです。
断熱性や気密性に優れた住宅の開発・省エネ性能の高い設備や再生可能エネルギー設備の導入など、エネルギー消費量の削減や生活に必要なエネルギーの創出によって、住宅分野全体で温室効果ガスの排出量を削減しようと取り組んでいます。
1-2.2030年までに省エネ住宅の義務基準をZEH水準に引き上げ
2021年8月に公表された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ」では、遅くとも2030年までに「断熱等性能等級5」「一次エネルギー消費量等級6」のZEH水準に義務基準を引き上げることを予定しています。
前述したカーボンニュートラル社会の実現の達成に向けたロードマップで、住宅の性能を段階的に高めていくため、2030年に義務基準を引き上げる計画です。
2030年には、現行のZEH基準は最低レベルの省エネ基準に位置づけられます。省エネ性能を有した住宅のストック数と普及を広げていくため、今よりも優れたZEH基準を設けて高性能な住宅のストック数を確保する狙いがあります。
1-3.2024年11月にGX志向型住宅が新設された
現行のZEH水準を大きく上回る省エネ住宅として、2024年11月22日の国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策の閣議決定で「GX志向型住宅」という住宅性能区分が新設されました。
GX志向型住宅は「断熱等性能等級6以上」「一次エネルギー消費量削減率35%以上(再エネ除く)」と、現行のZEH水準の住宅よりも省エネ性能に優れた住宅です。
GX志向型住宅のような新たな高水準の住宅性能区分が登場したことで、現行基準から「GX志向型住宅」の基準に見直しを図ろうとしています。目指すべき指標となる基準を明確にして住宅に求める省エネ性能の向上をさらに加速させる狙いがあるでしょう。
GX志向型住宅の詳しい解説については「GX志向型住宅を建てると得られる4つのメリットと新築する際の注意点」で紹介しています。本記事とあわせてご覧ください。
2.ZEH基準の見直しで変更される5つのこと

現行のZEH基準の認定を受けるには、次の4つの定義があります。
①ZEH強化外皮基準(地域区分1~8地域の平成28年省エネルギー基準(ηAC 値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA値[W/m2K]1・2地域:0.40以下、3地域:0.50以下、4~7地域:0.60以下)
②再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減
③再生可能エネルギーを導入(容量不問)
④再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減
引用:資源エネルギー庁「ZEHの定義(改定版)」
④の一次エネルギー消費量(再エネ含む)の削減率に応じて、『ZEH』とNearly ZEHに分類されます。
ZEH Orientedは多雪地域や都市部の狭小地など、太陽光発電システムの発電が十分に発揮できないエリアを対象としています。上記の①と②を満たすことで認定が受けられます。
現行のZEHについては「ZEH(ゼッチ)基準の戸建てが当たり前?2022年以降のロードマップから重要なポイントを解説」で詳しく解説しています。
今回検討されているZEH基準の見直しによって、2027年の4月以降は以下の5つが現行のZEHと大きく変わります。
- 名称が「GX ZEH」に変わる
- 断熱等性能等級6以上が基準になる
- 一次エネルギー消費量(再エネ除く)の削減率が35%以上が基準になる
- 一次エネルギー消費量(再エネ含む)の削減率が115%以上の新しい上位基準が新設される
- 設備要件が追加される
上記、5つの変更点をひとつずつ解説します。
2-1.名称が「GX ZEH」に変わる
旧基準と新基準が混同しないように、新しい基準では、ZEHから「GX ZEH(ジーエックス・ゼッチ)」と名称が変わります。
現行では、一次エネルギー消費量を正味ゼロにする住宅を『ZEH』としていましたが、違いを明確にするため、新基準では「GX ZEH」です。
Nearly ZEHやZEH Orientedも、新基準では「Nearly GX ZEH」「GX ZEH Oriented」の表現になるので覚えておきましょう。
また、Nearly ZEHやZEH Orientedを含んで広義的な意味合いで用いられていたZEH基準という言葉も、新基準では「GX ZEHシリーズ」として区別されます。
2-2.断熱等性能等級6以上が基準になる
前述のとおり現行のZEH基準における外皮基準は、以下のように定義されています。
日本をいくつかの地域に分けて、地域区分ごとに強化外皮の基準値が設定されています。建築エリアに応じて定められている基準値を満たして外皮性能を高めなくてはいけません。
ずらずらとわかりにくい文章が並んでいますが、まとめると住宅性能表示制度における「断熱等性能等級5」を満たすことが現行のZEHで求められている基準です。
脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップに記載されているとおり、2030年以降に新築される住宅はZEH水準の性能を目指しています。そのため、更なる住宅性能の向上に役立つ基準であることが望ましいと、ZEH基準の見直しを検討しているのです。
2027年4月以降に予定されているGX ZEHでは、より断熱性能を向上させるため、断熱等性能等級6以上を基準に変更すると検討しています。
2-3.一次エネルギー消費量(再エネ除く)の削減率が35%以上が基準になる
前述のとおり現行のZEH基準における一次エネルギー消費量(再エネ除く)の削減率は、以下のように定義されています。
一次エネルギーは、空調や照明・給湯・換気といった生活に必要なエネルギーを指します。2016年(平成28年)に定めた基準値が基準一次エネルギー消費量です。
この「基準一次エネルギー消費量」と、建築する建物に導入する設備機器から設計時に算出した「設計一次エネルギー消費量」を以下の計算式でBEI値が算出されます。
上記の計算で、BEI値0.8が「一次エネルギー消費量等級6」です。現行のZEH基準では、一次エネルギー消費量等級6に適合している住宅でなくてはいけません。
ZEH基準の見直し後は、さらなる削減率が要求されており、一次エネルギー消費量(再エネ除く)の削減率が35%以上のBEI値0.65が基準になります。
すでに、子育てグリーン住宅支援事業や東京ゼロエミ住宅といった住宅取得の支援制度では、一次エネルギー消費量(再エネ除く)の削減率が35%以上の住宅を対象に支援を行っています。
このことから、一次エネルギー消費量(再エネ除く)の削減率が35%以上も実現可能であると判断しました。
2-4.一次エネルギー消費量(再エネ含む)の削減率が115%以上の新しい上位基準が新設される
「2.ZEH基準の見直しで変更される5つのこと」で紹介したとおり現行の『ZEH』は、一次エネルギー消費量(再エネ含む)の削減率が100%以上と定義されています。
つまり、削減率が100%であろうと130%であろうと同じ『ZEH』で区分されていました。
そこで今回の見直しによって、一次エネルギー消費量(再エネ含む)の削減率が115%以上の住宅に対して上位ランクの基準が新設されます。より削減率に優れた住宅とわかるように区分されます。
新設される上位ランクの名称は、GX ZEH+(ジーエックス・ゼッチ・プラス)です。
2-5.設備要件が追加される
現行のZEH基準では、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーを導入することが求められていましたが、ZEH基準の見直し後は、新たに設備要件が追加されます。
追加される設備要件は、高度エネルギーマネージメント(HEMS)と容量が5kwh以上の蓄電池を導入するのが必須になります。
敷地内に駐車場がある場合のみ対象ですが、EV充電/充放電設備の導入も推奨事項として要件に追加されます。
本章で紹介した変更点をまとめると、2027年4月以降の新基準は下表のとおりです。赤字が現行のZEH基準から変更になる箇所です。
| 名称 | 外皮基準 |
一次エネ消費量削減率 (再エネ除く) |
一次エネ消費量削減率 (再エネ含む) |
その他の要件 |
|---|---|---|---|---|
| GX ZEH+ | 断熱等性能等級6以上 | 35%以上 | 115%以上 |
太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーを導入(容量不問) 高度エネルギーマネージメント(HEMS)および蓄電池(5kwh以上)を導入 |
| GX ZEH | 100%~115%未満 | |||
| Nearly GX ZEH | 75%~100%未満 | |||
| GX ZEH Oriented | – | 高度エネルギーマネージメント(HEMS)の導入 |
3.新ZEH基準は2027年4月から適用を予定

新しい基準のGX ZEHシリーズは、2027年4月より適用が開始される予定です。
一方で、現行のZEH基準がすぐに受けられなくなるわけではありません。現行のZEH基準も2027年度いっぱいの2028年3月までは新規の認証を取得できる想定です。
つまり、2027年4月から2028年3月までの1年間は、旧基準と新基準の切り替え時期として猶予を持たせた運用を予定しており、GX ZEHシリーズと現行のZEHのどちらの認証も取得できる移行期間になっています。

2028年4月以降はGX ZEHシリーズである新基準に一本化されるため、今回の見直しスケジュールを加味して、家づくりの計画をたてるのが大切です。
4.新ZEH基準によって得られるメリットとデメリット

新ZEH基準は、より高性能な住宅を手に入れて快適な暮らしを実現する機会となるでしょう。
本章では、現行のZEH基準から新基準に引きあがることで、得られるメリットとデメリットを紹介します。ポイントは次の5つです。
- 毎月の光熱費を抑えられる
- 災害時に安心できる
- 住宅性能を比較しやすくなる
- 設備投資による建物価格の高騰が見込まれる
- GX ZEHシリーズに対応できるハウスメーカーが限定される
それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
4-1.毎月の光熱費を抑えられる
新ZEH基準のGX ZEHシリーズは、現行のZEH基準よりも断熱性能や省エネ性能が優れている住まいのため、冷暖房設備を効率よく利用して毎月の光熱費を抑えるのがメリットです。
また、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーを導入しているため、発電した電気を普段の暮らしで使うことで、光熱費という経済的な負担を軽減できます。
4-2.災害時に安心できる
今回の見直しで設備要件が追加されたため、Nearly GX ZEH以上の住宅であれば、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーのほかに、高度エネルギーマネージメント(HEMS)と5kwh以上の蓄電池の導入が必須です。
とくに蓄電池の導入が要件に追加されたことで、現行のZEH基準よりも災害時の備えがより強固となります。
太陽光発電システムで発電した電気を蓄電池にためておくことで、停電のときにも家全体へ電気を供給できます。自家発電によるエネルギー自給率を高めて、もしもの時でも安心できる住まいです。
4-3.住宅性能を比較しやすくなる
ZEH基準の見直しでGX ZEHシリーズが登場することで、住宅性能がさらに比較しやすくなるでしょう。
現行の基準では、再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が100%以上であれば『ZEH』として認定をうけています。つまり、どんなに高い削減率でも、『ZEH』と一括りにされていました。
今回の見直しによって、上位ランクのGX ZEH+が新設されます。GX ZEH+の登場によって、GX ZEHシリーズのなかでも、住宅性能に違いを理解しやすくなります。
また、現行のZEH基準は「断熱等性能等級5」「一次エネルギー消費量等級6(BEI値0.8)」です。新基準では「断熱等性能等級6以上」「BEI値0.65」へ引き上げられるため、現行基準よりも住宅性能が強化されています。
2027年4月以降には、GX ZEHとZEHが市場に混在しますが、求められている住宅性能の認定基準が異なるため、GX ZEHかZEHかで住宅性能のグレードを比較しやすいです。
4-4.設備投資による建物価格の高騰が見込まれる
新基準の住宅を建てるとなると、グレードの高い住宅設備や建材などの導入が必要となるため、設備投資がかかります。必然的に建物価格は高騰する見込みです。
注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入で気になるのが建築費用や購入費用です。今回の見直しで基準が引きあがることで、住宅購入者は初期にかかるイニシャルコストの負担が増えるでしょう。
ただし、長期視点で考えれば、エネルギーコストの削減による経済効果や快適性の向上による豊かな暮らしという価値を手に入れるというメリットはあります。
初期にかかるイニシャルコストと生活にかかるランニングコストを勘案して、購入の意思決定をするのが大切です。
4-5.GX ZEHシリーズに対応できる建築会社が限定される
現行のZEHよりも高い基準であるGX ZEHシリーズは、施工するのに技術力が必要となるため、対応できる建築会社が限定されます。
「2.ZEH基準の見直しで変更される5つのこと」で紹介したとおり、GX ZEHの基準を満たすには、今よりも高い性能の住宅でなくてはいけません。施工するハウスメーカーや工務店は技術力に違いがあるため、対応できる企業は限られてしまいます。
GX ZEHに対応した住宅を建築したい方は、対応可能なハウスメーカー・工務店選びから始めましょう。複数社を比較するのがおすすめです。
建築会社を選ぶときのポイントは、子育てグリーン住宅支援事業で新設されたGX志向型住宅の建築実績を聞いてみると良いでしょう。
GX志向型住宅は、GX ZEHの先駆けのような住宅区分で、断熱性能や省エネ性はGX ZEHと同等の基準を設けています。そのため、建築実績が豊富にあるハウスメーカー・工務店であれば、GX ZEHの対応も可能である場合が多いです。
まとめ
2027年4月以降に実施が予定されているZEH基準の見直しによって、GX ZEHシリーズという新たな基準が設けられます。
一覧にまとめると下表のとおりです。
| 名称 | 外皮基準 |
一次エネ消費量削減率 (再エネ除く) |
一次エネ消費量削減率 (再エネ含む) |
その他の要件 |
|---|---|---|---|---|
| GX ZEH+ | 断熱等性能等級6以上 | 35%以上 | 115%以上 |
太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーを導入(容量不問) 高度エネルギーマネージメント(HEMS)および蓄電池(5kwh以上)を導入 |
| GX ZEH | 100%~115%未満 | |||
| Nearly GX ZEH | 75%~100%未満 | |||
| GX ZEH Oriented | – | 高度エネルギーマネージメント(HEMS)の導入 |
GX ZEHシリーズの運用は、2027年4月からを予定しており、2027年4月から2028年3月までの1年間は、GX ZEHシリーズとZEH基準のどちらの認証も新規で取得できる移行期間です。
2028年4月以降は、原則としてGX ZEHシリーズのみの運用に切り替わるため、家づくりを検討している方は、スケジュールを加味した行動が必要になるでしょう。
ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、家づくりの計画で役立てていただければ幸いです。
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