今後、相続するかもしれない田舎の土地や相続したものの活用していない田舎の土地、できることなら土地活用したい。けれども、そもそも需要があるのかわからない。そのような声を耳にすることが増えています。
田舎の土地活用を考える際には、やはりそのエリアに生活者がいるかという点が非常に大きなポイントになります。人口が減少傾向にあるエリアで行える土地活用は非常に限られています。
たとえば、神奈川県の2019年の人口増減は以下の状態です。
横浜市や川崎市といった東京に近いエリアの人口は増えていますが、一方で人口増のエリアは一部であり、そのほかのエリアは人口減(青色)となっています。
人口の減少傾向は深刻で、四国に至っては高松市以外ほぼ人口減となっています。
土地活用の対象となるエリアの人口の動きを確認することをおすすめします。
そのほかのエリアの人口の増減は以下のサイトで確認できます。
このように少子高齢化が進む日本ですが、生活者がいない田舎で行える土地活用でおすすめできるのは太陽光発電です。もちろん状況にもよりますが、そのほかの土地活用は田舎には向きません。
とはいえ、すでに田舎の土地をお持ち、もしくは田舎の土地を今後相続予定の方は、その田舎の土地をどのような形にせよ保有していくこととなります。
まずは太陽光発電で活用できないかを検討しつつ、それ以外の土地活用についても考えてみましょう。
目次
1.田舎の土地を有効活用する12の活用方法
土地活用といってもさまざまなものがあり、そのすべてが田舎に向く活用法とは限りません。
それぞれの土地活用の特徴をふまえながら、田舎の土地活用についてひとつひとつ見てみましょう。
1-1.所有し続けるつもりがなければ売却する
お持ちの土地自体に魅力があれば、様々な土地活用が行えますが、所有地を今後も保有していくつもりがなければ、早めの売却が最適です。
土地を保有し続ける限りは、固定資産税や都市計画税などがかかるため、人口が増加傾向にあったり、開発の余地もあると見なされていたりするエリアでは価格にこだわらなければ比較的スムーズに売却が行える可能性があります。一括査定サイトなどを用いて売れるときに早めに売却するのがおすすめです。
1-2.太陽光発電を設置する
次に紹介するのが、田舎でできる土地活用で唯一おすすめできるの太陽光発電です。
太陽光発電とは、土地や建物などにソーラーパネルを設置し、太陽光によって生産された電気を電力会社に買い取ってもらう方法です。
太陽光発電は電気の売電量とソーラーパネル設置面積が比例するため、広大な面積の土地を確保しやすい田舎にはぴったりな土地活用です。都心で太陽光発電を行おうとした場合、土地の確保が難しいため、ソーラーパネルを屋根に設置するタイプが主流となり、パネル設置枚数が少なくなります。屋根に設置するタイプですと方角を含めパネルを設置できる屋根の面積も少なくなり、発電量規模も10kw以下となるケースが多く、その結果、都心で太陽光発電をした場合、売電収入としては年間10~40円程度となります。
一方、広大な土地を活用できる田舎では、更地の上に太陽光パネルをしきつめての発電が可能です。たとえば100坪の土地に太陽光パネルを設置した場合、発電規模を33kwと想定すると、初期費用は1400万円、年間122万円の収入が想定されます
なお、太陽光発電の設置は以下の要因で決定されます。
太陽光を最大限に活かすポイント | 内容 | |
---|---|---|
角度 | 屋根や土地の傾斜 | 傾斜は30度前後が理想(光が直角に当たるため) 正式には夏と冬では太陽の位置が異なるため、30度前後が望ましいと言われている。 また、北海道では40度前後、沖縄で25度前後が最適 |
方角 | 設置する方角 | 南向きがベスト。それ以外の方角にも設置可能ではあるが、南側の1/6になることも |
日照時間 | 季節要因だけでなく県や場所により変化 | 日の長い夏場が一番発電量が多い。 県別では日照時間が長い宮崎県・愛知県・高知県が良いとされている。ワースト3位は島根県・秋田県・山形県。その差は年間600時間とも |
形 | 屋根への設置の場合は特に重要 | 三角形の屋根は四角のパネルが設置できなかったりと、四角のパネルをどの程度の大きさ・何枚設置できるかが重要 |
設置面 | 屋根への設置の際はスレート材・和瓦・洋瓦など 野立ての場合は地盤が強い |
比較的に最近設置された耐久性の高い屋根素材がベスト。瓦への設置は経年劣化により日々が入ることもあり、メンテナンスにコストがかかる場合がある。また、屋根自体に耐久性が必要なため、古い家屋は屋根の交換が必要な場合も。 野立ての場合は、地滑りなど発生しにくい地質と地盤が重要 |
障害物 | 近隣の建物や樹木による日陰 | 日射が遮られると発電量が減るため、極力影にならない場所が理想 |
気候 | 積雪や塩害がなく、地盤が強い | 積雪や塩害がない場所がよい。塩害対応パネルもあるが導入コスト・メンテナンスコストがかかるため、被害がない場所が理想 |
気温 | 高温になると発電量が低下 | 気温が高すぎないのがベスト。太陽光パネル内部の温度は気温以上になるため、夏場の気温が続くと内部は80℃近くなり発電量が低下する |
太陽光発電の業者選びですが、地域密着型の施工まで行っている業者もありますが、まずは複数企業に見積もりを取ることをおすすめします。
太陽光発電といってもソーラーパネルに種類があり、発電力や価格も異なってきます。
そのため、複数の太陽光発電業者に見積してもらうことがおすすめです。また、その際には初期費用の見積もりとともに収益シミュレーションを必ず確認しましょう。
収益のシミュレーションであきらかに他社よりも高額な売電量を提示し、あたかもすぐに初期費用が回収できると過剰な説明をする業者への依頼は禁物です。
以下のように一括で見積もりが行えるサイトもあるため、複数企業の見積もりをぜひ比較してください。
・タイナビ 太陽光発電導入ナビゲーション
<特徴>登録施工店数が350社
・グリーンエネルギーナビ・産業用
<特徴>家庭用だけではなく工場や倉庫を含めた産業用も対応可能
なお、2019年現在、国の補助金はありませんが、各自治体で太陽光発電についての補助金制度があるケースもあります。保有されている土地で適用できる補助金制度があるかは以下のサイトでチェックができます。
パナソニック Webページ
太陽光発電システムの補助金を調べる
都心部の不動産投資でも利回り6-8%程度と言われる中、太陽光発電の利回りは一般的に8~10%といわれています。一度、太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
1-3.少額からでも始められる駐車場経営
駐車場経営は、初期費用も少なく、土地の大きさに応じて活用できるため人気の土地活用のひとつですが、当然ながら駐車場経営は、その近隣に生活している人が多くいることが前提となります。
例外としては、観光地など人が多く訪れる地域や海水浴シーズンや紅葉シーズンだけの観光による駐車場経営といった特殊なケース以外は、そのエリアに生活者からの需要があるか、近隣に住宅地があるかを確認しましょう。
1-4.地域社会に貢献できる介護系施設経営
高齢化社会を迎えている日本では、高齢者を受け入れる有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の不足が顕在化しています。そのため通常のマンション・アパート経営よりも空室率が低く、また、供給数が足りていない状況下においては入居者待ちの状態も考えられます。
また、家族がお見舞いに来られる場所であれば、都心部ではなくても需要が見込まれるため、田舎でも行える土地活用です。
ただし、2点課題となります。
- 初期費用の負担が大きい
- 運用が困難
1つ目は初期費用の負担が大きくなります。多くの場合は、バリアフリーなどの設備投資を考慮した高齢者向けに建物を建設するため、初期費用として3億~5億円は必要となります。
2つ目は運用の困難さです。有料老人ホームを設立するには、老人福祉法第29条を考慮する必要があるため、建設する都道府県に申請し、受理される必要があります。また、建築基準法、衛生法、消防法などの基準をクリアする必要があります。
また、事業体としても法人として設立したうえで、介護サービスを行う委託事業者の選定や連携、医療対応が必要とされた際の対応、認知症を抱える入居者を想定したセキュリティ、食事管理など、人を雇い、人材を育成し、そして外部企業と連携する必要があります
このように、高齢者を受け入れる有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅として運用するのであれば、各自治体や関連サービス事業者と連携しながらの事業計画が重要です。
田舎でもできるという意味では需要のある高齢者向けサービスですが、所有している土地に広さがあり、初期投資の費用を潤沢にあるのが前提条件となります。
1-5.コンビニやロードサイド店舗などの商業系施設経営
田舎の土地活用で商業系施設経営としては、コンビニ経営やコインランドリーや精米所といった方法が挙げられます。コンビニ経営は基本的に生活者が近隣にいることが前提のため田舎においては有効な土地活用とは言えません。
例えば、観光地へ向かう幹線道路にあるコンビニは、田舎であっても需要がありますが、スキー場や海水浴場などのシーズン系の観光地の場合は、オフシーズンでの経営が困難です。
また、コインランドリーや精米所などといった施設は、やはり生活圏内であった方が有利のため、山間部ではおすすめできません。
1-6.貸地として土地を貸す
土地活用の選択肢のひとつとして貸地が挙げられますが、田舎ではおすすめできません。
おすすめできない理由としては、貸地はその土地に需要があることが前提で、田舎で貸地として募集しても契約に至るまでに時間がかかる可能性や、そもそも契約者が見つからないことが挙げられます。
土地の所有権を第三者に譲ることを親族から反対されているといったなど場合は、ひとまず貸地とすることもおすすめですが、1年経過しても契約者が見つからなかった場合は貸地ではなく売却して処分することを検討すべきです。
1-7.トランクルーム経営
田舎でできる土地活用の次の候補はトランクルームの経営ですが、田舎での運用はおすすめできません。
トランクルームの利用者はその中にバイクやスキーグッズ、冬用タイヤなどといったシーズン物を収納するために利用することが多く、頻繁に出し入れすることが少ない傾向にあるため、生活者の多いエリアから車での移動が1時間程度であれば、トランクルームも需要のある場合も考えられます。
しかし、利便性の高い都心部近郊のトランクルームよりも低価格に料金を設定する必要があります。
また、生活圏外ともなるとそのトランクルームの存在を知ってもらうために広告費も必要となるため、生活者が見込めないような田舎でトランクルームのサービスは収益性を考えると、良い土地活用とは言えません。
1-8.戸建賃貸経営
戸建住宅を賃貸物件として貸し出す戸建賃貸経営も、生活者が多く見込まれない田舎の場合は、需要がありません。
戸建賃貸経営はファミリー層に人気が高いため、ゆえに児童数確保の問題からも生活者がいない田舎では空室となる可能性が高くおすすめできません。
1-9.賃貸併用住宅
土地活用のひとつとして賃貸併用住宅も候補として挙げられます。田舎においては前章の戸建賃貸経営と似ており、多くの場合は空室のリスクが高くおすすめできません。
賃貸併用住宅とは、一つの建物にオーナーとしての居住空間と、賃貸物件として貸し出す空間を作り、オーナーとして住みつつ、入居者から賃料を得る方法です。自身が住んでいることから住宅ローンを利用してマイホームを建てられるのがポイントですが、人里離れた場所ではやはり入居を希望する人がおらず空室となる可能性が高いため、近隣に戸建て賃貸物件がないエリアや、空室が続いているような場合は避けるべきでしょう。
1-10.賃貸アパート経営
生活者がいないような田舎の場合は、田舎でアパート経営は難易度の高い土地活用です。
アパート経営とは、一般的に所有している土地にアパートを丸ごと一棟建て、各戸を賃貸物件として貸し出して運用することを指します。アパート経営は、マンション経営と同様、収入が長期にわたり安定して得られる土地活用の一つですが、空室が想定されるような田舎では向かない土地活用と言えます。
1-11.賃貸マンション経営
アパート経営同様に、マンション経営もおすすめできません。
マンション経営とは、所有しているマンションを賃貸物件として貸し出して運用することを指します。しかし、その人気は主に都心における土地活用であるところがポイントです。
つまり、生活人口が少ない上に土地が余っているような田舎では、通勤の不便さやあえてマンションに入居するメリットがないため、田舎においてそもそも人気のない居住方法といえるからです。
特に最近は都心部のマンション供給も過多となっている状況が続き、マンション希望者は都心部に流れがちです。東京でいえば都心である湾岸エリア、川崎エリアなどに新築マンションが建設ラッシュを迎えている中、利便性の低い郊外でのマンション不人気に拍車がかかっています。
このような都心回帰が起きている点からも、田舎や郊外におけるマンション経営は注意が必要です。
1-12.オフィスビル経営
空き家の数は、平成30年では846万戸となり、この30年で2.1倍と増加の一途をたどっています。
出典:「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)
空き家の増加自体にも問題がありますが、最近ではさらに所有者不明土地が増加しています。所有者不明土地とは、その土地の登記簿に記録されている情報をたどっても所有者にたどり着けない土地をさします。これは土地の相続人が登記をしないことで発生します。
実は相続の際に相続人が登記する義務はありません。そのため登記自体をしないことで相続を破棄し、その状態で世代交代が進むと法定相続人が増え、ますます所有者の特定が困難となります。
まとめ
代々受け継いできた土地を手放したくないなど、様々な理由から田舎での土地活用を検討されていると思います。
しかし、本記事で紹介したように、田舎での土地活用は難易度が高いですが、所有している土地の特徴を理解すれば活用方法が見えてくるはずです。
少子高齢化社会における現代では相続人や買い手が常に存在し、不動産が巡回していくような形態が崩れつつありますが、負の遺産を後世に渡すのではなく、条件と時代にあった賢い土地活用で資産を有効活用していきましょう。
オフィス経営とは、オフィスビルを建築もしくは建物を購入し、企業や店舗などのテナント事業者から家賃収入を得る方法です。オフィス賃貸に需要があるエリアはビジネスが盛んにおこなわれているエリアであるため、田舎においては不向きな土地活用です。
確かにマンションやアパート経営といった居住空間ではないため、キッチンやお風呂といった水回りなどの設備への投資が少なく済むメリットがありますが、そもそも人のいないエリアでオフィスビル入居希望者を募集しても空室が続きます。
2.田舎の土地活用で気を付けるべきこと
田舎での土地活用は、その土地を買いたい、活用したいという業者から声をかけられても、きちんと検討することが重要です。これは都心部における土地活用でも当たり前のことですが、買い手が見つかるだけでもうれしい需要のない田舎の場合、声をかけてくれる業者とすぐにでも契約したくなるかもしれません。そのうえ、例えばアパートを建てて一括借り上げしてくれて家賃を保証してくれるといったサブリース契約を締結できるとなるとさらに魅力な話となります。
しかし、例えばサブリースは2年ごとに賃料の見直しが発生するなど、実質的には当初提示されていた家賃が保証されないケースが発生し、問題となっています。
需要のある都心部での土地活用であれば売り手側が優位になりますが、田舎の場合、売り手側は一刻も早く手を打ちたくなるかと思います。そのようなときは、立ち止まって、ぜひ複数の業者や関連機関に相談や周辺環境をも直してみてください。
3.田舎の土地活用のこれからとは
空き家の数は、平成30年では846万戸となり、この30年で2.1倍と増加の一途をたどっています。
出典:「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)
空き家の増加自体にも問題がありますが、最近ではさらに所有者不明土地が増加しています。所有者不明土地とは、その土地の登記簿に記録されている情報をたどっても所有者にたどり着けない土地をさします。これは土地の相続人が登記をしないことで発生します。
実は相続の際に相続人が登記する義務はありません。そのため登記自体をしないことで相続を破棄し、その状態で世代交代が進むと法定相続人が増え、ますます所有者の特定が困難となります。
まとめ
代々受け継いできた土地を手放したくないなど、様々な理由から田舎での土地活用を検討されていると思います。
しかし、本記事で紹介したように、田舎での土地活用は難易度が高いですが、所有している土地の特徴を理解すれば活用方法が見えてくるはずです。
少子高齢化社会における現代では相続人や買い手が常に存在し、不動産が巡回していくような形態が崩れつつありますが、負の遺産を後世に渡すのではなく、条件と時代にあった賢い土地活用で資産を有効活用していきましょう。